表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

第15話 消えた智絵里

美沙がいなくなってからしばらく待ったが、智絵里が帰ってくる様子がない。智絵里の後ろに並んでいた服装の人の方が先に俺の目の前を通り過ぎる。


「智絵里、遅いなぁ。まぁ女子だからか?」


それから10分立ち尽くし。余りにも遅すぎる。スマホが激しくバイブを伝えるので見ると梨奈だった。俺は電話を取る。


「もっしー。二人とも遅すぎるけど? ラブラブは結構ですけど連絡お願いしまーす。もうすぐ大きな仕掛け花火だってよ」

「ちょ。梨奈。まだ智絵里、トイレから出て来ないんだけど」


「ウソ。もうずいぶん経つよね?」

「そうなんだ。そっちに行ってるわけじゃないんだな?」


「もちろん。電話してみたら?」

「そうだな。かけてみるわ」


慌てて、智絵里の電話にかける。コールが長い。出てくれよ智絵里。


「もしもし?」

「智絵里か? なにやってんだよ」


「マー君さん?」


あきらかに違う女の人の声。


「え? どなたです?」

「いえ失礼だと思ったんですけどね。草の中で光る携帯見つけて。ポップアップにあなたのお名前があってどうしようかと思ったんですがそれが今で。これから機関に届けようと思って」


「ちょ、花火会場ですよね?」

「ああそうです。そこの管理のテントに届けようと思ってます」


「すいません。ちょっと待って下さい。そこはトイレですか?」

「いえ違います。神社へ上がる途中の道ですよ?」


はぁ? なんでだ? 智絵里はここまでちゃんとスマホを片手に持っていたぞ?

言い知れぬ不安が襲いかかる。トイレから神社のほうへ?

なぜだ。智絵里はどうしてそっちのほうに?


「すいません。そちらに向かいます。すぐなんで」

「あ、分かりました」


神社は、俺が待つ場所から反対の方向。智絵里のスマホを持っているという女性の元へとトイレの奥にある道から大きく曲がって向かうことにした。

その途中にトイレの係員がいたので、話し掛けた。


「すいません。白地に赤い模様の入った浴衣を着た、ちょっと小柄でスラリとした可愛い高校生くらいの人、トイレから出て来ました?」

「ん? ああ、そんな人なら男の人に腕を引かれて神社の方に行きましたね。彼氏かと思いましたけど」


「え? それって、どんな?」

「どんな? うーん。けっこうイケてる人でしたけど。歳も同じくらいで」


な、なにぃ?

ナンパ? いや智絵里に限ってそんなのにノコノコついていくわけない。そして途中でスマホを落とすなんて。


「クソ!」


俺は一声叫んで神社のほうへ。バドミントンで鍛えた足は伊達じゃないぞ!

誰だよそいつ! イタズラ目的かもしれねぇ。一人じゃないかも。それでも智絵里を探さなくては!

辺りには提灯が並んでいるがぼんやりと薄暗い。

神社への道に差し掛かったので、智絵里の電話へとコール。


「マー君さん?」


声が二重だ。すぐそばにいる。みると、浴衣姿のお姉さんが彼氏らしき人と電話を耳に当てて立っている。俺はそこへ急いだ。


「すいません。マー君です。智絵里の……このスマホ、どこにありました?」


するとお姉さんと彼氏さんは、神社のある丘の中腹を指差す。


「あそこの道の途中に小さい石碑があってそのすぐそば。なんであんなところに」

「ありがとうございます!」


俺はスマホを受け取る。智絵里のスマホはまだ通話中のままで。お姉さんは通話を切らずに渡してきた。だから見えた。


通話時間と──、「マー君♡」の登録名。


「恋人さんの?」


お姉さんの声に小さくうなずいて、二人が指さしたその場所へ急ぐ。

小さい石碑は路傍にちょこんとあった。その脇には背の高い草むらだ。しかし誰かが侵入した形跡がある。

悪い予感がする。俺は草を掻き分けて奥へと進んだ。


「智絵里!」

「マー──!」


智絵里の声。しかし口を封じられたような。

だが声の方向、距離が分かった。


「智絵里! 今行くぞ!」


ガサガサと草を掻き分けて急ぐと、僅かに「クソ」とうめくような声が聞こえた。聞いたことのある声。そこに急ぐと、浴衣をはだけさせられ下着だけの智絵里が草の上に人形のようになって泣いていた。体中が沸き立つ。智絵里をこんな目にあわせたヤツを許さないと思いながら彼女を抱き締めた。

少し離れたところから草むらに倒れた音。起き上がれない亀のようにもがいているような音。俺は智絵里に深呼吸させ、落ち着いた様子を確認しそこに急ぐ。

そこには自分の半脱ぎになった衣服に足を絡めもがいている翔琉の姿。それに覆い被さって腕をとって手首をひねり、警察に電話する。


「マ、マサ。見逃してくれよ。友だちだろうが」

「──本当は智絵里をこんな目にあわせたお前、美沙を泣かせたお前を殴ってやりたいよ。だけどここからは警察の仕事だ。クソ!」


しばらくすると、祭りを警備していたからであろうか? 数名の警察官がやって来て、翔琉を取り押さえた。俺と智絵里も警察に話をするためにパトカーに乗った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ