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アリスさんはテンプレを知らない  作者: 干木津上
アリスさん、街に行く
31/89

アリスさん、リアデの街を知る



突然だが、私は今驚愕していた。

(おどろ)き、(おどろ)いていた。


何にか。


目の前の光景にだ。


「お前目の前の光景に驚き過ぎだろ」と、私も思うが、仕方無いのだ。

人はビックリする事があると驚く生き物なのだから。


そして、ここは魔法が使えたりするビックリドッキリ世界。


私は自分の感情に正直なのである。


「ああ?おいおい、こんな所に嬢ちゃんとネェちゃんが何の用だぁ?」


「なんだ?どっかの貴族様か?可愛い顔してるじゃねぇか」


「おいおい、お前ロリコンか?……いや、確かに超可愛いな。人形みたいだ……」


「お嬢ちゃぁん、コッチにきてお姉さん達と美味しい物食べなぁい?」


「おお!?そこのメイドのネェちゃん超タイプだ!コッチに来て俺にご奉仕してくれよ!」


「ちょっと、止めなさいよ!王族の人かも知れないでしょうが!あんた飲み過ぎよ!」


「なぁ、お前話しかけてこいよ」


「……ええ。お前が行けよ」


「何だよ、ヘタレだな」


ギャハハハ!

ワハハハ!

アハハハ!


そんな声がそこかしこから聴こえてくるとても喧しい場所。


テーブルでは良く分からない格好をした厳ついおじさん達が犇めくように、酒を飲んではギャーギャーと騒いでいる。


それを、一緒にいるこれまた良く分からない格好をした女の人が窘めたり、一緒になって騒いだりしている。


それ以外の良く分からない格好をした人達が、物珍しそうに遠巻きにこちらを眺めながら話をしている。


ウェイトレスさんっぽい人がそんな人達の中を料理を乗せたお皿を持って忙しそうに走り回っている。


四つ並んだ受付のような場所では、それぞれお揃いの制服を着た女の人が退屈そうに欠伸をしている。


何処だろう此処は……。


居酒屋かな?


「……場所間違えたかな?」


「さっき案内してくれた人は確かにここだって言っていたわよ?」


「騒がしい場所ですね。何なのでしょうか」





さて、順を追って話す事にしよう。



今、私達はリアデの街に来ていた。


お城でお昼ご飯を食べた後、私の時空魔法で一瞬にしてやって来たその街は、人が沢山いる活気のある大きな街であった。


所で、ヌーヴェル伯爵家が治めるヌーヴェル伯爵領は、大陸の西側大部分を国土とする王国の南西端に位置する。


南側の海岸以外、周りを高い山脈にぐるりと囲まれた盆地で、海産資源、鉱山資源、森林資源と、資源に恵まれ、山脈を越えた北はバズィ侯爵領、南西には死の森が存在する。

貿易路は南側の海路と、北側の山脈を超える陸路があるが、陸路は馬車が使えず時間がかかる為、大半の貿易は海路を用いて行っている。

陸の孤島と言えるが、領内の町や村は自給自足が成り立っており、貿易は輸出が主である為、財政的には比較的余裕があり、商人が良く訪れる地でもある。


死の森から流れ出る瘴気の影響で、西側の山脈向こうは尽くの生物が存在せず、その御蔭で領土の西側は魔物が少ない。領内全域で見ても他の土地との差は歴然であり、その為まだ駆け出しの冒険者達が集う地でもあった。


そんな、平和と言う言葉が良く似合う土地の中で一番大きな街が、ここリアデである。


とても広大な街面積にも関わらず周囲を高い外壁に囲まれたリアデの街は、その一部が海に面している為、街の外に漁港と併せた貿易港が存在し、リアデは海路の貿易拠点にもなっている。

治安は比較的良くスラムも存在しない、王国一安全な街だと言われているそうで、「王都民に聴いた、移住する場合に住みたい街トップ3」に、ここ10年は毎年ランクインしているそうである。


と言うのは、昼食を食べながらソフィア隊長から聴いた話だ。



そんな街にやって来た私達。


一緒に来たソフィア隊長とブラン隊員とは早々に別れて、私達三人は街を一通り観光する事にしたのだった。


初めて見るこの世界の人間の街は物珍しいものばかりで、私達は時間を忘れて見て回ってしまった。

海外旅行にでも来た気分になってくる。


街で一番目を引くのは、街の中心部に存在する大きな屋敷。

ソフィア隊長の実家であるヌーヴェル伯爵家である。


そしてそこから伸びる二本の大通り沿いには、様々な商店が軒を連ねており、大勢の人々が行き交う活気を見せていた。


流石は港がある街という事もあって、輸入品らしき物を扱うお店がそこそこの数あったりする。


そんな中でも私が一番驚いたのは、動物の耳を頭から生やした人が沢山いた事だ。


何と、動物の耳である。

猫耳とかうさ耳とか。


それに加えてお尻の上辺りに尻尾までついているのだから、私は少しテンションがあがってしまった。


あれが、コスプレというやつである。私知ってる。


道行く女の人や子供が動物の耳を着けている姿はとても可愛く、思わずまじまじと見てしまったくらいである。


そして、中にはそんな動物の耳と尻尾を生やした男の人もいて、渋い髭を生やしたダンディズム溢れるおじ様までが、動物の耳と尻尾を着けているのを見たときは、更に驚いた。


あれがギャップ萌えというやつである。私知ってる。


この街では動物の耳と尻尾を着けるのが、どうやら一部で流行っているみたいだ。


それとも、今日は何かのイベントなのだろうか?


そんな事をエディルアに話すと、彼女は不思議そうな顔で


「頭に動物の耳を着けた人?……ああ、獣人族の事ね。あれは着けているんじゃなくて生えてるのよ。れっきとした身体の一部」


と教えてくれたのだった。


どうやら造り物では無く、本当に動物の耳が頭から生えていて、尻尾がお尻の上から生えているらしい。


獣人族。

この世界の人種の一つだと神様が言っていた気がする。


動物の耳と尻尾が生えているなんて、何とも不思議可愛い人達である。


私はどうやらとんだ失礼な勘違いをしていたみたいだ。



そんなこの世界の新しい発見に驚きつつ、寄り道をしながら街を一通り見て回る頃には夕方になっていた。


そして、当初の目的である冒険者になるべく、ソフィア隊長に聴いていた冒険者ギルドという場所に私達は向かった。

冒険者ギルドに行けば、冒険者になってお金を稼ぐ事が出来るらしいのだ。


場所が分からなかったので、道行く親切な人に教えて貰い、そして着いてみれば、そこにはまるで居酒屋のような光景が広がっていた。


私達に集まる好奇の目と、口々に投げ掛けられる言葉の数々。


色々な色の鎧、革っぽい何かで作られた良く分からない服、長いローブ、など、よく分からない服装で、酔っ払いながら騒いでいるおじさんとお姉さん。


私の驚きが分かるだろうか。



「さっきの人が場所間違えたんじゃないかな」


最早それしか考えられない。


ここはきっと居酒屋である。行った事はないけれど、間違い無い。


「そうなのかしら?誰かに聴いてみましょうか」


と、エディルアが言うので、多種の好奇の目に晒された中、私達は何かの受付っぽいカウンターの一つに向かった。


カウンターの内側には、きっとここの職員か店員さんなのだろうという装いの女の人がいた。


若くて綺麗な、二十代前半位の見た目をした女性。

胸に付いた名札にはナンシーという名前が書かれている。


所で、この世界の女性は何故か美人が多い。


エディルアとヘデラは怖いくらい整った容姿をしているが、ソフィア隊長を始め、そんな二人に負けず劣らずな美人さんがこの街には沢山いた。


この世界の不思議である。


そして、目の前のナンシーさんもその一人。


茶髪のショートヘアがよく似合った、ボーイッシュな見た目の美人さんだ。


「こんにちは。本日はどういったご要件でしょうか」


退屈そうに頬杖をついていたナンシーさんは、私達が近づくとスッと佇まいを直して、とても良い笑顔でそんな事を言った。


まるで前世の役所のような対応である。

きっとマニュアルとかあるのだ。


「ここは冒険者ギルドという場所で宜しかったでしょうか?」


「ええ、そうですが……?」


ヘデラが尋ねると、ナンシーさんは不思議そうに小首を傾げた。


ここは冒険者ギルドであっていたらしい。


居酒屋では無い。


なら、あの食べたり飲んだりして騒いでいる人達は何なんだろう。

……分からない。


「私達冒険者になりたいのだけれど、どうすればいいのかしら?」


「あ、貴方達が……です、か?」


エディルアが要件を伝えると、ナンシーさんは驚いた表情で言葉を詰まらせた。


私達が冒険者になると言い出した事は、ナンシーさんにとって余程驚く事だったらしい。

目を丸くしている。


「?そうだけど……何か駄目だったかしら?」


「い、いえ、ですが……」


そして何故かしどろもどろになりだすナンシーさん。


いったい何だと言うのだろうか。


私達がそんなナンシーさんを疑問に思っていると、後ろから声を架けてくる人がいた。


「おいおい、嬢ちゃん達冒険者になりたいだぁ?冒険者がどういうもんか知らねえんじゃねぇのかあ?」


という、陽気な嘲りとでも言うような言葉である。


振り返って見れば、顔を赤くして酔っ払った強面のおじさんが、木のコップを片手に、ニヤニヤと愉しそうな顔をして立っていた。


冒険者がどういうものなのかは、ソフィア隊長に聴いて多少知っている程度であるが、何だろう、このおじさん。

詳しく教えてくれるのだろうか。


きっと「嬢ちゃん」と言うのは私の事なのだろうと思い、私がそのおじさんに答えた。


「魔物を倒すとお金が貰えるんでしょ?私達お金を稼ぎたいんだけど」


すると、それを聴いた酔っ払いおじさんは一瞬呆けたような表情になり、次の瞬間には


ダッハッハッハ!!


という爆笑が建物内で巻き起こった。


これまたビックリサプライズである。


「おいおい、嬢ちゃん達!冒険者を舐めちゃいけないぜ。きっと訳ありなんだろうが、命を粗末にしちゃいけねぇ!」


「おいおい、正気かあ?」


「そんなか弱い腕で何が出来るってんだ。冗談は止めとけよ」


「お嬢ちゃんコッチにおいでぇ。お金なんて稼がなくてもお姉さんが養ってあげるぅ」


「おーい、メイドのネェちゃん!冒険者なんていいから俺の股の暴剣を相手してくれよ!」


「何言ってんのよ。あんたのは木の枝でしょうが。ちょっと、もう!脱ぎ出さないでよ!」


「おい、お前話しかけてこいよ」


「……ええ。だから嫌だよ」


「やっぱり、ヘタレだな」



そして、そんな声がそこかしこから私達へ浴びせられる。


これがカルチャーギャップ……否、酔っ払いである。


私達は今、この世界の酔っ払い達に絡まれているのだ。


いったい何なのだろうかここは……。

仕事をする場所じゃなかったのだろうか。


「全く、喧しいですね。アリス様の前だと言うのに……。如何致しますか?言って頂ければ直ぐに黙らせますが」


そう言ってヘデラが影を操ろうとしている。


また強制土下座でもさせる気だろうか?


如何も何も、このメイドさんは鎧集団の騒動を忘れたのだろうか?

こんな場所でまた喧嘩になるのは勘弁して欲しい。


「……いや、大丈夫」


「いったい何なのかしら……人間はやっぱり分からないわ」


私も分からない。

前世は人間だったのに。


しかし、ギャーギャーと騒いでいる内容を聴く限り、私達が冒険者になるのを止めているようである。

寧ろ私達では冒険者になれないと言っているようでもある。


可能性はある。


年齢制限があるだとか、よそ者だから駄目だとか、そもそも人間じゃないので駄目だとか。


ソフィア隊長はそんな事は言っていなかったので、気にもしていなかったが、前世の職業にも募集要項とか面接とか審査とかあったし、この世界の仕事にもそういうものがあってもおかしくは無い。


「うーん……。もしかすると私達は冒険者になれないのかもしれない」


これはどうした事だろう。


神様のアドバイス通りにしたと言うのに、それでは困ってしまう。


それとも、あの何も教えてくれない神様のアドバイスが、まともなわけ無いという事なのだろうか。


もしそうならば、私は何を信じて生きていけば良いのか分からなくなってしまう。


人間不信ならぬ、神様不信になってしまう。


「そうなのかしら?貴女」


「い、いえ。そんな事はありませんよ」


エディルアがナンシーさんにそう尋ねると、ナンシーさんは引き攣ったような笑みで、慌てて否定した。


違った。


どうやら、冒険者になれないと言うわけでは無さそうだ。


「ただ、ですね。冒険者と言うのはご存知のように、魔物の討伐などの依頼を請け負う仕事になりますので、魔物と闘える力を持った方でないと、出来ない仕事なんです」


それはそうでしょう。


私達もそんな事は百も承知でここに来たのだ。


……否、そうか。


私達が魔物と闘えるような力を持っているのかどうかを、ここの皆は気にしていたわけだ。


私なんて見た目は小学生くらいの子供だし、エディルアもヘデラも戦いなどとは無縁に見える、麗しい美人のお姉さんである。


「お前ら本当に闘いとか出来るの?」と、ここの酔いどれおじさん達は言っていたわけだ。


「どうすればいいの?証明すればいい?」


「はい。なので皆様の能力値を見せて頂きたいのです。これは冒険者に登録する際のルールになっていますので。……あの、お気を悪くしないで下さいね」


「なる程、そういう事なのね。やったわね!アリスの能力値がやっと見れるわよ!」


「私の能力値?」


何だろそれは。


何の能力値だろうか。


「簡単に言えば、その人が元々持っている能力の高さを数値で見ることが出来るの。力の強さとか、頑丈さとか、頭の良さとかね。昔は見通す石版っていう神器級(アーティファクト)のマジックアイテムで調べていたのだけど、今はどうなのかしら?」


「ええ、見通す石版を使いますよ。能力値を確認して、冒険者として最低限の戦闘能力があるかどうか、それがどのレベルなのかを判断しています。これはどこの冒険者ギルドでも義務化されていて、戦闘能力を持たない方が危ない事をするのを防いでいるんです」


つまり、「魔物と闘うのは危ないから、闘う事が出来ない人は冒険者になれません」ということだ。


きっと職業適正テストみたいなものだろう。


年齢制限が無くて良かった。

私の見た目では落とされていたかもしれない。


私達は「それでは皆様、この石版に手を置いて下さい」というナンシーさんの言葉通り、カウンターに三つ並べて置かれた、見通す石版と言うらしい黒い板にそれぞれ手を置いた。


すると、その板が白い光を放ち、表面に光る文字が浮かび上がってきたではないか。

これまた不思議なものである。



ーーーーーーーーーーーーー


名前:アリス


性別:♀


種族:真祖


年齢:1


LV:6



STR:81602


DEX:380956


VIT:8672210392


AGI:49101


INT:9141096680


MND:58891017318


LUK:509


CHA:100000


魔力値:86658296601


魔力適正:100



スキル:吸血

    血の盟約

    血界

    吸血鬼作成

    高貴なる者

    眷属召喚

    血液操作

    真祖の魔眼

    光弱体化(超微)

    超再生(極)

    不老不死

    加護付与(始まりの真祖アリス)

    状態異常無効

    特攻無効

    上位魔法無効

    即死無効

    飛行

    呪耐性(Lv.MAX)

    死霊術

    アイテムボックス(血の収納)

    環境順応(中)

    不汚



魔法:時空魔法(Lv.5)

   具現魔法

   原初魔法(Lv.MAX)

   無詠唱

   飛行魔法(Lv.MAX)


ーーーーーーーーーーーーー



うぅん……数字がいっぱい並んでいる。


これが、私の能力値……全然分からないぞ。


STRとは何だろうか……スター?


「うわぁ!やっぱりアリスは魔法関係の数値が桁違いね!凄いわ!」


私が石版を眺めて良く分からないと思っているど、横から私の能力値を覗きこんできたエディルアが燥いだ風に言った。


どれが何の数字なのか全く分からないが、私は魔法の値が凄いらしい。


どれだろう?

MNDというやつが一番高いが、これだろうか?


分からないので、どれが何の数字なのかを尋ねると、エディルアは教えてくれた。


STR:力の強さ

DEX:器用さ

VIT:頑丈さ

AGI:すばしっこさ

INT:頭の回転の良さ

MND:精神力の強さ

LUK:運の良さ

CHA:カリスマ性の高さ

魔力量:持てる魔力の最大量

魔力適正:魔力を扱う上手さ


という事らしい。


ならば最初からそう書いてくれれば良いのに、親切でない石版だ。


基、どうやら私は頑丈で、頭の回転が早くて、精神力が強いらしい。


……どこがだろうか?

そんな事言われても全然実感が沸かない。


二人はどんな感じなのだろうと、私はエディルアとヘデラの石版も覗いてみた。



ーーーーーーーーーーーーー


名前:エディルア


性別:♀


種族:終焉邪龍


年齢:3129


LV:1342



STR:59887610


DEX:88755


VIT:298710306376


AGI:3799165


INT:43990


MND:5889101


LUK:188


CHA:87668


魔力値:6231123


魔力適正:73



スキル:終焉の死闇

    終焉の龍眼

    形態変化

    黒闇操作

    不老不死

    無慈悲

    深淵

    闇の再生

    特攻無効

    即死無効

    精神干渉無効

    魔法攻撃無効

    物理攻撃半減

    状態異常耐性(Lv.MAX)

    環境適応(極)

    加護付与(死神、終焉、龍神)



魔法:龍魔法(Lv.MAX)

   闇魔法(Lv.MAX)

   火魔法(Lv.8)

   水魔法(Lv.4)

   土魔法(Lv.8)

   風魔法(Lv.8)

   無詠唱

   飛行魔法(Lv.MAX)

   呪死魔法


ーーーーーーーーーーーーー





ーーーーーーーーーーーーー


名前:ヘデラ


性別:♀


種族:真祖


年齢:1


LV:3



STR:29938


DEX:3096684119


VIT:801381


AGI:198805217


INT:96883


MND:76779021


LUK:999


CHA:78110


魔力値:3278109


魔力適正:82



スキル:吸血

    血の盟約

    血界

    眷属召喚

    血液操作

    真祖の魔眼

    光弱体化(超微)

    超再生(極)

    不老不死

    魔法攻撃無効

    精神干渉無効

    即死無効

    飛行

    付き従う者

    無傷の献身

    全てが尊い我が主

    並列思考

    多重存在

    短剣術(Lv.7)

    体術(Lv.6)

    糸操術(Lv.9)

    状態異常耐性(Lv.MAX)

    アイテムボックス(血の収納)

    メイド術(極)

    環境順応(中)



魔法:空間魔法(Lv.8)

   火魔法(Lv.6)

   水魔法(Lv.3)

   土魔法(Lv.9)

   闇魔法(Lv.8)

   影魔法(Lv.MAX)

   死神の抱擁

   無詠唱

   飛行魔法(Lv.5)



ーーーーーーーーーーーーー



うぅん……。


数値が大きすぎて分かりにくいのだ。

ぱっと見て何が高いのかが判別出来ない。


グラフにでもしてくれればいいのに……。

excelが欲しい。


「……エディルアは力が強くて頑丈、ヘデラは器用ですばしっこいって事?」


「簡単に言えばそう言う事ね。ヘデラは流石メイドね」


メイドさんは器用だという事だろうか。


確かにヘデラは器用だと思う。

器用と言うか、そつが無いと言うか。


「ありがとうございます。しかし、これは見づらいですね。基準が分からないので何とも言えませんが、もう少し桁を減らすなりして、見やすくした方が宜しいのでは無いですか?」


「私もそう思う」


この石版は改良した方がいい。


闘う事が出来るかどうかを知るだけなら○か☓だけ出ればいいのだ。


こんな数字なんてなんの役に立つのやら分からないが、そもそも人の能力なんて数値化出来るものでも無いだろう。

体調とかその日の気分で大分変わるものだ。


このテストは良く分からないな。


「それは仕方無いわよ。私達の数値の桁がおかしいんだから」


「……え。そうなの?」


どういう事だろうかとナンシーさんを見ると、彼女は私達の石版を見つめたまま固まっていた。


口を半開きにして、目を開いたまま瞬きもしない。


凄い。

まるで時間が止まったようである。


パントマイムというやつだ。


「どうされたのでしょうか?」


「驚いているんじゃないかしら?おーい」


エディルアがナンシーさんの眼前で手を振っていると、軈てそれに気がついたナンシーさんが、ハッとして正気に戻ったようだ。


凄い。

こんなやり取り、現実で初めて見た。


意識がトリップしていたというやつだ。


「うひゃぁッ!……し、しし失礼しましひゃぁ!ど、どどどどう、どうやらこの石版は壊れているようですぅっ。べ、べつ、別の、別のものをぉぅ……」


するとナンシーさんは急に吃音になったかのような話し方で、何やらアワアワと慌て初めてしまった。


どうやらこの石版は壊れているらしい。


「見通す石版は壊れないでしょう。神器(アーティファクト)なんだから」


「うぁ……あわ、わわわわ………」


否、壊れていなかったらしい。


何なのだろうか。


ナンシーさんはいったいどうしてしまったのだろう。




いや、待て。


……もしや、あれか?


私とヘデラの種族が真祖だったり、エディルアの種族が終焉邪龍だったりと表示されているのを見て、驚いてしまったのだろうか?


もしそうなら困った事になってしまう。


今の今まで大して気にも留めていなかったが、よくよく考えれば、私達は超希少な種族であり、ブラン隊員に言わせればお伽噺の存在。


エディルアに至っては、悪さをした子供を脅す閻魔様のようなポジションらしいのだ。


そんな有名人が目の前に現れれば驚くのは当然。

今のナンシーさんの様になってしまうのかもしれない。




しまった……。


私達の正体を知ったソフィア隊長とブラン隊員の反応を見た時に、気に掛けておくべきであった。


「何を慌てているのかは知りませんが、少し落ち着いて下さい。アリス様の前ですよ」


「ゔぅぅ……ひぇぇ……」


ヘデラが少し語気を強めて言うと、ナンシーさんは気の抜けた声を残して、カウンターの向こう側に崩れ落ちてしまった。


そして訪れる気まずい沈黙の中、私達三人はどうしたものかと顔を見合わせた。


どうしようも無いのだ。



今日はごめんなさいを言って、騒ぎにならない内にそそくさと帰ろう。

そして、明日また来よう。

明日になればナンシーさんも落ち着いているだろう。


そんな風に諦めた私と、良く分からないといった表情のヘデラ、困ったような笑顔のエディルア。



そうして、訪れる静寂。



……静寂?




そう、静寂である。


後ろでギャーギャーと騒いでいた酔っ払い達の声が、いつの間にか聴こえ無くなっていた。


おや、どうしたものか……。


と振り返ってみると、強面のおじさん、お姉さん達が顔を青くさせて汗をダラダラと垂らし、全員が私達から離れた場所で、震える手に武器を構えながら対峙していた。


何処かで見たことがある図だ。





「何か……冒険者になるの、止めよっか」


「この無礼者共が!」


私が肩を落としてそんな事を言うのと、ヘデラが影を操りその場にいた全員を強制土下座させたのは、正に同時の出来事であった。


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