アリスさん、スキルを知る3
もう一人のヘデラを魔力に戻して霧散させ、私とエディルアのステータスもそれぞれヘデラに見せたのだが、その時、私の職業が変わり、称号が増えているのに気がついた。
ーーーーーーーーーーーーー
職業 真祖の姫:真祖と吸血鬼を生み出す者。全ての真祖と吸血鬼の母であり、束ねる存在。悠久の刻を生きる夜闇の支配者。
称号 魔術の禁忌者:世界の法則に干渉し、魔術カテゴリーの理を一部書き換えた者に与えられた名。一度に莫大な魔力を使用するのは控えましょう。
魔術と魔法の女神カゲラエの加護。
魔術と魔法の女神カゲラエの加護:?????
ーーーーーーーーーーーーー
職業が「真祖の姫」になったのは別にいい。
それは仕事なのか?とは思うが、前のも同じ感じだったし、まあ気にしない。
だが、称号の方は何だろうか。
ヘデラを作った時に使った魔力五百億は、魔力込め過ぎという事だろうか?
「一度に莫大な魔力を使用するのは控えましょう。」って書いてあるし。
多ければ多い程良いんじゃなかったのだろうか。
……限度があったのかな?
今度からは少なくすれば良いか。
などと考えながら、改めて私とヘデラのスキルの内容の把握と使い方の確認を始めた。
スキル 「高貴なる者」
私は常時目に見えないオーラを纏っているらしく、周囲にいる者に「只者では無い」感を与えるらしい。
ある種の感情を周囲に伝播する事が出来る。
何とも分かりにくいものである。
そしてその内容が、相手に敬意を抱かせたり、相手を威圧したり、恐怖させたり、殺気を放ったりという、どうにも穏やかではないものが多い。
エディルアもヘデラも精神干渉無効のスキルを持っているので、周りの人がどういう反応をするのか今は分からない。
街に行けば何かしら反応してくれる人がいるかもしれないので、その時のお楽しみにしておこうと思う。
スキル 「眷属召喚」
離れた場所にいる眷属を、空間魔法を用いて自分の近くに転移させるらしい。
今は眷属がいない為、試せない。
スキル 「血液操作」
魔力で生成した血液を操る。
これはさっきから結構使っているので、だいぶ使うのにも慣れてきた。頭で想像した通りに動くので、指よりも器用に動かせる自信がある便利なものだ。
スキル 「真祖の魔眼」
内容は、暗い場所でも昼間と変わらない程に鮮明に見える「夜目」
あらゆる物の正体を見抜き、詳細を知る事が出来る「絶対鑑定」
一定の範囲内にあるものなら、その間にある障害物を全て透かして見る事が出来る「透視」
魔力そのものを見ることが出来る「魔力視」
目を合わせた者を魅了する「魅了視」
目を合わせた者に呪いをかける「邪視」
目を合わせた者の考えが分かる「思考視」
全て問題なく使えた。
特に絶対鑑定なんて凄い。
試しに木を調べてみれば、種類から樹齢や葉っぱの数まで何でも分かってしまうのだ。
剣やポーションの詳細が分ったのも、これのおかげである。
恐ろしい。
これで出張鑑定団をやれば大流行だろう。
スキル 「超再生(極)」
最初は指先をちょっとだけ切って見ようと思い、血液操作で刃状に硬めた血で切ってみたのだが、傷が塞がる速度が速すぎるのか、刃が通っていないのか、何の変化もない。
これでは分からないでは無いか。と、思い切って指を逆方向に曲げてみれば何の痛みも無くぽきりと骨が折れ、折れた骨が肉を割いて飛び出してきた。
何をやってるんだ私は!と、焦って指を持っている手を離すと、逆に向いていた指が元に戻り、何とも無く動かす事が出来た。
おかしな身体になってしまったものだと、唖然としていると、例え消し炭になったとしても、灰の一欠片でもあれば直ぐに元に戻るだろうとエディルアに言われ、少し陰鬱な気分になったのは言うまでも無い。
スキル 「不老不死」
肉体の老いが無くなり、自然死をする事が無くなるそうだ。
つまり私はこのまま成長しないという事である。
……ええ、何それ聴いてない。
「アリスも私もヘデラも世界の終わりまでこのまま、肉体の変化は無いわ。アリスはずっとずっと今の可愛いまま〜!」
などと言っているエディルアに抱き締められながら、私は愕然とする。
何て事だ……。
誰もが羨むナイスバディーはどうした。
スタイル良くして下さいという願いは聞き届けられ無かったのか?
「あぁ……アリス様の愛らしいお身体をギュッと……。羨ましい……」
ヘデラが何か言っているが、今の私は少しそれどころではない。
前世の私は17歳の高校二年の時点で、中学生かと思っただの、小学生でも通用しそうだのと言われていた。
鏡を見ていない為分からないが、体感的に今の身体はそれより一回り程小さい。
つまり、外見だけ見れば完全に、完璧に小学生だということである。
児童である。
産まれたばかりだからと気にもしていなかったが、成長しないとなると話は変わる。
私はナイスバディーにはなれないのだ。
残酷な真実を突き付けられた私は、エディルアに撫で回されながら少しの間塞ぎ込むのであった。
スキル 「加護付与(始まりの真祖アリス)」
始まりの真相アリスの加護を物や人に付与するらしい。
どういうわけか私には創造神の加護がついていた。なかなかどうして親切だ。ありがとう神様。
私の加護というものがどういう効果なのかは、今のところ分からない。
そして付与した加護の内容も、付与した者にしか分からないようだ。
私達のステータスでも神様の加護の詳細が?????になっていたのはそういう事である。
というわけで早速付与してみる。
「二人とも私の加護をあげよう」
「ありがとう!」
「ありがとうございます」
そして、付与終了。
そして、付与した私には加護の内容が分かる。
始まりの真祖アリスの加護:不注意で転ける事が無くなる。
何とも微妙である。
「……不注意で転けなくなったみたい」
「素晴らしい加護です」
そうだろうか?
「私の加護も二人にあげるわ!死神の加護はランダムで死系統の高位スキル習得。終焉邪龍の加護は生物との戦闘時全能力値大上昇。龍神の加護は龍系統の魔物に襲われなくなり、龍族からの絶対の信頼を得るわ」
はいどうぞ。と、エディルアから三つの加護を貰った。
死系統スキルとして、私は「死霊術」という幽霊を操れるスキルを、ヘデラは「死神の抱擁」という、無効化されない限り耐性を無視して魂ごと消滅させる、なんていう物騒な特殊即死魔法を習得した。
エディルアの加護は何と言うか、強そうなのに、私の加護は何故ギャグみたいな内容なのだろうか。
あの創造神とかいう神様の仕業だろうか。
スキル 「状態異常無効」
私の身体は、麻痺や毒など、呪い以外のありとあらゆる肉体的な異常を無効化するらしい。医者要らず、薬要らずである。
スキル 「特攻無効」
特別攻撃という、ある種族に対して有利を持つ攻撃スキルを無効化する。
吸血鬼の場合、神聖魔法などがそれに当たるらしい。
それを無効化するという。
良く分からないがこれで更に私は頑丈になるわけである。
スキル 「上位魔法無効」
第六位階以下のあらゆる魔法、つまり、(Lv.6)以下の魔法スキルで習得出来る魔法全てが、私に向けられた瞬間に無効化されるという。
試しに、エディルアに幾つかの第六位階以下の魔法を私に向けて放って、火の龍や氷の槍、巨大な竜巻等、その尽くが私に触れた瞬間霧散した。
凄い。何だか無敵になった気分だ。
スキル 「即死無効」
即死攻撃、即死魔法を無効化する。
即死攻撃とか、剣で斬りつけたりするのももはや即死攻撃だと私は思うのだが、そうでは無いのがこの世界。
そういうスキルがあるらしいのだ。物騒なことである。
試しにヘデラがさっき覚えた「死神の抱擁」というスキルを私に使って貰おうかと思ったが、「アリス様に刃を向けるくらいならこの場で死にます」と言いだし諦めた。
そもそも、ドラゴンバージョンのエディルアが纏っていた「黒紫の死闇」も触れれば即死するらしいので、至近距離にいた私がまだ生きているということは、ちゃんと無効化されていたという事だろう。
スキル 「飛行」
翼を生やし、空を飛ぶ事が出来る。
やっぱり吸血鬼といえば黒いマントを靡かせて、蝙蝠のような翼で夜空を飛ぶイメージであろう。
想像していた「ほうきに乗って空を飛ぶ」では無かったが、翼を生やして空を飛べるなんて何だかロマンチックではないか。
私は早速翼を生やしてみることにした。
翼は魔力で出来ているらしく、不思議なことに服の上から翼が生える。
しかして、背中の肩甲骨辺りから左右に向けて生えてきたのは、紅く輝く血で出来た大きな翼であった。
「……何か、思ってたのと違うなぁ」
私はそのまま宙に浮かび上がりつつ呟く。
何と、翼を生やしたのは良いが、全く羽ばたかなくとも宙を移動出来てしまうのだ。びっくりである。
これ翼要らなく無い?
そう思ったが、翼を生やさなければ飛ぶ事は出来なかった。
便利なのか、不便なのか分からない仕様だ。
どうやら鳥の羽とは飛ぶ理屈が違い、飛行魔法で飛んでいるため羽ばたく必要が無いらしい。
そして、翼を生やした状態でないと、飛行魔法は使えないようである。
詳しくは難しいので知る気にならない。
しかし、蝙蝠の羽では無く血の翼なのは、どうなのだろうか。
紅く薄っすら光っており、表面は波打つように流動する翼である。
夜にこんなのを生やして空から降りて来たら多分怖い。
因みにエディルアも、人型のまま翼を生やせる。
ドラゴンバージョンの時の翼をそのまま縮めたような見た目で、尖さと力強さを印象付けるようなフォルムに、黒紫色の靄が薄く渦巻くように纏わり付いている。
そしてやはり、ヘデラも私と全く同じ血の翼である。
どうやら吸血鬼は血がとことん大好きな種族であるらしい。