表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
哀愁の副産物  作者: たこみ
4/12

第四話 もういい。

 隣の弟の部屋から喘ぎ声が聞こえてきたので、私は読んでいた雑誌を閉じると深く溜め息をついた。


 弟の部屋にはどこから連れてきたのか、半年ほど前から家出してきた女が住み着いているのだ。


 二人はいつもいつも大げさな喘ぎ声をあげながらキスをしている。



 私は悶々として、すっくと立ち上がると、自室を飛び出し隣の部屋のドアを勢いよく開けた。


 「ちょっといい加減にしなさいよ!」


 殺気立った私の顔を見ると、弟の彼女の加奈はまたかという表情をした。


 厄介になっているという立場を棚に上げて最近の娘は無駄に度胸が据わっているものだ。



 「あんたたちねえ、毎日うるさいのよ。性交渉は外でやりなさい!」


 すると加奈はなぜ悪いのだという目つきをして私に応戦をしてきた。


 「唇を合わせていただけですよ」



 日々の不満が募っていた私は声を大にして言った。


 「今はそうかもしれないけど、昨日の夜中は何よ。ベッドがミシミシいってたわよ。いくら温和な私でも許容できる範囲を超えてるわ!」



 「園子さん、盗聴器でもつけてるんですか?」


 「そんなモラルに反したことしないわよ。健太郎に色仕掛けを使うのはやめなさい」



 彼女は自分が私のお眼鏡にかなっていないことを重々承知している。


 「今頃小姑なんて流行らないですよ。ゆくゆくは本当の家族になるかもしれないんだから、いいじゃないですか」



 弟は私と加奈の言い争いがいつも通り長期戦になりそうなので、のそのそと床を這うとヘッドホンを頭につけベッドに寝転がった。


 完全にただの傍観者になっている。



 「それに私がいると利点もあるし」


 加奈は調理師の専門学校を出ているので、やたらと料理が上手い。


 それが強みで母にも気に入られているのだ。



 口ごもった私は少し言い方を変えてみることにした。


 「こんなひなびた団地を隠れ蓑にするのはよしなさいよ。ほら、うちってゴキブリ屋敷じゃない?」


 「お心遣いありがとうございます。でも月日が経つにつれてそういうところも好きになってきましたから」



 ネタ切れになってきたので改めて弟の方に目をやると今度はマンガを読みながらくっくっと笑っている。


 我が弟ながら無学というのが丸出しに見える。



 加奈と対立するスタミナがなくなった私は、二人していつまでも自堕落な生活を続けるんじゃないと言うと、部屋を後にした。


 背後からは私を打ち負かしたことに気分をよくした加奈が小躍りしながらきゃっきゃと言う声が聞こえてきた。



 頭を振りながら、いつまでも独り身でいるからこんなにもむしゃくしゃするのだろうかと自分に問いかけた。




筒抜けですよー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ