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アリスさんはテンプレを知らない  作者: 干木津上
アリスさん、街に行く
48/89

アリスさん、戦神乙女を知る

ーーーーーーーーーーーーー


名前:ソフィア・ヌーヴェル


種族:人間(戦神乙女(ヴァルキリー))


性別:♀


年齢:20歳


職業:戦神乙女(ヴァルキリー)


識別:リアデの正義の娘


レベル:86


称号:リアデの正義の娘

   慈愛と豊穣の戦神乙女(ヴァルキリー)

   神に見初められし者

   高潔な魂


魔力:498821/498821


スキル:戦神乙女(ヴァルキリー)


    両刃剣術(Lv.7)


    癒しの抱擁


    状態異常無効


    神剣術(Lv.1)


    光魔法(Lv.1)


    聖魔法(Lv.1)


    飛行魔法(Lv.1)


    環境適応(極)


    加護付与(戦神乙女(ヴァルキリー)ソフィアの加護)







装備:碧きローレライ



加護:慈愛と豊穣の神エイラの加護



ーーーーーーーーーーーーー






職業


 戦神乙女(ヴァルキリー):神の神使であり、戦場で生きる者と死ぬ者を定める女性。高潔な魂と精神を持つ神の尖兵。神々のみが与える事の出来る神職の一つである。





識別


 リアデの正義の娘:リアデの街の住人から愛される正義の心根を持つ少女。ソフィア・ヌーヴェル





称号 


 リアデの正義の娘:リアデの騎士隊長としての働きを住人から認められ、支持された娘。その功績を神々が認めた証。


全能力値中上昇


カリスマ性中上昇




 慈愛と豊穣の戦神乙女(ヴァルキリー):慈愛と豊穣を司る女神エイラの戦神乙女(ヴァルキリー)となった証。エイラがその高潔な魂を認め、祝福し、深い寵愛を与える存在。


全能力値極大上昇


種族、職業 戦神乙女ヴァルキリー追加


スキル 戦神乙女ヴァルキリー、癒しの抱擁、環境適応(極)習得




 神に見初められし者:神々にその在り方を認められ、祝福を受けた者に与えられた名。


全能力値極大上昇


スキル 光魔法、聖魔法 習得




 高潔な魂:慈愛と豊穣を司る女神エイラによって、気高く誇り高き、穢のない魂を認められた証。


全能力値極大上昇


魂干渉無効






スキル


 戦神乙女(ヴァルキリー):戦闘時に全能力値が超極大上昇し、以下を有する。


ーーーーーーーーーー


  武器マスター:汎ゆる武器、魔法武器を使い熟す事が出来る。武器スキルの修習速度が極めて大幅に上昇する。


  戦神乙女(ヴァルキリー)の神眼:汎ゆる悪を見通す神の眼。


  乙女の意志:自らの強く望んだ意志を果たす為、能力値が一定範囲内で最適化される。


  純潔の乙女:その身が純潔である限り、全能力値が超極大上昇。


  戦乙女の誘掖:死ぬ者として選定した者の魂を天上へと導く。


  神剣術:神威を纏った剣術。


  不老不死:老いが無くなり、自然死をする事が無くなる。


  魔法無効:汎ゆる魔法を無効化する。


  状態異常無効:汎ゆる状態異常を無効化する。


  精神干渉無効:汎ゆる精神干渉系統の魔法、物理攻撃を無効化する。


  飛行:有翼時、飛行特性を得る。


ーーーーーーーーーー




    両刃剣術(Lv.7):両刃の剣を用いた戦闘術。



    癒しの抱擁:慈愛と豊穣の女神エイラに祈りを捧げる事により、汎ゆる負傷、欠損、病、その他絶命以外の肉体的異常を回復させる。



    光魔法(Lv.1):6属性魔法の内、光を司る魔法。



    聖魔法(Lv.1):神々の力の一端を顕現する魔法。



    飛行魔法(Lv.1):飛行系統の適正に関する魔法。



    環境適応(極):あらゆる外環境に適応する。



    加護付与(戦神乙女(ヴァルキリー)ソフィアの加護):戦神乙女(ヴァルキリー)ソフィアの加護を付与する。




  碧きローレライ:青いアフタヌーンドレス。



  慈愛と豊穣の神エイラの加護:?????



ーーーーーーーーーーーーーー





私達は今、ソフィアのステータスを見ていた。


空中に浮かぶ透明な板のような、ホログラムのようなそれに齧り付くようにして皆が見つめている。



突然光り輝き翼を生やすという超越現象に見舞われたソフィア。

数十分後、そんな彼女を見て固まっていた皆が動き出し、けれども何がどうなっているのか分かる者はいなかった。


皆でソフィアの翼を観察してみたり、ドレスを突き破って肩から本当に生えていることが分かったり、ソフィアが自力で動かす事が出来ないか試してみたり、私の魔眼で調べてみると『神翼』とかいうものだと分かったり、もう一度光らないかと待ってみたり、触ってみたり、嗅いでみたり、抓ってみたり。


いつの間にか伯爵家の使用人達も集まり、皆でソフィアを取り囲んでああでもないこうでもないと大家族会議である。


混迷を極めるとはこの事だ。


突然光って翼を生やす人間は、この世界でもそうそういないらしい。




しかして今、何か他に変わった所が無いかと彼女のステータスを皆で確認している所である。


私はソフィアのステータスを見るのは初めてだが、同じ人間であるリナリアさん達のステータスと比べれば何とも変わった事が書いてあった。

ソフィアに起きている摩訶不思議現象と何か関係あるのかは分からないが、変わった所だらけなのは一目で分かる。


種族の横にカッコ付きで戦神乙女(ヴァルキリー)とか書いてあるし、スキルも沢山ある。

全体的にゴチャゴチャしていて、少なくとも、リナリアさん達よりは強そうである。


そして、未だ彼女の背中に生えている「神翼」とかいう、見たまんま神様っぽい翼は、きっと「飛行」のスキルのせいなのだろう。

普通の人間は翼が生えたりしないのだ。


何故突然光ったり翼が生えたりしたのかは分からないが、きっとこのステータスの内容と何か関係あるに違いない。

私の、なけなしの推理力がそう告げている。

そんな気がする。


「へえ、ソフィアって戦神乙女(ヴァルキリー)だったのね。凄いじゃない」


その場にいた全員が、ソフィアのステータスに齧り付いて見つめる中、エディルアがそんな事を感心したように言った。


ほほう。



黒い物は何でも格好いいと言う黒死の龍お姉さんが、黒い物以外を褒めるなんて珍しい事もあるものだ。


そんな事に、私は少し感心してしまった。



エディルアが言うくらいなのだ。


神様の神使とか、高潔な魂と精神を持つ神の尖兵とかであるらしい戦神乙女(ヴァルキリー)は、きっととても凄いのだろう。



自分がそんな変わった人物なのなら、ソフィアも教えてくれれば良いのに。

自分の頑張りを神様に認められたなんて、私なら皆に自慢しちゃうね。





なんて事を思った私だが、同時に一つ可能性を思いついてしまった。


即ち、この戦神乙女(ヴァルキリー)とかいうのになってしまったから、ソフィアは光ったり翼が生えたりしたのでは無いだろうか?と。

先程のあの瞬間に、もしかすると彼女は戦神乙女(ヴァルキリー)になったのではないだろうか。と。


そんな、ぎっくり腰みたいに突然戦神乙女(ヴァルキリー)になるものなのかは分からないが、ここは色んな「突然」が起こるビックリドッキリ世界。

そんな世界の神様はきっとドッキリサプライズが好きなのだ。


他人が楽しい食事を終え、食後のお茶を飲んで家族団欒している時に、突然身体を光り輝かせたり、翼を生やしたりして、驚く様を見て楽しんでいるに違いない。


若しくは、そもそも神様にそんなものは関係ないという事かもしれない。


エイラさんという神様が、何かのきっかけでソフィアを気に入って、彼女を戦神乙女(ヴァルキリー)にした。

偶々それがあの瞬間だったので、何故かは分からないが、身体が凄く光ったり、突然背中から翼が生えたりしたのだ。


良く考えなくても、その可能性がとても高いのでは無いだろうか。


私のなけなしの推理力がそう告げている。

そんな気がする。



「そ、そうだったのか…………いや、私は知らないぞこんなの!いつからだ!?いったい何故私なんかがエイラ様の戦神乙女(ヴァルキリー)になってしまったんだ!?」


しかして、ソフィアは自分の背中の翼をずっと両手で掴んだまま、自分のステータスを見て益々困惑している。


彼女は何故ずっと翼を握っているのだろう。


分からない。

翼が気に入ったのかもしれない。


「あら、そうなの?てっきり、私達にバレたく無くて () () () いたのかと思ったわ。親友だと思っていたのに、隠し事なんて……少し悲しいわ」



「な……ッ!違うんだエディルア殿!私は隠してなんかいないぞ!信じてくれ!私は何も知らないんだ!」


少し意地悪そうな笑みを浮かべながらそんな事を言うエディルアに、ソフィアは慌ててこんなの知らないと弁解し始めた。


あのエディルアは誂っているに違いない。



別に隠し事なんて誰にでもあるだろうに……。

何故そんな事で誂うのか。

可哀想じゃないか。



対するソフィアはエディルアの意地悪が分からずに、彼女が怒ってしまったと思って焦っているようである。


可哀想に……。

まるで無実の罪を着せられた人のようだ。




そして、そんなソフィアが言っている事を聞くに、私の推理は多分当たっているのだろう。


彼女は自分が戦神乙女(ヴァルキリー)である事を知らなかったらしい。

つまり、光ったり翼が生えたりした時に彼女が戦神乙女(ヴァルキリー)になった可能性が高くなったわけである。


私も中々冴えているのでは無いか?


私も探偵に向いてきたのではないか?


否、最早そうとしか考えられ無い。



そんな事を考えた私は、探偵みたいに格好よく推理を披露してやろうと思いたった。


ここで颯爽と推理を皆に披露し、エディルアに苛められているソフィアの冤罪を晴らす。




ふふ……。


格好いいでは無いか。




そうして私が口を開こうとした時、


「何てこった……」


なんて、ソフィアのステータスを見ていたトルガさんが深刻そうな表情で呟き、必死の弁解を続けるソフィアの前に立った。



おや?


どうやら、今回の探偵役は彼だったようである。



颯爽と推理を披露して娘の冤罪を晴らす父親。




おお……。

格好いいでは無いか。



仕方がない。

今回は彼に譲る事にしよう。


そう考えて、私は開いたお口を閉じた。




「お、お父様……?」


「ソフィアよ……お前は私達にこれを隠していたのか?」


そして甚も真剣な表情でそんな事を告げたトルガさん。




何だそれ。


違うでは無いか。

私の慮りを返して欲しい。



そんな事はともかく、エディルアの言う事を間に受けたのか何なのか知らないが、どうやら彼はソフィアが自分達家族にこのステータスを隠していたと思っているらしい。


そして、彼の深刻そうな表情を見るに、もしかするとその事にショックを受けているのかもしれない。


若しくは、怒っているのかもしれない。



何て事だろう。


今のソフィアからすれば、とんでも無いダブルパンチだ。


エディルアはともかく、トルガさんとはせっかく仲良くなれたのに、これはいけない。

きっとそれはトルガさんの勘違いなのだ。

私の推理では彼女には何の非も無いのだから、それは冤罪というものである。


エディルアがあんな意地悪を言うからだ。

エディルアのお馬鹿。



これは私の多分正しい推理で、二人の仲が再び悪くなってしまうのを止めなくてはいけない。


そしてそんな事よりも何よりも、私は探偵みたいに格好よく推理を披露してみたい。


そんな事を考えて私が、今ぞ!と口を開こうとすると、今度はソフィアの叫びによって、それは叶わない物となってしまった。


「ち、違うんだお父様!本当に私は──」


「いやいや、分かっている。皆まで言わ無くて良い。お前は私達を驚かせようとしたんだろう?」


ソフィアが慌てて否定の言葉を口にしようとするも、トルガさんが優しくそれを遮った。


表情も一転、優しそうな笑顔である。



どうやら、彼は怒っているわけでは無かったようだ。


良かった。

私の心配は杞憂だったようである。


彼はソフィアが戦神乙女(ヴァルキリー)なんて凄いものになってしまった事を、自分達家族を驚かせようと考えて黙っていたと思っているようだ。


思いもよらぬ良い知らせ。

サプライズというのはこの世界でも喜ばれるものらしい。


否、思いもよらぬ勘違いであるが。



しかして、そんな素敵な勘違いをしているトルガさんは、ソフィアの頭に手を起き、優しく微笑みながらその綺麗な濃いめの金髪を撫でている。



とても暖かい気持ちになる光景だ。

非常によろしい。


しかし私の多分正しい筈の推理では、それもきっと間違っているのである。



「え?いや私は……」


と、益々困惑するソフィアに対して、


「エイラ様に認めて頂き戦神乙女(ヴァルキリー)になるだなんて凄いじゃないか!!自分の眼が信じられ無い!とんでも無いサプライズだよ!!」


なんて言いながらソフィアを抱きしめるトルガさん。



すっかり推理を披露するタイミングを失ってしまった私は、いつの間にかメイドさんに連れられて戻ってきていたセチアを抱きしめて、ふわふわの背中に顔を埋めた。



何だろうか。

このムズムズする感情は。

 




私は何でも良いから、格好よく推理を披露してみたいのである。




そんな事はさて置き。

レイリアさんが驚きと喜びと感動が綯交ぜになったような感情を抑えきれず、ソフィアを抱きしめているトルガさんにテンション高く詰め寄ってきた。


「ああ、あなたどうしましょう!!私達のソフィアがとんでも無い娘になってしまいました!夢では……これは夢ではありませんよね?」


「い、いやお母様、私は──」


「ああ!私達のソフィアがとてつもない存在になってしまった!!エイラ様の戦神乙女(ヴァルキリー)!!私達の可愛い自慢の娘は伝説だ!!これは伝説級の親孝行だ!!」


「ッ……!ソフィア!」


そして、そんな事を言いながら潤んだ眼でソフィアに抱き着くレイリアさん。


伝説級の親孝行とは何だ。


どうやら彼らの中で、戦神乙女(ヴァルキリー)とはとんでもなくて、とてつもない、伝説のようなものであるらしい。


娘がそんなものになってしまったのを、良くわからないが、サプライズ親孝行で知らされたと思っている彼らは、とてつもなく嬉しいのだろう。


クライン君も「姉さん凄いよ!!凄い!!」と言いながら、ソフィアに抱き着いている。


私の推理では、それら全てが彼らの勘違いである筈なのに……。


そう考えると、凄くムズムズした気持ちになってくる。


推理を披露したいが、幸せそうな今の彼らに、真実を告げるのは少しだけ憚られる。

何故、こんな事で気を使わ無くてはならないのかは自分でも分からないが、何だかそんな気がするのだ。




しかして、エディルアを見てみると、何とも言えない表情で笑いを堪えていた。

あのドラゴンさんは後でお説教である。



「いや、聞いてくれ皆──」


「ははーん。さては、アリス様達の元で暮らすと言い出したのはこれが理由なんだな?だとすると……まさか、そのサプライズの前に、私との蟠りを解消しておこうとアリス様達に切っ掛けを作って頂けるように頼んでくれたのか?今日御三方を呼んだのはその為に?」


家族三人に抱き着かれ、少し窮屈そうにしながら尚も弁解しようとするソフィアだが、やはりトルガさんによってその言葉は遮られてしまった。


「その為に?」では無い。


私達はべつにソフィアに呼ばれたわけではないのだ。


何なのだろうか。


急に彼は他人の話を聞かなくなってしまった。

それ程までにテンション上がっちゃっているという事なのだろうか。


何とも……ソフィアが可哀想でならない。




ヘデラを見てみると、彼女もエディルア宜しく、何とも言えない表情で笑いを堪えていた。

ハンカチで口元を抑えて肩を震わせている。


眼が笑っているので、私には分かる。


私の仲間達は意外と良い性格をしているようだ。



「えぇ……いや……その………」


そして、とうとうソフィアの弁明が、端切れの悪いものとなってきてしまった。


よく分からない勘違いでこれ程までに家族が喜んでいる。


正しい事を伝えようとし続けるべきなのか否か。


両親と弟に抱き締められながら、彼女はきっとこれまで無いほどに複雑な心境だろう。



「ソフィアはそんな事を考えていたのですか……?最初から私達の事をおもって?」


重ねてレイリアさんが潤んだ眼でソフィアを見つめながら、そんな風に訊ねるものだから、ソフィアは「うぅぅ……」なんて唸りのような声を残して俯き黙ってしまった。


今、彼女の中で葛藤が繰り広げられているに違いない。



家族が喜んでくれているのならそれで良いじゃないか?


否、家族に嘘をつくなんて出来ない。

本当の事を伝えるべきはないか?


否、本当の事を伝えると、サプライズだと勘違いしていた父親達を悲しませてしまうかもしれない。

優しい嘘、必要な嘘というものも、世の中にはあるのでは無いか?


否、否、否……。




そんな斯くもありがちな二律背反。

アンビバレンツである。



冴えている今の私には、ソフィアの考えている事が手に取るように分かるのだ。




正直、どちらでも良い。




果たして、ソフィアが考え初めてから数十秒後、意を決したような表情を一瞬見せた後彼女は、


「……じ…………実は、そうだったんだ」


と、家族の幸せを取る事に決めたようである。



「ああ、ソフィア……」


「ソフィア、お前は私達の誇りだ。本当に……立派に育ってくれてありがとう……私はとても嬉しいよ」


「姉さん凄いよ!!」


「あ……ああ。皆のお陰だ。こちらこそいつもありがとう」


そしてキツく抱き締め合うヌーヴェル家の皆さん。


引き攣ったような笑みで抱き締め返すソフィア。


周りでその様子を眺める使用人の人達も、潤んだ眼を拭いつつ「ソフィアお嬢様……」なんて事を言っている。


何だろうか。

この虚しい気持ちは。



そんな皆の様子を眺めながら、私は格好よく推理を披露する機会がとうとう無くなってしまった事に少し肩を落とした。



しかしまあ、それでも良い。



ここで「ズバリ!さっき光ったり翼が生えたりしたのは、ソフィアが戦神乙女(ヴァルキリー)になったからではなかろうか?つまり、ソフィアは家族に秘密にして、サプライズをしようなどとは考えていなかったのだ!」なんて事を言うと、私が何だか空気が読めない子みたいに思われてしまうかもしれない。

それは何だか嫌だ。

私は空気が読める子なのである。



それに、複雑そうな笑みを浮かべているソフィアを除き、皆ソフィアのドッキリサプライズに喜び、幸せそうだ。



彼らの中では、忘れられないとても大切な思い出の一つになった事であろう。


良いでは無いか。







たった一つの真実見抜いても、皆が幸せになれる嘘を優先する


そんな人に私はなりたい


                   アリス。






    




その後、ヌーヴェル家総出でソフィアが戦神乙女(ヴァルキリー)になった事を祝い、泣いて喜び続けるソフィアの家族とお話し、とうとうお別れの時間となった。


ソフィアはこのまま、私達と一緒にお城へと行くというので、家族とはこれでお別れである。


と言っても、私が時空魔法で空間を繋ぐゲートをヌーヴェル伯爵家には作ってあるので、何時でも好きな時に会える為、別れを告げる彼らは笑顔であった。


ソフィアは引き攣った笑みで、トルガさん達は晴れ晴れとした泣き笑いの表情で、お互い暫しの別れを告げた。




エディルアとヘデラは終始笑いを堪えたまま、私はセチアの背中に口元を埋めたままその様子の眺めて、しかして、私達はお城へと一瞬で帰ってきたのだった。



月明かりが移しだすお城の門の前に立った私達。


私はエディルアとヘデラと顔を見合わせた後、三人で前に立ったソフィアを見つめた。


青いドレスと濃いめの長い金髪が夜風に靡かせ、彼女は月を見上げていた。


夜空を仰ぎ見る彼女に掛ける言葉を、私は持ち合わせていない。


その背中からは、まるで会社をクビになったサラリーマンのような物悲しさが溢れ出していた。



しかして、




「……何でこんな事になるんだ……」



悲しみと虚しさ。


月が照らす湖畔の庭園に、ソフィアのそんな声が静かに響いた。


その背中には、白くて大きな美しい翼が依然生えたまま、月明かりを受けたそれは、少しだけ光っているように見えた。




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