Side A:(4)
そりゃ、俺も若い頃だったから、悪い気はしなかった。
しかし、マズい事になったのは確かだ。
近い将来、レプティリアの領主の奥方様になる女に……惚れられてしまったんだ。
レプティリアに着いて……領主様直々に報奨金をもらう頃には……領主様も何かを感付いていた。
そして、俺は……仲間に売られたんだ。
そうだ……俺のかつての仲間も……薄々、何が起きたか気付いていた。
あの頃の一緒に組んでた連中にとって俺は……代りがいくらでも居る新入りの若造に過ぎなかった。
領主様の恋敵になった俺は、無実の罪を着せられ……投獄され……しかし、お姫様に逃してもらう事になった。
そうだよ……近頃、流行りの例の吟遊詩人の十八番の詩……どっかの領主の恋敵になったせいで殺されてしまう若い男の悲劇……あれは……あの吟遊詩人に俺の過去を話したら、あいつがそれを詩にしやがったんだ。
そう言う訳で、俺は未だにレプティリアではお尋ね者だ。あの土地には入る訳にはいかねぇ。
ああ……そうだ……。あの時は……もう……何とか逃げおおせたが……人生終ったように思ったもんだよ。
でも……それでも……心の片隅に、ある気持ちが湧き上がったんだ。
俺をこんな目に遭わせた奴らを見返してやろう、ってな……。
だが、それも叶わぬ夢になった。
俺を売りやがった昔の仲間達は……どっかで野垂れ死んじまったらしいんだ……。