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ギャルゲーは異世界でやれ  作者: 成瀬 涼太
一章 『ギャルゲー以外にも』
2/5

1話 『10円玉=りんごたち』




……よし。状況を理解しよう



目の前の光景を見てみると全くもってさっきまでいたあの暗い俺の部屋の面影はない

代わりにあるのが太陽に照らされて活気にあふれる見知らぬ場所

俺の目にはどう見ても近所の街並みではないこの場所が見えていた



「え、どうゆうことなの?」



俺の目の前を毛むくじゃらの男が横切っていく。服を着ていて、身長なんて人間のサイズではない


あ、いわゆるゲームとかで出てくるーー獣人ってやつなのかな

いやいやいや、そんなのが俺の目の前にいるわけがないだろう



「ーー。」



さらに目の前をカラフルな髪をした人間たちが楽しそうに会話を弾ませながら俺を横目に通り過ぎていく

赤や青や黄色や紫や橙やーーの色の髪を揺らして


まあ、赤と黄色とかは見たことあるよ。金髪にしてる人とか多いし赤色の髪をしてる人は近所のおばちゃんがそうだったし


でもさすがにその他の色をした髪型の人はみたことねぇぞ

なにその紫って近所にそんな人がいたんだったら色々と俺は勘違いてしまいそうだよ。他の色もこの意見に値する


んで、色々と整理してみる限りでは、

毛むくじゃらの人がいて、カラフルな髪をした人間がいて、モダンに包まれた明るい色の住居が立ち並んでいて、街は明るく活気にあふれていて




ーーあっここ異世界だわ




そう思ってしまうのに時間はさほど必要としなかった。そして、息をぐっと吸い込んで肺の中の空気をごっそり持っていって、大声で叫んだ



「異世界来ちゃったよ俺えええぇぇぇ」



あたりの獣人や人間の視線は俺に対してひどく痛々しいものだったが、こうやって大声で叫ばないと混乱で頭がどうにかなりそうだった


いや、それでもこんなアニメとかゲームでよく見る世界に来たら誰でもパニクるからね。

いつもと違う世界にいるんだから


これは異世界召喚されたものなのか、それだったらどこぞの誰かが『あっやっちゃった』みたいな軽いノリで魔法とかミスっちゃったやつだよねこれ!!


動揺が隠せないのは認めよう。

なんかどっかのアニメにいたなぁ。俺みたいに異世界来て大声で叫んでたやつ

それだったら俺にもハーレム生活とか待っていないのかなぁ


さて、自分の勝手な妄想はさておきこれからどうするべきか。これは最重要観点だな


とりあえず俺はポケットに入っていたものを全部出してみた。



「ポケットに入ってたのはーー」



バッキバキに画面が割れたスマホ

(電池残り30%)

なぜかなぜかのバンドエイド数枚

(ほぼ使い道なし)

消しゴムのかけら(使いすぎて真っ黒)

所持金450円(50円は全部10円玉)

最後にーー



「これは、なんだ?」



さっきまで出してきたのは全て右ポケットからのもの、そして俺が疑問の声をあげたものは左のポケットからポロリと姿を現した


見てみるとペンダントのようにもなっている。クリア板の中に1枚の小さな紙が入っていた

どちらかとゆうと首にかけるようなものじゃなくて大事にしまっておく、そのようなものだと俺は思った


クリア板は傷だらけで少し汚く黒くなっていた。



「なんでこんなものが俺のポケットの中に…見覚えないんだけどな」



両親からもらったものなのか、まぁ俺は親不孝ものなんだろうけどな。学校ずっと行ってないし

だから、もしこれが俺の両親からのじゃなければ一体誰からのなんだ


クリア板は固く閉ざされていて中の気になる紙は取り出すことができなかった。歯ぎしりを立てながら頑張ってみたんだけど



「ま、いいか。どちらにせよ今の俺にはどうもできないものだしな」



とにかくポケットから出したものを手のひらに収めた。ガラクタばかりなのに手のひらはいっぱいだ

一言ゆうなら



初期装備がクソすぎる。


しかも、部屋着できちゃったわけだし上は黒のパーカー下は黒の半ズボン。俺のいつもの格好なんだけど、正直言って周りの人との服装がありにも異なりすぎて恥ずかしい。

いやーこれは異世界さん冒険者にちょっと厳しすぎませんかね


せめて魔法とかスキルとかなんかつかえるようにはなってないんですかねぇ


魔法とかスキルとかそういうのはこんな世界に来たんだから1つや2つは欲しいな。生身で生きて行ける気がしないし



「まぁぐちぐち考えてもしょうがないか。とにかく歩いてこの街のことでも調べていこうかな。こうぼちぼちと」



ぼちぼちって、それが主題の絵本を昔よくお母さんに読んでもらってたなぁとか思いつつ、いつも通りの俺の様子だと信じてはいたが心は正直だった


伊月美空17歳。俺はとてつもなく途方に暮れていた


調べると言っても今からどこに行けばいいの検討がつかない

ここが異世界なんだってことはわかった

でも、色々と迷惑かけるのも面倒だし俺みたいに人間もいるけど獣人がいるってだけで野蛮そうで怖い


下手に動きすぎてこの世界でも俺の居場所がなくなるのはもっての他ごめんだ


だから、俺は口では軽はずみに言っていても心の中では多大なる不安でいっぱいだった


しかし、そんな不安をかき消すかのようにおれのお腹は大きく音を立てた

ぐ〜〜と


さっきカップラーメンとサラダ食べたのになぁ。現在もメロンソーダーが俺の胃の中で踊りまくってるはずなんだけど



「まずはなんか食べるか」



そう言って俺は食べ物が売ってそうな場所に歩みを進めた


腹が減っては戦はできぬとまさにこれのこと、何か食べないと思考力も低下するわけだし、動こうと思っても動けなかったらもともこもない

まぁ、腹の音を出しちゃって恥ずかしいのを隠そうと思って言い訳並べてるんだけど


あたりを見渡すと幸いここは商店街のようだ。見たことない…わけでもない野菜や果物を売っている店がちらほらと目に映る

おーレストランらしきものまであるじゃないか。


興奮をあらわにする俺はポケットからお金を取り出してレストランにーー人が多そうだからやめておいて無難にここは美味しそうなものを順番に買っていくことにした


俺は賑わう商店街の中に入って、1つの店の前へと立った



「お、にいちゃん。お前はお目が高いね俺の店の前に来るなんて、どうだなんか買っていくか?」



俺なら人殴りで殺されそうなほどがっしりとした肉付きに陽気な声で店の店主だろうか、その男が俺にそう言った



「おう、なんか買わせてもらうことにするよ。店主の店なかなか良さそうのもの売ってそうだしな」



これは単なるお世辞なんかじゃない

この店主の店、天井から何やらカエルの干物のようなものがぶら下がっている

普通は果物とかを売ってるんだろうけどお腹にたまるものも取り扱ってますよとまるでアピールしているかのようにそれは吊るされていた


つまり、そんなものを見るとなんかこの吊るされらてるやつってかなり美味いものなんじゃないのか!?なんていう錯覚を起こしてしまってもいいだろう

つまり、今の俺がそんな状態なんだ



吊るされてるやつってカエルに似ているなぁ。確かカエルって鶏肉のような味がするらしいからかなり美味しいものと睨んだぞ

これは食べたい



「ほーなかなか言うじゃねえかにいちゃんよ。俺んとこの品にそんなこと言ってくれるなんて嬉しいったらありゃしないぜ」



店主が照れくさそうに鼻をさすった

見た目とは違うギャップが見れたような気がした。大きな体つきな人も強そうの一言で縛るのはただの偏見だなと思った



「じゃあそこの吊るされてるやつと、その赤いやつ(りんごかな?)を俺にくれ」



そう言って全財産を店主の前であらわにした

が、それを見て店主の表情は一変する



「お前、もしかしてそれでこの品物の代金になると思ってるのか?そんな鉄の塊は今じゃこのりんご1個に1キロと言われてるぐらいだぞ!」



「俺を舐めてるのか?」と先刻の言葉の後に聞こえた時は背筋が凍るように固まった


え、俺なんか悪いことしちゃった感じ?全く侮辱とかそういう類のことをしたわけじゃないんだけど

てか、りんご一個に鉄の塊1キロって盛りすぎじゃないのか?


まぁ、ぐちぐち言ったって拉致があくわけでもない。

先ほどの発言、店主の言葉を言い換えると、ここじゃその硬貨は使えないって言っているんだろう


それだったら俺は素直にここを立ち去る。見た目やばそうな人になんやかんや言う度胸なんてものはないんでね



「マジか。俺ちょっと時代遅れてたわ。店主さん悪かった許してほしい」



若干懇願混じりのその言葉は俺の最大限の謝罪だった

これで許さん!とか言われて殴ってきたらそれはこの店主の心が狭すぎるだけだ



「いや、ちょっと待て」



俺の手に握られていた1つの10円玉を手にとって店主は疑い混じりにそれをまじまじと見始めた


なんのことかさっぱりわからんぞ?

急に10円玉取ってその硬貨は現世界でもりんご1つ買えないんだからなんでそんな見つめて



「お、にいちゃんこれならさっき言ってたやつ2つずつあげてやるよ」



と、言って店主は10円玉を握りしめたまま天井につらされているカエルのようなものを取りに行った

そして、紙袋にそれらを入れたかと思うと「まいど!」とだけ言って俺を店の近くから立ち去らせたのだった





「いったい何がなんだかわからないぞ?急にあんな簡単に品物渡して、それもたった10円で」



まぁいいか。何がともあれ食料は手に入ったのだから、とにかく食べて元気をつけることにしよう


そう思ってふとりんごを見た

この世界でもりんごはりんごのままなのか、見た目はそれそのものなんだけど中身の色が真っ黒でーーとかだったらどうしようか



「ま、フルーツは最後にとっておくか」



そう言ってさきぽどの広い道をカエルのような干物を右手に食べ歩き始めた。

目に映るのはやっぱり見慣れない世界であって混乱することはあるけどなかなか活気にあふれていていい場所だな、と俺は思いながら行き先がない道を歩いていた




後ろから銀髪の髪を揺らし、一人の少女が俺のことを見ているとも知らずに











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