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第10話 重傷です

偽りのイチャイチャをしながら電車に乗ってショッピングモールに到着。水着、水着。

キョロキョロしてると、前方から嬉しそうな顔で近づいてきた可愛らしい女子は梨奈。梨奈は嬉しそうにオレの胸を小突いた。


「よ! マサもデート? そちらが彼女?」


突然のことでたじろいだ。さすがいつものペースだ梨奈。後ろにはにこやかな表情の俊介。いいなぁ、これぞ本当のデート。こちらは偽りでございます。

いやいや、そんなこと言ってる場合じゃない。こっちだって好きな人とのデートなんだ。


「そ。彼女の智絵里。智絵里。こっちは海に行くメンバーの梨奈と俊介」


智絵里にも二人を紹介すると、智絵里は笑顔で自己紹介した。驚いたことに俊介も少しだけ口を開けて智絵里へと目が釘付け。うぉい。梨奈に勘付かれるぞ。視覚で興奮するのは同じ男性として仕方ないけどさぁ。


「今日は智絵里と水着を買いに来たんだ。海に行くのに必要だからな」

「そうなんです~。ねぇマーくん、智絵里の選んでよぉ? 自分で選んでも仕方ないしぃ~」


「オーケー任せとけ。じゃ。お二人さん失礼」


んー。適度なベタベタ感。

腕を組んでくる智絵里の胸がグイグイと当たってくる。最高っす。

水着売り場に到着。どれもこれも素晴らしい。


「ちょっとマー君。スケベっぽいよ?」


で。見破られた。


「そうかなぁ?」

「そうだよ。オヤジ丸出し。で? お好みはどれなの?」


やっぱりビキニ! 大人な体の智絵里にはきっと似合うよ。

一発で目にとまった。このマネキンがつけてるヤツ。白地に赤のラインが入ってる。かなり人の目を引くぞ!


「これ。智絵里にきっと似合うぞ!」

「はいはい、スケベ、スケベ」


「もうスケベでいいや。これね。胸のサイズは大丈夫かな?」


智絵里は付けられているタグを見てため息。


「ちょっと小さい」

「……ちょっと小さい──。すいませーん!」


即座に店員を呼んで、胸のサイズの大きいのを出して貰った。もうドキドキが止まらない。

これはオレのワガママということで、オレの金で清算。一万八千円也。つか自分好みの秋物コートには出し渋ったのに、智絵里のビキニには貯金を崩してサッと買うなんて、オレってやっぱりスケベ。


もはや一刻の猶予もない。智絵里の手を引いてマンションの自宅へ。ちょうど母ちゃんは買い物に出ているらしくて、家の中にいなかった。チャンス到来!


「よっし! 試着行ってみよう!」

「試着? ここで? 別に家でするし」


「まぁまぁ、早い方がいいに決まってるじゃないですかぁ。それに恋人のマー君の話は聞くだろ?」

「おあいにく様。ふたりきりの時は恋人じゃない条件となってますのよ? お客様」


お。そうだった。さすが智絵里ちゃん、頭いいね。しかしだからといって母ちゃんが帰ってきてから着替えさせるのも変だぞ。くそぅ。


「ただいま──」

「おかえり。ユタカくん」


友貴の声に智絵里は即座に反応。可愛らしい女の声を出した。友貴は智絵里の声を聞いて玄関先でボソボソ言っていたが、すぐに自室にこもってしまった。ドアの閉まる音を聞いて、俺は智絵里の方に顔を向けて微笑む。


「では着替え行ってみましょう」

「は?」


「あ、ちょっとちょっとォ。そんな恋人らしからぬ声おかしいだろ。もうこの家には友貴がいるんだから俺達は恋人同士。ね? 分かる?」


智絵里はワナワナと震えて、ため息を一つ。その後で鬼の形相で睨みつける。俺は視線を逸らしてさらに着替えを促した。


「だってしょうがない。今はラブラブだもんな。マー君の前で着替えくらいできるだろ?」

「くっ! ……せめて脱衣所は?」


「母ちゃん帰ってきたら怒られるだろ。それにマー君の言うことは聞くだろ?」

「ちょっと! せめて後ろ向いててよね?」


「当たり前だろ。紳士だよ、俺は」


智絵里に背中を向けて、あぐらをかいた。智絵里は少し戸惑っていたが、衣服と肌がこすれる音が聞こえる。着替えを始めたんだ。

俺の興奮は徐々に高まりマックスに到達した。ふと、斜め前を見ると小さいスタンド型の鏡が智絵里の方に向いている。いや、正面という訳ではない。少しだけ斜め。だけどそこには智絵里の綺麗な裸が映っていた。


「はれ?」


鼻から熱いものが流れ落ちる。ヤバい。鼻血だ。智絵里のビキニへの着替えはちょうど完了した。だがその途中経過はバッチリ見た。しかし即座に俺は床にぶっ倒れた。


「キャーッ! マー君!?」


智絵里の声と、ドタドタという友貴の足音。俺は朦朧とする意識の中でそれを聞いていた。


「チエさん大丈夫? わあ! チエさんなんて格好してんの!?」

「ああ、ユタカくん、マー君が重傷。氷水とタオル持ってきて?」


「あ、ああ、俺も重傷になりそうっス」


智絵里のビキニ姿を見て、首の後ろをトントン叩きながらタオルを取りにいく友貴の足音。ともあれ、二人の介護のお陰で夕方には息を吹き返せた。友貴は真っ赤な顔して自室に戻っていった。その間、智絵里はずっとビキニ姿だった訳だ。俺は改めてそれをまじまじと見た。


「──合格っす!」

「あーん、もうヤダ!」


顔を隠す智絵里。普段クールな分、かわいくて仕方がない。これで海ではハッピーカップルでしょ。もう最高!

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