表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャルゲーは異世界でやれ  作者: 成瀬 涼太
一章 『ギャルゲー以外にも』
5/5

4話 『翌檜かアスナロか』



うわーめっちゃ関わりたくない人達きたよー



俺の太ももよりも大きんじゃないかってくらい太い腕の筋肉、服がはち切れんほどに胸板が厚い

獣人だから多少そういう体型になるんだろうけど1人だけ他の獣人を見るに明らかにやばそうな雰囲気をプンプンと漂わせていた


ごつい体、この世界での一般服…なんか知らんがそんな感じのやつ

別格の獣人の後ろにまた2人


明らかに、明らかに、これは本当にやばいやつなんじゃないのか



「探したぞ、アスナロミラファルト」



んでさらっと名前口にしよったし。

俺が今から聞こうとしてたやつじゃん。本当に異世界って融通ってものが効かないなあ


図太い声質が俺の肩に重くのしかかったように感じた。

なぜかはわからない、だけど俺が今まで聞いてきた声とは違う何かがそれにはあった



「ーー。」



肝心の彼女はそんな大男になんて目もくれず一心に俺が買ったりんごを口にしている

シャリっという音と共に彼女の顔がにこやかに溶けていった


いやいやいや、そんな場合じゃないだろっと声を出して突っ込みたくなったのはぐっと飲み込んで



「えーと、何が何だかよくわからないんだけどあんたたちは?」



少しばかりの勇気を振り絞って大柄な獣人にそう言う

声は焦りと不安が混ざり合ったかのように小さく震えていた



「これはこれは。男と一緒だったのだな。名は名乗らん。私はその女に用があるんでな」



やっぱり彼からの声を聞くとどうにも足がすくんでしまう。彼女は呑気にりんご食べてるし、少しはこいつらのこと見てあげたらどうなんだ


それに、彼からの話を聞く限りバリバリなんか起きそうな雰囲気すんごいんだけど



「えーと、彼女に用があるんなら俺も同じなんだけど。言うとーー先客なんだよね俺」



一様名前分かっちゃったけど、彼女から名前は聞きたいし、先客といことは本当のことだ

まぁ、もちろんそれでこの獣人が『あぁそうか、じゃあ帰るとする』なんて言ってくれるわけーー



「それは失敬。なら、お前もついでに死んでもらうことにしよう」



胸ポケットからの一丁の銃

その矛先は俺の方へと向けられている


えっ!?何でそんなもの出してくんの

簡単には帰らないような感じだったけどそれ以上に予想をはるかに超えてきたんだけどぉ!


っていうか、『お前も』って言ってたから、まさかこいつらこの彼女を殺しに来たのか?

なにそれ、なんかこれーー第一イベント発生!みたいなの?


そうなると、ここで取るべき行動は



選択肢1 『彼女の前に立ち必死に守る』

選択肢2 『自分1人だけ逃げる』



ってな感じになるよな


うわーなんでもギャルゲ思考で考えちゃうけどどっちにしろこの二択しかないよなあ

どうしろって言うんだよこれ


まぁ、俺はその選択肢の間を行くことにしよう



「えっえっえーと…俺は殺さないでもらえます?」



震えた声でそういった。顔は若干にやけ混じりに


正直言ってものすごく怖いんです

毎日一日中部屋でギャルゲしてた俺にとっていきなりこんなイベント発生なんて肩荷が重すぎる



「ふむ、賢明な判断だ。早くそこをどけ」



「……はい。」



そう言って俺は彼女を背に大柄な獣人を引き渡すのだった

なんとも惨めでダサくて男失格、なんて感じだけど


俺がこれで終わると思うなよ



「さぁ、邪魔者はいなくなった。俺たちは殺し屋だ。今からお前、アスナロミラファルトをこの銃でころ……」



「油断したところを絶対粉砕ミゾラパーンチ!!」



油断していた獣人に後ろからもろ顔に拳を入れてやった


そもそもの作戦通りだ。油断したところなら誰しも拳が入りやすいってもんよ


まぁ、まぁ、でも、やっぱりこの判断は間違いだったかもしれない



「なんだ、卑怯な奴だな」



うわー全然聞いてねぇ

一様筋トレは毎日してたんだけど、こんな体格の奴らとは格が違うかよ



「逃げるのかと思っていたが油断させての拳か。なんとも卑怯であり、そして醜いな」



獣人が俺に銃口を向ける。今度はさっきの展開とは逆だ。標的は後ろの彼女ではなくて、単に喧嘩を売った俺に殺意がある


その銃口から溢れんばかりの殺気が伝わってくるのがわかった


あ、これはやばいかもしんない。まさかまさかの序盤で死んじゃう感じのやつなのか



「お前には死んでもらう」



「え!?でもいきなり後ろから殴ったのは悪かったよ?でもそんな物騒なもん向けられてるとついつい防衛体制に入っちゃうっていうかなんていうかーー」



「言いたいことはそれだけか?じゃあ死んでくれ」



あっこれマジで殺されるやつだ


俺の中で反面諦めの心が埋まった。一瞬の出来事、獣人の手が引き金を引く一瞬まで、鮮明に頭の中に記憶されている

死ぬ間際だからか、いつもよりゆっくりに周りは動いて見えた


どんっ


狭い道での銃声、当然音は反響し一定の時間響き続けた



「はうっ!」



耳元が痛い。耳がキーンと音を張り耳鳴りを発症させている

それと同時に、目の前の獣人はその巨体を背中から地面へと落としていった


音のした方は地面に落ちた獣人からの銃声ではなかった。現に俺には全く外傷がない、痛くもない、血も出ていない


言うなら無傷だ。まぁ、耳は若干痛いんだけど



「えっと……なにしてんの?」



銃声の鳴った俺の後ろを見た。


そこにいたのは銃を片手に立っていた彼女がいた

銃口は倒れた獣人に向けられていてそこからは小さく煙が漏れていた


右手には一丁のハンドガン。使い慣れた手つきに真顔で『よしっ』とでも言っているかのようだった



「当たった…」



「いや、当たった…じゃなくて、俺を殺す気でいなかった!?一瞬耳元にびって風を切った音が聞こえたんだけど」



そもそもなんでこの子が銃なんて持ってんのかよくわかんないし、なんで殺し屋なんかに狙われてるのなんかもわかんないし、いったいなにがどうなってんだよ



「それは…時と場合だから」



そこを素直に認めちゃうのね

もっとこう、ツンデレっぽいセリフとか言ってくれないのかな

アスナロ、だったっけ?名前もあのギャルゲのヒロインと同じだし、性格も似てるし、顔つきだって、彼女はいったいどういう存在なんだ?



「時と場合って…ねぇー。四面楚歌な感じがしたんだけどあの一瞬」



俺のその言葉とは裏腹に、倒れこむ大柄な獣人を目を丸めて見る2人のまた獣人がいる

それに対して、彼女は引き金をすぐに弾けるように、リロードをしていた



「ちょっと下がってて…。ここは、私達"ルネサンス"の役目だから」



「え、ーールネサンス?」



俺の問いかけは彼女には届かず、その刹那俺は物陰へと押し出された。ちょっと痛いぐらいに


そして、その後はよく覚えている。

2人の獣人が剣と銃を片手に彼女に向かっていく



「ボスの仇だ。おまえは生かしておけん!」



指揮官をなくした兵士がどれだけ無能なのか俺は知っている。だがその反面逆に士気が上がってとてつもない力を手にするときもある


それが今回でいう2人の獣人に当てはまっていた

みごとなコンビネーションの数々、俊敏な身のこなしと、抜かりのない攻撃


普通に考えて、俺が敵う相手ではないことは明白だった。もしかしたら異世界に来てなんか能力を手に入れていた!みたいなのがあったらそれなりに期待をしてもいいと思うけど、それはまだよくわからない段階だ


そんなことよりも、あいつ強すぎないか



俺が指すあいつとはもちろん彼女だった


身をよじりながら壁と壁との距離を正確に把握し、避けにくい狭い道での戦闘に徹している。銃弾なんてカスリもしな身のこなしだった


そして、その合間に黒いパンツをチラつかせながら引き金を引く。

着々と相手を弱らせていくその姿はまさにプロそのものだ


ハンドガンであそこまでやる?

あーいうのってだいたい初期装備な感じじゃないのか?それをあんなけうまく使うなんて彼女はいったい何者だ?


先刻言っていたルネサンスと何か関係があるのか



戦っている彼女もやっぱり無口で無表情だった。

頭の中では今夜の飯でも考えてそうなほど余裕そうだ


明らかに上級者レベルの強さ。だからあんなにりんごなんか食べて落ち着いていたわけね


強いし、黒いパンツは見えるし、あの子はすごいな

あ、パンツのことは戦ってたらしょうがないだろ。バク転とか宙返りとかするんだからパンチラ要素盛りだくさんなんだもん


スカートさん。ありがとう



そして、俺が色々と思考を巡らせていると、決着はついたらしい。もちろん彼女の勝利で



「安心せえ。峰打じゃ」



彼女は息も切らさずにそう一言だけ言った


絶対言いたかっただけのやつだろそれ


もちろんその言葉に嘘はない。現に血は出ているものの、ただ気絶しているだけで本当に殺している様子はなかった


そんなことできる方法があるんだな



「あっ…大丈夫?」



「え、まぁな。君の強さに今感服しているところなんだけどな」



呆れてなんかはいない。俺の命を助けてくれたんだ

お礼もできればしたいし、彼女になんか買ってあげるのもいいかもしれない

そんな気持ちが頭の中で転がっている時、彼女から何か渡された



「ん?なにこれ」



手にはりんご。1つだけまっさらに新しいものだった



「そもそもは、これミゾラの。私が盗んだものだし、だから返す」



「あぁ、そういうことか」



そういうところは優しいんだな。なおさらお礼がしたくなってきたよ

盗んだことも何にも言わないし、食べちゃった分も全部チャラだ



気持ちに甘えて、いやそもそも俺の買ったりんごだけど、複雑な気持ちになりつつ俺はそれをかじった

甘くて美味しい

ただそれ一択だった



「あ、そういえば"ルネサンス"ってなに?」



りんごを口に含みながら、彼女にそう疑問を口にした。

彼女は一瞬の間を空けて



「ルネサンス…?」



「そうそうルネサンス。君が俺に『これはルネサンスの役目だから』って言ってただろう?そのルネサンスっていうのを聞きたいんだけど」



ルネサンスって、結構歴史でも出てきた言葉だ。お笑いにも使われてたし、それが印象深いけど、もちろんここは異世界なんだ

他に違う意味があるに違いない



「……。」



「ーー?」



しばらくの無言の時間

ん?あれっ、急に静かになってどうしたんだろ。俺なんか変なこと言っちゃったのかな

ルネサンスが何か聞きたいだけなんだけど



「ルネサンスとは……」



唐突に彼女は言葉を口にした



「つまり自由人」



「自由人?」



「ついてきて、ミゾラにルネサンスのことが知られた以上放っておくことはできない」



意味深な言葉を並べられて、彼女はすっと大通りへと歩みを進めた

その背中には『早くついてこい』とでも書いているかのようだった



「放っておくことができないって、なんか嫌な感じがするのは俺だけか?」



彼女の少し後ろを歩いてついていくことにした

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ