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アリスさんはテンプレを知らない  作者: 干木津上
アリスさん、街に行く
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side.アレイシア 神様、アリスちゃんを広める2

ここは神々の間。



毎度お馴染み、真っ白な空間。




こんにちはアレイシアです。



私はエイラに引き続き、アリスちゃんの素晴らしさを広める為の二人目として魔法と魔術を司る女神カゲラエを呼びました。





前回のエイラは失敗でした。



とても悲しい事に、彼女はアリスちゃんの素晴らしさを理解してはくれ無かったのです。


それどころか、ソフィアちゃんの方が良いだなんて言い出し、アリスちゃんとソフィアちゃん何方がより尊いかを競い始める始末です。


何故こんな事になってしまったのか。


何故彼女はアリスちゃんの可愛いさを理解出来ないのか。




分かりません。



天地がひっくり返ったような衝撃ですが、きっと私の伝え方が良く無かったのでしょう。



アリスちゃんの可愛いさを正しく伝えるのに、「これまでのアリスちゃんオススメシーン総集編(私の解説入り)」や、私が書いた詩の朗読や、寸劇などでは足りなかったのです。


万の言葉で可愛いさを説明し、億の言葉で素晴らしさを説明しただけでは、到底アリスちゃんの尊さを知らしめるのには不十分だったのです。



なので私は今回新たに、アリスちゃんの可愛さを全面的に押し出したアリスちゃんの絵本「遊ぼうアリスちゃん!」と、アリスちゃんのいと尊き言葉の数々を収録したアリスちゃん名言集「その言葉は私達に明日をくれる。〜一日一言アリスちゃんの言葉〜CD付き」と、私が厳選に厳選を重ねたアリスちゃんの(盗撮)写真集「アリスちゃんの彩〜全ページフルカラー〜」を用意しました。


そして更に「超絶キュート♡アリスちゃん♡」の詩に、私が作曲した曲をつけ、ボーカル、ギター、ドラム、ベース、シンセ、トランペット、バイオリン、ハーモニカ、ハープ、コンガ、ギロ、マウルトロンメル、ノーズフルート、ハンドパン、その他もろもろを私が担当して演奏、収録、編集してCDにしました。



これでカゲラエにはアリスちゃんの可愛いさを理解して貰えるに違いない。




そう思い、準備万端の私はカゲラエを呼び寄せ、彼女にアリスちゃんの素晴らしさを説明したのです。



邪魔をするエイラを躱しながら、色んな神様パワーを使いまくってアリスちゃんの可愛いさ、清さ、尊さ、その他の素晴らしさを彼女に伝えました。



それをカゲラエは、開いているのか開いていないのか分からないような半目のまま、眠っているのか起きているのか分からないような反応で、寝言なのか相槌なのか分からないような返事をしつつ聞いていました。



本当ならば、アリスちゃんを一目見た瞬間に「しゅごーい!!何このスーパープリティー天使さーん!大好きー!!」となる筈なのですが、カゲラエは「……へぇ」「……可愛い」「……右だよ右」「……違ぁ」「……ムニャムニャ」「……それは肘」「……もう食べられない」と、何時もの無口キャラに輪をかけた無反応っぷり、無関心っぷりです。


あり得ますか?


もしかしてこの世界の神は皆、頭がどうかしてるんですかね?


アリスちゃんの素晴らしさを理解出来ないなんて、神様やってる場合じゃありませんよ。

初等教育からやり直すべきです。




そしてカゲラエへの布教を終える頃、エイラがソフィアちゃんを戦神乙女(ヴァルキリー)にしていました。



何と、称号を与えるとか言っておきながら、本物の戦神乙女(ヴァルキリー)にしちゃったのです。



ソフィアちゃんの魂を祝福して、称号に色んなものをくっつけてステータスを弄くり、挙句彼女の身体に翼を生やしました。


もう彼女は種族も職業も能力もれっきとした戦神乙女(ヴァルキリー)です。



あり得ますか?



彼女、頭どうかしてるんですかね?



取り敢えず、文句を言ってやりましょう。



「ちょっとエイラ?貴女、神職を与えるのは良いですが、色々弄った挙句に本物の戦神乙女(ヴァルキリー)にしちゃうってどういう事ですか?私のアリスちゃんに勝てないからって、ちょっとズルじゃ無いですか?ベーゴマで遊んでるのに一人だけベイブレード持ってくる感じじゃないですか?やる事汚く無いですか?」



「はぁー?ズルって何ですか?最初からソフィアちゃんを私の戦神乙女(ヴァルキリー)にするって言ってましたよね?アレイシア様も『望む所です』とか言ってましたよね?私がソフィアちゃんを戦神乙女(ヴァルキリー)にしたのが羨ましいからって嫉妬してるんですか?それともBBAだから直ぐに忘れちゃうんですか?痴呆症なんじゃないですか?」


「称号を与えるという話だったでしょう!貴女『ソフィアちゃんに私の戦神乙女(ヴァルキリー)の称号を与えます!』とか言ってたじゃないですか!何勝手にソフィアちゃんのステータスとか身体とか存在まで弄って人外化してるんですか?鳥頭なんですか?3歩歩くと忘れちゃうんですか?胸が貧相だと頭の中もすっからかんになっちゃうんですか?」


「そんな細かい事知りませんよ!グチグチ言うならアレイシア様もアリスちゃんを本当の天使にすれば良いじゃないですか!称号なんてたかがお飾り程度のものあげただけで。貴女のアリスちゃん愛はその程度なんですか?」


「それは何か違うでしょう!?私はありのままのアリスちゃんを愛しているんですよ!!ありのままのアリスちゃんが最強なんです!ありのままのアリスちゃんが完璧に完成された芸術なんです!何か手を加えるなんてとんでもありません!正に蛇足ですよ!アリスちゃんは存在そのものが元から天使なんだと何度も私言っているじゃないですか!ほら、見れば分かるでしょう?熾天使以上の天使感なんですけど?キャーッ!可愛い!!」


「じゃあ良いじゃないですか」


「……まぁ、良いですけど……ありのままのソフィアちゃんを愛せ無いなんて、貴女こそちょっとソフィアちゃん愛が足りないんじゃ無いですか?カゲラエどう思います?ちょっとこの盛り乳女神ズルくないですか?」


「ちょっと変な言い方しないで下さいよ!強くなって翼が生えただけじゃないですか。ソフィアちゃんの尊さは何も変わってませんし、そもそもあんな人外魔境でソフィアちゃん一人だけが普通の人間だなんて、仲間外れで可哀想じゃないですか。カゲラエは分かりますよね?いい加減このBBAちょっとウザく無いですか?」


私達が創造神様の隣で座っていたカゲラエに訊ねると、さっきから俯いていた彼女は眠たそうな目で私達の方を見た後、隣でアリスちゃん達の様子を神様スクリーンで眺めていた創造神様に訊ねました。



「……創造神様、何これ」



「僕に聞かないでよ……君、今まで寝てたでしょ」



「カゲラエはアリスちゃんとソフィアちゃん、どっち派ですか?勿論ソフィアちゃんですよね?」



「いえいえ、何だかんだ言って、カゲラエはアリスちゃん派ですよね?この前加護あげてましたもんね」



「……何?」



「カゲラエ良く見て下さい。私のソフィアちゃんの女神にも勝る尊さ、何者も汚す事の出来無い高潔さ、何者にも染まらぬ凛々しさ、真面目で頑張り屋で応援したくなるような健気さ、そして心の奥に秘める人間らしい弱さと儚さと美しさを!何よりも、スーパーミラクルアメイジング可愛いですよね!?」



「カゲラエは分かってくれていますよね?さっき説明しましたもんね?私のアリスちゃんの女神にも勝る尊さ、月夜に咲いた一輪の花のような儚さ、アスファルトを押しのけて咲く可憐なたんぽぽのような健気さ、彼女のいる周りが全て輝いて見えるような清さ、そして何者にも勝る超圧倒的なハイパーエクストリームギャラクシーな可愛いさが!!」



「……好きなキャラ選ぶ遊び?なら、私はこの狐にする。とっても可愛」


「「セチア君は駄目です!」」


「……な……何故?」


「貴女何も分かってませんね。私がもう一度最初からアリスちゃんの素晴らしさを説明しますので、そこで聞いていて下さい」


「なら、その後に私がソフィアちゃんの素晴らしさを説明します」



「……創造神様、何なのこれ」


「僕も分からないよ……」




そうして、私は再び「遊ぼうアリスちゃん!」の絵本を読み聞かせ始めたのでした。





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