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アリスさんはテンプレを知らない  作者: 干木津上
アリスさん、都に行く
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アリスさん、王都を知る2

この世界にはありとあらゆる多様で混合した信仰が存在する。


エイラ聖教、アリーシャ主神教、揺蕩う知識の魔女教、オルファの戦士たち、精霊信仰などの、大陸全土で広く知れ渡っている一般的なものを始め、悪魔崇拝などといった異端扱いされる所謂カルトと呼ばれるものから土着信仰まで、複数の派閥に分かれているものも含めればそれこそ把握するのが困難な数が存在している。


この世界では実際に複数の神の存在が知られており、その全てに教会と宗派が存在するが、全てで何柱の神が存在しているのかは知られていない。

今は亡き、若しくは眠りについている古き神々について、最上位神であるアレイシアが過去の天啓においてその存在を示唆した記述が残っている事からそれは推察される。



【神々に思考や意思は存在するがそこに善悪や義務の概念は無く、ただ司る思想、概念、事象といった所謂権能の違いとほんの数段階の位が存在し、これは何の介入も不可能な世界そのものによる独立した基盤の一部である。

また、存在する神とそれ以外の権能のその全てにおいて、最上位神である主神アレイシアが管理、統括、命令する権利を有している。

古代に行われた神々による争い、若しくはそれ以外の人智の及ばない何らかの事象の結果、かつて存在した少なくとも半数以上の神が消滅、若しくは永い眠りにつき、現在は主神アレイシアによってそれらが司る筈の統括された、若しくは独立した権能の領域の管理が行われている。


『「神々の詩篇 第一章 七項」意訳 : キャロル・アクレムス 』】



この事から、この世のありとあらゆる思想、概念、事象において、それを司る神が存在する、若しくはかつて存在したのではないかという『ハウィバーク論』が一般的な現代神学における共通した基礎観念になっており、また、他の一般的に信仰が確認される精霊、妖精、精神生命体、次元生命体、悪魔などの存在と神との因果関係については不明であり、また物質的、及び単一的な物体に対しての神が存在するのかも分かっていない。

信仰がどのようにして生まれるのかは多様であるが、そのどれもが神的な対象であると言い切れず、またそれと同時に極めて神的な対象であるとも言える。

対象と内容に限らず神的な信仰そのものは森羅万象に存在し、信仰そのものが神的な事象、若しくは思想によって生まれるのではないかという『アイスウィグの信仰宿神説』は現在では否定される場合が多く……………云々かんぬん。




「つまり……どういう事?」


「つまり、アリス様、エディルア様、ヘデラ様、ソフィア様の皆様への信仰をもつ者達が、俺達、四乙女教なのです」



暫くして万歳コールが止んだ後、街への入口付近に押しかけた人集りは通行の邪魔になるかもしれないと、また少し離れた空き地に移動した私達は五人組から話を聞いていた。


つらつらと述べられた眠くなるような緑髪の人の話を何一つ理解出来なかった私が思考放棄の末に尋ねると、シルクという名前らしい赤髪の人が極々シンプルな回答を返してくれた。


つまり、彼等は私とエディルアとヘデラとソフィアを信仰しているらしく、四乙女教なる宗教を始めたらしい。

あの時のヘデラとエディルアが催眠だか洗脳だかをしたせいで、私達を神様か何かだと思っちゃっているらしい。

そして、ここに集まっている人達は私達が来た事を聞きつけてやって来た王都に住んでいる四乙女教を信仰する人達らしい。




うわ、こっわ……ドン引きである。


私達の宗教だなんて馬鹿な事を……と思った私だったが、それと同時に思い出した事があった。



そういえばエディルアは神様だ。

死神と龍神様を混ぜ合わせたような変わったドラゴンお姉さんだ。


そして確かステータスによれば、私は最上位神アレイシアさんの天使らしいし、ソフィアは慈愛と豊穣の女神の戦乙女だった。



改めて考えてみれば、私の前世の基準でいっても十分に信仰されそうな肩書ではないかという事だ。


たしかに、目の前に天使がいたらその天使を崇める宗教を作る人がいても何ら不思議ではないような気がする。

難しい事は何にも分からないけど、宗教ってそんなものだっけ?




いや、だからといって私達の宗教なんて作られても困るのだが……。



「俺達はあの日、皆様に出会い生まれ変わりました。あの日から全てが違う。生きるという事、人やその他の様々な生命の営みも、流れるようにそこにあるべき自然も、この世界の全てから皆様を感じるのです。アリス様の儚く愛おしく、何よりも高貴な存在を。エディルア様の恐ろしく深く暗い死の深淵を。ヘデラ様の優しく大地のように雄大な慈悲を。ソフィア様の凛々しく勇敢である事の正義を。全てがそうです。皆様の崇高な素晴らしさを一人でも多くの人々に伝え、皆様の偉大な神聖さをより多くの街へ広めるために、俺達は活動をしているのです。あの日ヘデラ様とエディルア様に賜った役目を片時たりとも忘れてはおりません」



ダイスというらしい緑の人曰くそういう事らしい。


これは困った。

確かに、前世の私も神社へ初詣に行ったり、お寺のご先祖様のお墓に挨拶をしに行ったりしたが、般若心経も全部覚えていなければ、日本書紀も古事記もまともに読んだことが無い。それ以上に宗教というものに深く触れて生きてこなかったせいか、何だかとても難しく聞こえてしまって考える事を脳が放棄してしまっているのだ。


そもそも、私達を拝んだところで何かご利益があるとも思えない。

誰かが心の内に秘めた願い事なんて叶えてあげられないのである。


私達の素晴らしさとやらを広めた所で、私が恥ずかしい以外の何にもなりはしないのだ。



「素晴らしい!素晴らしいわ!この調子でアリスの可愛さを全人類に知らしめましょう!」


「ええ、ええ、その通りでございます。我らが偉大なるアリス様を讃えるのです」


そんな事を言ってとても良い笑顔で頷いている二人はどうやらこの四乙女教なる宗教に賛成しているらしい。

私を世界中に知らしめるのだそうだ。

わけが分からないし、私は嫌だ。


いや、元はといえば彼女達がこの元ナンパさん達を洗脳したのが原因なので、もしかすると彼女達の思惑通りだったのかもしれないが、もしそうなら私は二人にお説教とお仕置きをしなくてはいけない。

関係ない人に迷惑をかけてはいけないではないか。


とにかく、私は宗教なんて嫌なのである。



そんな私の反対派仲間がソフィアだ。


「なあ、お二方とも……流石にこれはやり過ぎなのではないか?私達の宗教だなんていくら何でも……」


彼女は困ったような表情を浮かべながら、さっきから二人を何とか説得しようとしているようであった。


そうでしょうとも、自分達の宗教なんて嫌でしょうとも。

祈られても拝まれても何も出来ないし、困るし恥ずかしい。


やっぱりソフィアは私の良く知る常識というものを持ち合わせているようだ。



「ソフィアさまっ!」


そんな時、私よりも背丈が小さいの小学生くらいの一人の女の子が、ソフィアの元へと彼女の名を呼びながら駆け寄って来た。

十歳くらいだろうか?

いや、それよりももっと幼いかもしれない。

栗色の髪をお下げにした大人しそうな印象を受ける女の子だ。


「おおっ……どうした?私に何か用か?」


そうしてその女の子はソフィアの前までくると、驚きながら返事をする彼女の顔を見上げて、慌てた様子で何かを服のポケットから取り出そうとしていた。


「あ、あのねっ!わたし、ソフィアさまのお人形をお作りしたのっ、それでね……」


「こらマナ!何をやっているんだ!申し訳ございません、ソフィア様。娘が失礼を」


そんな所に、女の子の様子を見守っていた人集りを掻き分けながらお父さんと思われる男性が二人の元へとやって来た。

ソフィアは彼を見て微笑むと、女の子の側にしゃがんでから女の子に話かけた。


「いや、彼女は私に話を聞かせてくれていただけだ。そうだろう?失礼な事なんて何もないさ。それで、作った人形を見せてくれるのか?」


「う、うん!これ」


そう言って女の子が取り出して見せたのは、ソフィアを模して作ったらしい小さな木彫りの人形のようだった。


色まで塗られたそれは少々歪ながらも、幼い女の子が作ったにしてはとても良く出来ている。

何故ソフィアの姿がそこまで良く知られているのかは不思議だが。


「おお!良くできているな!これを一人で作るのは大変だったろう。君は彫刻の才能があるな」


「ほんとっ?えへへ、ありがとうソフィアさま!あ、あとっ、あのね……これ、良かったら貰ってくれませんか?」


「これをか?」


「ああ、良かったなマナ。ソフィア様、よろしければその人形を貰ってやってはくれませんでしょうか……娘はソフィア様に見てもらうんだと毎日遅くまで作業をしていたものですから」


「貰ってしまってもいいのか?」


「うんっ……貰ってくれますか?」


「ああ、勿論。ありがとう……大事にするよ」


父娘はお辞儀をすると人だかりの中へと下がっていった。

かわいい女の子だったなと思いながら私がソフィアの顔を見ると彼女と目が合った。

それに気がついた様子の彼女は、私に一度嬉しそうに笑って見せた後、視線を手元の人形に落としてから小さくつぶやくように口を動かした。


「私は皆に信仰されるような立派な人間ではない……確かに私はエイラ様の戦乙女だが、私が人々の為に出来る事などたかがしれている……」


そうして人形を見つめる彼女の顔は、少し悲しそうに私には見えた。


何か思うところがあったのだろうか。

私に彼女の心中を察することはかなわないが、少しばかり彼女の気持ちが理解できる気がする。


宗教だか何だか知らないが、祈られたところで、拝まれたところで、私たちにできることなどたかが知れている。

世界中の人を救うことなんて出来ないし、名前も顔も知らない他人のことを気に掛けることができるほど万能でもない。

言うなれば、「今この瞬間も誰かが私達に助けを求めているかもしれない」なんていう、どうしようもない屈託を私は感じたく無いのだ。

弱い私はそれを分かりやすく表面化したくはないのだ。



少なくとも、私自身と周りの大切な人たちと楽しく過ごすことで手一杯な私にとっては、顔も知らない他人を気にかけるなど今までもこれからもほとんど無いだろう。

そして同時に、ソフィアならばきっとそうでは無いと知っているから、私は余計に思うのだ。




「タマちゃん。分かっておりますね?」


「あぁ、だりィなぁ……良いかいソフィア嬢」


何かをこそこそと話していたのか、念話していたのか、一言二言話しかけたヘデラに促されたタマちゃんは少しの感傷的な気配を漂わせるソフィアに近づくと彼女に声をかけた。


「ああ、タマちゃん殿。なんだ?」


「信仰ってェのはメタファーじゃあなきゃいけねェ」


「な、何だ急に?どういう事だ?」


「宗教がなんで存在するか考えた事があるかい?何の為に神さんを拝むんでェ?」


「そうだな……私達は日々の感謝を伝えるんだ。神々に見守られて無事に今日も生きているのだと。例えば戦う者達は正義と戦の女神オルファ様に勝利と無事を感謝し、農家は慈愛と豊穣の女神エイラ様か大地の精霊様に豊作と日々の平穏を感謝をする。この世界の神は我々を確かに見守って下さっているんだ。祈りは通じる」


「なる程ねぇ……俺が前生きてた世界じゃあ、神さんなんてもんはいるかも分かんねェ曖昧なもんだった……仏像に手を合わしたってェ疫病が消えて無くなる奇跡なんて起きやしねェし、天に祈ったって死に際の人間が助かることなんてありゃしねェ……最後にゃ誰でもねぇ奴に八つ当たりをするだけよ。天に唾をはくのさ。あたりめェだ、そこには手前の都合の良いように願い事を叶えて助けてくれる仏さんも神さんもいやしないんだからよォ……」


タマちゃんは続ける。


「なら奇跡ってえのはなんだ?祈りの意味は何だ?分かるかい?前にも話した事があったなァ……それは心よ。人の心ってえのは何よりも強くて、繊細で、そんで決して何者にも干渉出来ねェ……特別なもんだ。人の心こそが奇跡を起こすんだ。

例えば、夫を早くに亡くした女の人がたった一人でガキを立派に育て上げた。ああ、奇跡じゃあねェか。

誰も手を付けられなかった札付きの悪ガキが改心してちゃんと人様の為になる職についた。これも奇跡だ。

人は例え魔法が使えなくたって、神が居なくたって、奇跡を起こせんだ。人にしか起こせない奇跡が、世界には溢れてる。この世界もきっとな」


「ああ、そうだな……確かにそうかも知れないが……なら何故、タマちゃんがいた世界の人は神に祈るんだ?神を信じる者達はいたのだろう?」


「ああ……人には確かに神さんや仏さんが必要だったんだ。そりァ統治者が民を纏めやすくする為だったり、秩序や思想、文化、道徳、倫理、教育なんていう社会の最低限の仕組みを分かりやすく大勢の人に教え広める為だったり、弱者が心の支えにする為だったり……俺が知る宗教ってえのはそういうもんだった。祈る事で人は心の平穏を得られる……誰かが見守っていてくれるんだと信じる事で頑張れる……そうする事で集団が上手くいくように形作られていた。金儲けの道具に使われるなんて事もあったがねぇ。この世界じゃあ知んねえが……ソフィアの嬢ちゃんは以前言ってたなァ?不条理に苦しむ人を助けてえと。人の悪意を無くしてえと」


「ああ、確かに」


「んならァ、こりゃあチャンスだとおじさんは思うねぇ……大声で言っちまえば良い。今の嬢ちゃんは人の良い心を動かせる立場じゃねえか……少なくとも、この国で今後違法奴隷なんてもんが生まれる事はねえだろう。誰かが止める。誰もが助ける。手を取り合って、手を差し伸べて、悪を悪だと理解する奴が増える。そういう仕組みを作っちまえば良い。思想を、価値観を、倫理を、理想を作っちまえばいい。それがメタファーとしての宗教の大事な役目だ」


「そうか……そんな風に考える事も出来るのか……」


「とどのつまり、ご主人様達を拝んで幸せになれる奴がいるならそれで良いじゃあねぇか。幸せなんてえのは人によりけりだろう?そいつがあったところで誰も不幸になんかなりゃあしねえよ」


「そう……だな。ああ、そうかも知れない。分かったよ、ありがとうタマちゃん殿!」


「おうよ」


話し終わったソフィアは晴れた表情でさっき貰った人形を眺めていた。




うーん……。


本当にそうかな?


果たしてそれは宗教じゃなきゃだめなのかな。



まあなにはともあれ、タマちゃんのせいでソフィアが賛成派に鞍替えしてしまった今、反対派は私だけになってしまった。


仕方がない、私だけでも異議を唱えることにしよう。


「私は信仰されるのなんて嫌なんだけど」


私が手を挙げてそう言うと、タマちゃんは今度は私のほうにやって来て宥めるような口調で言った。


「まあまあ、アリス様。する方は勝手にしてんだ。良いじゃあねぇか。誰も傷つくわけじゃあねえ。国を作って、姫様になって、どの道行く先々で注目を浴びんだ。分かってたこったろう?ソフィア嬢なんて今までだってじいさんばあさんに拝まれてたじゃあねェか。宗教が出来たくらいで今までとなんら変りゃしねえ。少なくとも俺ぁアリス様達を拝む気なんてねえし、関係が変わることもきっとねえだろうさ」


「えー……そうかな?」



うーん……。


確かに、そう言われれば今までと何て変わらない気がしない事もない。

どっちみち目立つ存在だっていうのは自覚してたし、神様っぽい人達が集まってるんだから拝まれても別に変ではないのかもしれない。

これまでもソフィアはおばあちゃんとかに拝まれていたし、一緒にいた私達もついでに拝まれたりもした。

お返しにお菓子をあげたりなんかしてた。


タマちゃんの言う通り、宗教が出来た所で何て変わらないのかもしれない。


「べっぴんさんばっかりで嫌でも目立つんだ。そこいらの街を歩き回ってりゃあどの道ファンクラブの一つや二つ出来てたさ。おまけにそこいらの奴らからしたら種族も身分も大層な方々じゃあねえか。信仰だの宗教だのと名前が変わった所で気にするこたぁねえよ。言わば好かれてんのさ。好意は素直に受け取っとくもんだ」



確かに、私はお子様みたいな見てくれだから分からないけど、ソフィアもエディルアもヘデラも超がつくほどの美人さんだしセクシーだし、三人はファンクラブの一つや二つ余裕で出来ちゃうだろう。

もしかするとすでにあるかもしれない。


うーん……。



何だか大して気にならなくなってきた。



「そうかもしれない……セチアはどう思う?」


『僕はアリスと一緒にいられればそれで良いよ!人間のことは良く分からないけど、でもアリスの事を好きな人が増えるのは僕は嬉しいな』


そうか。



そうかそうか。


セチア君がそう言うのならその通りだ。


仕方ない。

目立つのは今まで通りだし、拝まれても祈られても特に何も出来ないけれど、私に祈ってくれた人には私の加護とお菓子をあげることにしよう。


「じゃあ私は気にしないことにする」


「それで良いさ」



まあ何はともあれ、私はお祭りを楽しめればそれでいいのだ。


悪い事なんてきっとないだろう。




「上出来でございます、タマちゃん」


「んふふ、おうよ。そんでェ、分かってんだろうなァ……?」


「勿論忘れてはおりません。後程、この国で一番高い酒と煙草の葉を買い占めましょう」


「ふへへ……悪だなァご主人様よぉ」


「ふふふ、当然……あなたも同じではございませんか」



そして、そんなタマちゃんとヘデラのコソコソ話しはきっと空耳か何かだろう。





そうして、暫くしてやってきたお城の人が用意してくれたらしい豪華そうな馬車に乗り込んだ私たちは、集まった人たちの歓声を浴びながら漸く王都の中へ入ることができた。


吸血メイドの皆とはここでいったんお別れである。


馬車に乗ったのは私、セチア、ヘデラ、タマちゃん、エディルア、ソフィア、トルガさんの六人と一匹。


私たちはこれから王様とお話をするためにお城へと向かわなくてはいけない。


お祭りはもう少しおあずけだ。

しかし漸く街中に入れたからか、私は忘れていたお祭りに対するワクワクを思い出してテンションが上がっていた。


行儀が悪いかと思いながらも椅子に膝立ちで上って小窓から外を覗けば、道沿いに集まった人たちと街中の景色を見ることができた。


その予想以上におかしな街並みを。






建物の壁に精密に描かれた私たちのイラスト。


家の軒先に置かれた等身大のこれまた精密に作られた私たちの像。


いたるところに張られた私たちのポスター。


そこら中の路上で売られている私たち関連のグッズと私たちの名を関した食べ物。


私たちのコスプレをした人々。


そしていたるところで目に入ってくる私たちの名前と四乙女の三文字。



オー、ジーザス……



「ねえタマちゃん……」


「何でェアリス様……」


「この街を見てもさっきと同じ事言える?」


「……ん〜?何の話だい?」


「私達の宗教がどうのって」


「……」


「……どう思う?」


「……あれれ?おじさん忘れちまったなァ。何か言ったかなァ」


「……」



私は結局、宗教とは何なのか全く分からないままだった。



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