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ギャルゲーは異世界でやれ  作者: 成瀬 涼太
一章 『ギャルゲー以外にも』
3/5

2話 『通りすがりの窃盗犯』




「あーなんとなくわかったぞ」



唐突にミゾラは残った4枚の10円玉を見つめてそう言った

汚いのもあれば綺麗に光沢が輝くものもある。そんな10円玉を太陽に照らしながらの発言だった



「これって銅だから、たかが10円でこんなに買えたのかな。そうじゃなくても珍しい何かには見えたんだろう、少なくともあの店主には」



俺が推測するに、この世界では銅の生産がうまくいってないんだろう。ここでいう銅は現世界でいうダイヤモンド!みたいな感じに。

いや、ダイヤモンドは言い過ぎか

だって対価でもらえたもんが食べ物だか

らな


10円=りんごたち、と考えるのが無難かな。りんご2個にカエル的なもの2匹、ざっと500円くらいか

そうなると10円玉はめちゃくちゃってほど希少価値のあるもんじゃないのか



「まぁ、どっちにせよまだ4枚もあるんだし日にちも考えてちょびちょび使っていくとするか」



そう言って俺はカエルのようなものを口に入れて味をかみしめた

ほのかに感じる香ばしい匂い。適度にのった脂、柔らかい肉質

あーこれただの鶏肉だわ


と、思いつつも美味しいのには変わりなかったから美味しく最後までいただくことにした



「それにしても、ここは広いな」



全てが鶏肉とあまり変わらない肉を頬張りながら目に映る光景にそう言葉をこぼした

明るくて活気に溢れていてこんな場所は現世界でも存在するのかわからないくらいだ


モチーフといえば異世界もの定番と言っていいほどの中世のヨーロッパって感じがすんすんと伝わってくる

まぁ、街を歩いている人は多種多様いますけども

未だに言わせてもらうぞ、俺は青色とかピンク色とかそんな目立つ髪型をしている人はコミケでしか見たことがない


獣人も獣人で画面の中では伝わってこなかったものが貫禄とともに頭の中へと入ってくる



「てか、そもそも俺はどういう経緯で異世界に連れてこられたんだろ。」



本当にどこぞのやつが魔法をミスって『あ、やっちゃった』みたいな軽いノリで異世界連れてこられてたら俺の存在意義はなんなんだ!って思っちゃうよ

いや、さすがにそんなことはないと思うんだけど。


明るい街並みに身を照らされていると自然と口にしている肉もさらに美味しくなってくる。俺にはそう感じた



「異世界に来らされたってことは何か俺に助けてほしいことがあるんじゃないのか?そしてヒロインと一緒にあらゆる問題を解決していく、いつもの妄想通りいくのかも不安だけど」



そもそもそのようなことが起きるのかもわからないことだし、ただ今の俺には腹を膨らましてこれからに備える。それしかできることはないようだった


2匹目を袋から取ろうと思って袋の中に手を突っ込んだ。なんか足が引っかかっているのか中々それは取れない

視線をその袋に集中させて、前なんか見ずにただ早く食べたいが一心に歩きながら2匹目を袋の中から取り出そうとしていた



「あれ?何がひっかかんでんだよ。中々2匹目が取れね…」



ぼすん



何かが俺の体にあたった音が耳に聞こえた。それと同時に胸の方に感じた感触もあった



「わっ!?」



驚きの声をあげて俺はびくっと肩を震わせた

何かが俺にあたったのだ。前を見ずに歩いていたから少しの不注意だ


俺は視線を袋から外して感触を感じた場所に視線をやった



「あ、ごめん。全然前見てな…くて…え?」



目の前には一人の少女がいた。もちろんその子が俺にぶつかったんだけど、いや言い直す。俺がその子にぶつかっちゃったんだけど

俺にはその少女に対して完全に動揺を隠せなかった


銀色の髪が少しの風に小さく揺れている

俺より少し小さくて顔もめちゃくちゃ可愛いし心なしかいい匂いもする


それだけならまだいい。

しかし、俺にはそれの他にもう1つ思うことがあった



「こっちもごめんなさい…」



彼女は静かにそう言うと一瞬だけ合わせてくれた視線をぷいっと行き先に変えて歩みを進めた



「え、ちょっと待って。…翌檜ちゃん?」



そう口から言葉が溢れた時には、もう彼女は俺の後ろを歩いていっていた

後ろ姿はまだ見える


腰ぐらいまでの銀髪が目に映る。見覚えのある顔が俺の目の前にさっきまであった


翌檜とは、俺がここに来る前に攻略しようとしていた女の子だ。そんな彼女にさっきぶつかった少女がとても似ていたのだ



「え、いやまさかね……。」



歩みを進める彼女の後ろ姿を見つめる俺


頭の中で色々と混乱している今、どう行動をとるべきかよくわからなかった

考えるなら


選択肢1 『呼び止める』

選択肢2『彼女の元へ向かう』

選択肢3『気のせいだと歩みを進める』


ギャルゲーの選択肢でしか思いつかなかったけど、ざっと考えると俺が取るべき行動はこの3つになるはずだ


正直言って本当に気のせいかもしれない。なぜゲームの中にいた翌檜がこの異世界にいるのか

いや、ただあの一瞬でそう感じただけだからまだ翌檜とは断定できない

つまり、どれにしても彼女のことが気になってたまらなかった



「こういう時は落ち着いてリラックスしてだな」



彼女の姿はまだ見えている。それほど小さくもなってないし呼び止めると気づいてくれる範囲だろう。

でも少し彼女と話してみたいっていう気持ちもある

だって似てるんだから



「悩むことが必要なものなんかじゃないのに」



いつもならただお互い謝ってそれで終わりなアクシデントだった

だけど今回は違う

なんていうか、こう見たことがある顔が頭の中に残ったら気になってしょうがない


そう思って自然と腕を組んでいた。悩むような仕草とともに大方俺は彼女を呼び止める方に答えが決まっていた時だった


右手が妙に軽いのに気づく



「え、あれ?妙に右手が軽いなぁ。」



見てみるとさっきまで持っていた紙袋がなくなっていた。その中には先ほど買った食べ物が入っていたというのに


え、なんでこんな急に買ったばかりのやつがなくなるわけ?

てか、さっきまで俺が持ってたのに



「え、さっき?ーーあの子!」



言葉の間に一瞬の時間が空いて、その間に俺は紙袋がなくなった意味を整理した

俺にぶつかって、そのあとに持っていた紙袋がなくなって…



「て、それ目的でぶつかってきたんじゃねぇかよ!」



つまり、俺が言いたいこと。俺にぶつかった彼女はスリのごとく俺の食料を盗みやがった。通りすがりの窃盗犯だ


今は翌檜に似てるとかそんなこと関係ない。盗られたもんは返してもらわないと


俺は灰色の髪を横に揺らしながら歩いていく彼女を追いかけた。

歩いている彼女に追いつくにはさほど時間なんて必要なかった


俺は彼女の左手をつかんだ(右手はなんか持ってるし、なんなのかはわからないけど)



「えーと、ちょっといいかな?」



目の前の少女の肩がびくっと震えたように感じた。彼女は俺に対して背を向けていたがそれでもその行動はよくわかった



「………。」



無言で答えられる


何も言い返してこない彼女に対して俺は追い打ちをかけるように言葉を並べた



「右手。何持ってるのかとっても気になってさ。俺の食料、1日の大事な食料、盗ったの君だろ!?いくら可愛いからってやっていいことと悪いことが……!」



「ぱくっ」



「えっ!?」



少女が振り返る



「ひひ手にはなにもほっへないへふ」



小声で何語かもわからない言葉を言ってきたけど何を言おうとしてたのかは大体わかった

この女の子、俺にばれたからっていっきに最後の1匹を口の中に強引に入れやがった

口パンパンだし、カエルの足が少し口から見えてるし



「君、嘘つくの下手くそか」



とにかくお水を飲むことを優先させた。俺は水を持っていなかったが幸い彼女が持っているようだったので早く飲んだほうがいいと勧めた

彼女はぐいっと水を飲んで小さな声で

「ぷはっ」と言った



「おいしかった…ありがと…」



『じゃあ』っとでも言っているかのように彼女は右手を上げこの場を立ち去ろうとした。そんな彼女を俺は若干戸惑い混じりに声を上げる



「いや待て待て待て待て」



「……?」



……?って、もうばれてるっていうのにまだしらを切る気でいるのだろうか

まぁ、俺がこの女の子の側だったら同じように行動をとるんだろうけど



「いや、君俺のえーとカエル?ぽいやつ、

食ったろ?」



「カエルじゃなくてカエグ」



彼女から訂正の言葉が入って、俺は慌てて言葉を変えた



「あ、カエグっていうのか。それ君食べたろ」



なんか教えてくれたけど…まぁそんなことは関係ない。


彼女はまたもや無言で言葉を返す

今度は首を振って『私は知らないよ』とでも言っているかのようだった


でも、彼女の顔を見ると


汗ダクダクに流れてるじゃないですか

緊張してる感すごいよこれ



「いや、だから嘘つくの下手くそか」



若干呆れと笑いが混ざってそう言った

彼女はもう嘘をつくことは無理だと判断したのか言葉を発した



「じゃあ…どうしろと…?」


即答で


「新しいの買ってきてくれない…!?」



驚きで最後の方の言葉が言えなかった

しかも俺は何かに反応したかのようにそっぽを向いてそう言った


まぁ、それにはちゃんと理由がある

彼女の、えーと服が…先ほどの汗でスケスケなんよねこれがまた


彼女の服は露出度が高いわけでもない。ふつうに異世界でごくありきたりの服を着ているわけなんだけど。なんていうのか、生地が薄いんだろう


こんな光景を見ていたら今は食べ物盗った盗ってない言ってる場合なんかじゃない


そんな俺をさらに焦らせるかのように彼女は言葉を口にした



「なんでそっぽむいてるの?」



「……え、あっいや…ねぇ」



スケスケですよ。なんて言ってあげたくても言える勇気なんてものはない

しかも道の真ん中で立ち話してるわけだし、もちろん行き交う人達は俺らのことなんて見てないだろうけどついつい気にしてしまう



ここでギャルゲーの選択肢が現れるとしたら



選択肢1 『スケスケですよ』と言う

選択肢2 『スケスケですよ』と服を脱がす

選択肢3 『スケスケですよ』と下も脱いで

もらう



うん、これはなかったことにしよう

俺の願望も混ざっちゃってるしこんな都合のいいことが起きるギャルゲーは最早エロゲーに名高いぞ

俺の頭の中でそんな脳内選択肢で妄想されてるとか知ったらこの子がかわいそうだし



「何か考えてるの?」



ガサガサという物音とともに少女は俺にそう言う



「いや、別に…」



彼女の方へと振り向く。そさて、俺の思考回路は一瞬として機能を停止した



「あっえっお、おい!?なんで服脱いでんだよ!」



混乱の声と興奮の声が混じりながらこの状況を確認する

俺の声とともに道行く人の視線が俺と彼女に集まる。鋭い目つきや中には変な目で見てくるやつや



「ちょちょいっ!」



俺は彼女の手を掴み、路地裏へと入ることにした。天気がいいというのにここはなぜか少し暗くなっている

彼女のスケスケの服がこの大勢の人達に見らるというのはなんだか複雑な気持ちだが嫌な気分になったのでそうすることにした。


いや、普通に考えて急に服脱ぎ始められたら隠そうとするでしょ。


とにかく俺の思考回路復活〜!ってそんなことを言っている場合じゃない

俺は右手に何やら柔らかく温かいものがあるのを今更感じる

細くて、繊細で、俺は混乱のあまり自分から彼女の手をつかんでいたのだ

路地裏へと連れて行く時に



「ああっ!」



大きな声とともに手を離す

彼女は俺の行動を見て何をしているのか全くわからない様子だった



「えっと…ごめん」



いちよう謝っておく。全ては彼女のせいでこんな羽目になっているんだけど


考える。先刻、何が起こったのか俺はなぜ彼女が急に服を脱ぎ始めたのかが気になっていた

彼女の方をちらりと見る



「……!」



すぐに目を避けた


理由は、彼女がなぜかまた服を脱ごうとしていたからだ。ちらりと見えた下着、黒色のブラとパンツは彼女の容姿にとても似合うようだ

てか、何解説してるんだ俺!


あー少しの谷間が俺の頭の思考回路をまたかき乱していくー


いや、とにかく素の自分に戻って



「あのさ…なんで脱いでんの?」



唐突に聞いてみた。実際のところとても気になっていたのだ。急に道の真ん中で服脱ごうとして、この子は羞恥というものを感じないのか?女の子なのに


まさかだけど『暑かったから』なんて一言で終わらされたら『はっ!?』って言っちゃいそうだ

まぁ、そんな理由ではないと思うけど



「暑かったから」



「はっ!?」



まさかとは思っていた言葉が聞こえて俺は驚きが隠せなかった



「もう、君と会ったの初めてだけど何考えてんのか全然わからないよ」



と、若干嘆き混じりに俺はそう言うのだった








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