06
「ルーク、領主としてお前に話があるんだが」
「……来ると思っていました。ここは人目もあります、場所を変えましょう」
「私の執務室を使う。既に準備は出来ている」
何時もよりも早歩きのオーウェンの後を、私は付いていく
はぁ……もっと穏便に行きたかったんだが
そんな事を考えつつ、私はM1911を創造し懐に忍ばせる……別に暗殺する訳じゃない、護身用だ
「ここだ、入れ」
「……」
私は無言で彼に促されるままに執務室へと入る
"ガチャリ"と鍵を締める音が聴こえ、首筋にヒヤリとするものを当てられる
「いきなりサーベルとは穏やかじゃないですね」
「お前は誰だ」
「私はルー「とぼけるな、本当の名は」
「いつからお気づきで?」
「薄々そんな気がしていたが、確信したのはついさっきだ。私の勘違いだと思いたかったんだがな」
「いずれは話すつもりだったんですがね……私の本当の名はマーク・ハミル。とある国の軍隊で司令官を務めていました」
「息子は?ルークはどうした……」
怒気がこもった声で彼は私を問いただす
「彼は……ルークさんは亡くなりました。あの事故で。少なくともこの世にはもう居ない」
「だったらお前は!」
「私は何もしていません……彼は事故死だった、それ以上でもそれ以下でも無い。薄情だと思われるかもしれませんが、私も今この状況を飲み込むので精いっぱいなんです」
「……分かった……最後にこの水晶に触れてくれ、白く光ればお前の言っていることは真実になる」
そういって彼はサーベルの代わりに、透明な水晶を私に差し出す
「はい」
私がそれに触れると、水晶は白く輝きだした
「結構だ、もう戻っていい。お前の扱いは追って知らせる」
「失礼します……あ、それと裏庭を暫くお借りしても?」
「裏庭を使う者は居らん、好きにしろ……」
ドアを閉める直前に見えた彼は哀しい背中をしていた……
とまあ早速バレてしまったわけだが、これは高飛びの準備をしておくべきかもしれない
とりあえずはウェッジ達を迎えに行こう。ほったらかしだ
「ウェッジ、付近に異常はないか?」
「異常なしです」
「結構。早速だが私の正体が領主にバレた。万が一もあるから高飛びの準備をしなくちゃならん」
「高飛び……ですか。場所はどこですか?」
「……海だよ、海」
「海?」
「そうだ。この世界の海は魔獣がいるから海洋進出が進んでない。具体的にいうと沿岸漁業が関の山だな。沖合にはまだ進出出来ていない」
「つまりまだ人類は海を制していないと」
「あぁそうだ、つまり空母を中心とした海上拠点艦隊を設立すれば何かと便利ってことだな」
「しかし魔獣はどうされるのですか?」
「それなんだが、魔獣に襲われたときの対処法で音が効くってのがあるらしい。ソナーが使えると思う。とりあえずはディッピングソナーで実証実験だな」
「この銃火器の山はどうされますか?」
「領主に暫く裏庭を使っても良いと言質を取った、ここを暫定的な拠点とする。格納庫と倉庫で良いだろう」
そういって私はその2つを創造する。簡易的な拠点だから充分だろう
私はウェッジに命じ、ハンヴィーと銃火器をそれらに収める
「じゃあ私は海に行ってくる。無いとは思うが万が一の時はペイブ・ホークで離脱しろ。あとこれはその時の証拠隠滅用だ」
C4を渡し、実証実験用のSH-60F オーシャンホークや護衛、計三機のヘリを創造し私はその一機に乗り込む
「よし、出してくれ」
窓から彼が創造した鉄の鳥が飛んでいるのが見える
「領主、そして親として私は何をすべきなんだ……」
その声に答える者は居ない
9/27 オーウェンの後を付いていく様子を修正