第5話 契約締結
家に帰ってしばらくするとスマホに着信。
美沙かと思ったがそれはない。
梨奈からだった。
「はいはーい」
「二ヒヒ」
「何が面白れーんだよ」
「よかったね。彼女出来て」
「あ、あーりがと」
「でも、マジ美沙も翔琉もあり得なくない? みんな心の中ではブチ切れだったよ?」
「そーなん? どっちでもいいけどォ~」
少しばかりの強がり。
友人の梨奈に弱いところを見せたくない。
「マサがそんなに怒ってないならよかったけど、いやー。私的には無いわ」
「そうか」
「彼女のカワイイところ見せつけてやってよ」
「お、おう」
もう引っ込みはつかない。
万感の祈りを込めて財布から一万円をだす。
そして今日、印字したばかりの通帳を再チェック。
残り少ないが、給料日が来たら海に行って遊べるだけの軍資金はある。
オレはベランダへのトビラを開けた。
数分後、隣りの部屋からも扉が開く音が聞こえる。
「よ。アンタ今日は元気なの?」
智絵里が仕切りから顔を覗かせる。
オレは黙って一万円を出した。
「お?」
「夏休みはきっちり彼女でいてくれるんだろうな?」
智絵里はオレから一万円を受け取って笑顔となった。
「もちろーん。でも昨日言った通り、表向きね」
「お、おう。でも表向きってどういう感じ?」
「人前ではちゃーんとアンタを大好きな恋人を演じるよ。どんな感じがいい? アンタ好みの女になるから」
ドキリ。キワドいセリフ。
オレ好みの女かぁ。
「そーだな。ちょっと天然ぎみで、もうベタベタしてくる感じ?」
「うんうんなるほど」
「もうオレにベタ惚れで、マーくんがいないと寂しくて死んじゃうみたいな」
「ププ。それから?」
「一緒に部屋の掃除もしてくれるし、料理も上手なんだよ」
「それは彼女じゃなくてお嫁さんでしょ」
「ま、まぁそうかな」
「オーケー。オーケー。分かった。任しときな。じゃ、夏休みのアンタのスケジュールを教えなさい」
「あ、そう。夏休みの中でみんなで海に行くんだよ。そして夜は夏祭り。仲間たちは全員カップルだから、そいつらよりも最強カップルって感じで行きたいんだ」
「うわぁ。鼻息荒すぎ。了解了解」
「よーし。テンション上がって来た!」
「いいじゃん。その代わり、夏休みまでだからね」
「おう。それでいいよ。その後は余りにも智絵里がベタベタしすぎてうざったくなって振ったっていうシナリオで」
「ちゃんと考えてるのね。はいはい」
計画は決まった。
美沙と翔琉をギャフンと言わせてやるゾ。クソ!