第十一話 ウンわかってた。
「あれが園子さんを骨抜きにした人ですか?」
「え!?」
あまりにも激しくたじろいだので、私は近くを歩いていた初老の男性とぶつかりそうになった。
「なんのことかしら・・・?」
「とぼけたって無駄ですよ。さっきのドラッグストアの前で会った彼女連れの恰幅のいい人は、以前言ってた中学時代園子さんの心を奪った人ですよね」
「よくわかったわね・・・」
「園子さんがあまりにも挙動不審なんでわかっちゃいましたよ」
松本くんのことをなんと形容したらいいかわからないほどカッコよかったのだと加奈に話していた私は、ばつが悪くなり必死になって言い訳を力説した。
「当時の松本くんのカッコ良さは群を抜いていたのよ!本当に彼だけは未来永劫カッコイイと思ってたの」
「ウソも方便ですよねぇ・・・。ま、気持ちは分かりますけど、あれはお世辞にもカッコイイとは言えないなぁ」
加奈に松本くんの返り咲きを期待していると笑われながら路駐していた車に戻ると、私たちの車の後ろにはぴたりとパトカーが止められてあり、違反切符を切られてしまった。
「園子さんが出頭して下さいよね」
婦人警官と少し言い合いになった加奈はムッとしながら言葉を吐いた。
「なんで私なのよ」
「だって園子さんのお父さんの車だし、園子さんペーパーなんだから害はないじゃないですか」
「そうだけど・・・」
文句を言いながらも松本くんのことに頭を巡らせていると、加奈は口を開いた。
「未練があるんですか?」
松本くんは中学時代に好きになった人だし、今更なんとも思っていないと私が言うと、加奈はそれにしては私の様子が普段と異なると言うので、勘の鋭い娘だなと思った。
ガードが甘いですね~