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アリスさんはテンプレを知らない  作者: 干木津上
アリスさん、街に行く
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side.アレイシア 神様、アリスちゃんを知る5

こんにちは、アレイシアです。


今、アリスちゃん達は冒険者ギルドで、冒険者達と楽しくお喋りをしています。


アリスちゃん達の正体を知り怯えたり、それで剣を抜いた事を怒ったヘデラちゃんが土下座させたり、何だか不穏な空気を感じる場面もありましたが、今は仲良くなったようで良かったです。

おまけにこの冒険者達、アリスちゃんの加護をもらったりなんかして……羨ましいですね。

私だってアリスちゃんの加護が欲しいというのに。

まあ、私は神なので、加護なんて付与出来ないのですが……。



しかし、エディルアの膝に座って料理をパクパク食べているアリスちゃんは可愛いですねぇ。

このアリスちゃん、私の天使なんですよ?


「えぇえええ!!何で冒険者やめちゃうんだよぉ!アリスちゃんはホント、ロマンってものを分かってないなぁ」


そして、そんなアリスちゃん達の様子を見ながら創造神様が絶叫しています。


どうやら、アリスちゃん達が冒険者になるのを止めた事に納得がいかなかったようです。


確かに異世界モノと言えば、転生でも転移でも召喚でも、取り敢えず冒険者になって色々するのはお約束ですもんね。


規格外の強さを持つアリスちゃん達が冒険者になったら、色んなトラブルや冒険や問題、その他悲喜こもごもがあったかもしれませんし、無かったかもしれません。

鬱陶しい蝿が沢山寄ってくることにはなったでしょうが、三人とも好き勝手な性格をしているので、好き勝手に暴れていた事でしょう。


きっと、創造神様はそんなアリスちゃん達を見たかったのでしょうが、しかし私の大天使アリスちゃんはそんなの関係ないのです。


「創造神様のアドバイス無視されちゃいましたね。ぷぷー」


「……何だいアレイシア。馬鹿にしてるのかな?」


「いえいえ、とんでもございません。でもお金を稼ぐならあのミスリルを売れば十分ですよ。仕方ないんじゃないですか?」


「まあ……そうだけどさ。こう……何て言うのかな、夢とか、ロマンっていうか……お約束じゃないか!」


「それこそ、アリスちゃんはそう言うの全然知らないんだから、仕方ないじゃ無いですか。私のアリスちゃんに難癖つけないで下さい!!」


「……君はアリスちゃんの何なんだい?」


「私はアリスちゃんの女神です」


「……そうか……まぁいいや」


さて、そんな事はともかく、何故ヘデラちゃんが地面を掘っただけで沢山ミスリルが出てきたのか。


それは、エディルアのせいです。


死の森から流れ出る瘴気。

その中に多量に含まれるエディルアの魔力は、死の森、広大な草原、山脈を挟んだこの領地の西側にまで影響を及ぼしています。

アリスちゃん達のお城がある辺りです。


この領地、特に西側には魔物の数が少ないというのがその顕著な所ですね。


そんな、エディルアが封印されている3000年の間に流れでた魔力ですが、そこかしこで蓄積されて、魔力溜まりが生まれる事になります。


死の森、大草原、山脈、そしてこの領地にも。


普通魔力溜まりが出来るとそれが魔素に還元されて、凝り集まった魔素から魔物が発生しますが、死そのものを内包したエディルアの魔力では、魔物が産まれて来ることはありませんでした。


そのまま、長い年月消費されないで魔力が溜まり、貯まり続け、地中に染み込み、魔力が結晶化して魔石に、その魔石に魔力が吸収され続けて魔核に、それでも消費し切れない魔力が地中に蓄積され続け、次第に鉱石にまで影響を及ぼしたのでしょう。

中でもミスリルは魔力と親和性の高い金属なので、きっと沢山出来たのでしょうね。


きっと死の森周辺の地下はレアメタルの宝庫になっている筈です。


ワオ!

アリスちゃん達、大金持ちになっちゃえます。



そんな事はさて置き。

アリスちゃんはお城に帰ってきた後、早速お城の周りの森を掘ってミスリルを採り、今はその森をお散歩中です。


アリスちゃん、一瞬でミスリルを大量にゲットしてお金持ちになりました。


当然です。

何せ、可愛くて、強くて、優しくて、可愛い、私の大天使アリスちゃんなんですから。


例え、何も労せず世界で一番のお金持ちになったとしても、それは当然なのです。



そして、夜の森を機嫌良さそうにお散歩するアリスちゃん。

可愛いですね。尊いですね。


吸血鬼にとっては、きっと心地のよい場所なのでしょう。


「おや、何か居るね」


「狐ですね。まだ子供ですが、これは……酷い怪我ですね」


しかして、アリスちゃんがお散歩中に見つけたのは血塗れの子狐でした。


きっと、他の動物か魔物に襲われたのでしょう。


体は傷だらけの血泥だらけ、おまけに右前足と左の耳を失ってしまっています。

血を流し過ぎていて、きっと、もう長くは無いでしょう。


可哀相だとは思いますが、自然の世界ではこんなのは当たり前、日常茶飯事のことです。


アリスちゃんはそんな子狐の側にしゃがむと、傷を付け血を出した自分の指先を子狐の顔の前に差し出しました。


これは……。


自分の血を取り込ませることにより眷属化する「血の盟約」。



眷属化、するつもりなのですね。


眷属化すれば、不老不死の吸血鬼になる。

この子狐の命を永らえさせる事ができる。


傷ついた、今にも死んでしまいそうな子狐を哀れんで、命だけでも助けてあげようという事なのですね。


それを自分の我儘だと、自分勝手な思い付きだと自身を納得させて。


ああ……何て……



貴女が女神ですアリスちゃん。



『私のお友達になってくれる?』


そして、アリスちゃんが子狐に対して、優しげで、何処か悲しそうに、そんな事を言ったのです。




──私のお友達になってくれる?──




「ふ……ふぁああぁぁあああッ!!アリスちゃん……ッ!!私のアリスちゃんッッ!!」


その時、私の中の何かが弾けてしまいました。


ああ、アリスちゃん。


私のアリスちゃん。


何て優しく、健気で、清い心の持ち主なのでしょうか。


ここ、感動する所ですよ。


「え……ちょ、アレイシア!?」


これは広めなければ……


私のアリスちゃんの素晴らしさを、他の神にも知らせ、知って貰わなければ……。


私には布教する義務がある!


何かを言っている創造神様の声など聴こえないくらいに我を忘れたまま、私は慈愛と豊穣の女神エイラに連絡をしたのでした。



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