第11話 どさくさ告白
決戦の海の日! それは梨奈、俊介以外は智絵里と初めての顔合わせ。智絵里の挨拶に佑弥も晴香も良い感触。しかし翔琉と美沙はなぜか訝しげ。何かを疑っている顔だ。コイツら、智絵里の何を知ってるんだっつーの。
「へー。幼なじみでねぇ」
「そうなんです。もう昔からマー君ひとすじで」
「今まで付き合ってなかったのになんで急にまた」
「いえ、マー君のこと影で見てきたんですけど、フラれたって聞いて、これはチャンスだと思って」
いいぞー! 智絵里、少ない情報の中、よくぞそこまで答えてくださったァーッ!
梨奈が近づいてきて、俺にそっと耳打ち。
「なんなのアイツら。超感じ悪い。智絵里ちゃんかわいそうだよ」
「──そうだよな。後で智絵里にフォローいれとくよ」
梨奈は優しいな。ホントに友情感じるよ。ありがたい。
俺達は電車で海水浴場へ。日中は海で遊び、夜は夏祭りで花火を見に行くハードスケジュール。
それぞれ着替えの入った手荷物の他に、佑弥は割り当て通りパラソルを。俺と智絵里は大きなレジャーシート。翔琉はアイスボックスに飲み物。梨奈と俊介はお弁当を拵えて来た。
みんな服の下に水着を着込んできたので、上を脱ぐだけだ。男たちは膝上のハーフパンツタイプだけかと思ったが、俊介のみビキニタイプ。なぜそうなった?
「しょうがねーだろ。梨奈がこれがいいって言うんだから」
恥ずかしくねーのかよ。しかし筋トレしてるからか似合っている。
そしていよいよ主役の登場。梨奈と晴香はワンピース型。つか、梨奈のやつ俊介にはビキニはかせといて、自分は落ち着いたワンピースかよ。しかし速攻俊介に近寄ってイチャついてる。うらやましー。
美沙は俺の金で買ったと思われるビキニだが、布面積の多いタイプだ。それほどセクシーじゃなくて残念。いやいや、もう美沙なんて関係ないぞ。俺にはすごいセクシーな智絵里がいるんだから。
男達も、三人の水着を見たあとだから、智絵里の水着がどんなのか期待してる。
智絵里はモジモジしていたがために、大トリに。仕方ないと感じに吹っ切って、みんなにビキニ姿をさらした。
「ど、どう? マー君」
「……いい、よ~。智絵里、最高!」
他の男達も完全に動きが停止した。しかしみんな首を振って正気を取り戻したようだった。
それぞれがカップルで海で遊ぶ。場所取りもカップルで、交替でやるのだ。
俺達の場所取りの順番が来た。俺と智絵里はそばに座り合ってみんなが遊ぶのを眺めていた。
「梨奈ちゃん、優しいね。すっごく助かる」
「だろ。良い奴なんだよ。前から」
「あんな人に告らないで、梨奈ちゃんに告れば良かったのに」
「ば、バカ。梨奈は大事な友達。恋人とはちょっと違うなァ」
「ふーん。それであの人だったわけ。見る目ない」
「それは──、否定しません……」
「プ。で? 私は? 大事な友達? 幼なじみ?」
「いやー……。──好き、だよ?」
ホントの言葉。この流れなら言ってもいいだろ。順番違うけど、今は智絵里のこと大好きな訳だから。
智絵里も驚いて、体育座りの膝に顔を埋めた姿勢からこちらに顔を向けた。
「え……? ウソ。冗談やめてよね」
「いやホント。言ってなかったっけ?」
「やめてよ……。信じられない。信じないからね」
「いや、ホントマジ。今が契約期間とかそう言うの抜きで智絵里と付き合いたい」
「いや無理。フラれた勢いで契約してきて、強姦紛いのキスはしようとするし、部屋で水着に着替えさせるし。普通、女の子にそういう扱いする人信じらんないでしょ? 好きとか軽薄な言葉だよ」
「いや、それは……」
「なによ。言い返せる?」
言い返せない。たしかにその通りだ。智絵里のこと好きすぎて勢い余ってやってしまったって、女の子にとっては、犯罪者でしかない。嫌われたってしょうがないよな。
「は──……」
俺は後悔して、体育座りの膝の中に自分の顔を埋めた。前から分かっていたけど、智絵里とは無理なんだろうなァ。
この夏が終わったら寂しい一人の身に逆戻り。美沙と翔琉はなんのダメージもなく、金だけふんだくって、俺には何も残らない。よく考えたら空しさだけしか残んねーじゃん。
俺は膝から顔を上げて遊ぶ三組のカップルを、目で追った。
「まぁしょうがねーか。悔しいけど自業自得だ」
「え?」
吹っ切ろう。美沙のことも智絵里のことも。俺の人生はまだまだ長いんだ。これからなんだ。青春だってまだまだできるさ。チクショー。人も羨むような青春送ってやるぞー!
そう思ったら佑弥と晴香が手を振ってこちらに駆けてきた。
「おーい。交代、交代」
「二人とも遊んでくれば? はー喉渇いたァ」
佑弥と晴香のカップルと場所取り交代だ。俺は智絵里の手を取って立ち上がった。
「ありがとな。心置きなく遊んでくるよ。智絵里いこう!」
「うん!」
俺達は浜辺へと駆けだした。
海と白い砂浜が智絵里に映える。写真に撮って収めてしまいたい。この繋いでる手。これは偽りだ。仲間を騙すための。
俺達の元に俊介と梨奈も合流してきて四人で遊んだ。互いの恋人と体を密着しあって海の中に入り、来る波をジャンプしあって。そんな遊びを声を上げてした。
楽しい、楽しい一時だった。