ご飯対ライス
「すいません、ラーメンください」
「はい、中華そばですね」
俺は店員の一言に少し引っかかった。だが、一応もう一回言い直す。
「じゃあラーメン普通でお願いします」
「はい、中華そばですね」
「……あの」
俺は気になって店員を呼び止めた。店員は営業スマイルで「なんでしょう」と何の悪びれた様子も無い。
何で呼び止められたかもわかってないんだコイツは。ちくしょう。
「俺ラーメンて言ってるのに、どうして言い直すんですか」
「メニューの名前が中華そばになっているからです。後でそれで文句を言うお客さんがいらっしゃるので、それでこのようにしています」
「はあ……まあそういうことなら仕方ないですね」
店の事情を知った俺は、まあそういうことなら、と諦めてそれ以上ウダウダぬかすのをやめた。
とりあえず、ラーメン……もとい中華そば一つだけでは物足りないので、他にも注文することにした。
「あと、餃子もください」
「餃子ですね。当店では国産のものを使用していますので、ご安心ください」
「はあ……じゃあ、あとご飯もください」
「はい、ライスですね」
うん? また俺は店員の言葉に引っかかって、もう一度注文を頼んだ。
「そうですね。ご飯です」
「わかりました、ライスですね、以上でよろしいですか?」
「ちょ、ちょっとすいません。ちょっとすいません」
俺は我慢出来ずに呼び止めた。店員は、また白々しい笑顔で「なんですか?」と答えた。苛立ってるような声だった。
「どうして僕の言うことに一々反目するようにして言うんですか、いい加減にしてくださいよ」
「そういわれましても、当店ではご飯をライスと呼んでいますので」
「いや、事情はわかりますけど、そんな露骨に言わなくても良いじゃないですか。なんでラーメンが中華そばで、ご飯がライスなんですか!」
「あら、そうは言われますけど、お客さん」
「なんですか?」
口に手をあててわざとらしく言う店員を腹立たしく思いながら、俺は聞き返した。
「お客さんだって、さっきはラーメンだったのに、今はご飯……でしたよね?」
「……」
俺は恥ずかしくなって、店の机をひっくり返して、扉をぶち壊しながら外に出た。
ついでに、手に持っていた爆弾で店の看板を爆破して粉々にすると、脇目も振らずに遠く、遠くへと走っていった。
もうあの店にはいけない、仕方ないから別の店を探そうと、俺は顔を真っ赤にしながら走り続けた。
東京から走ってどれくらい経ったか、見覚えの無い建物ばかり経つ、片田舎のとても古びたラーメン屋に俺は入った。
今度は、ちゃんとラーメンがラーメンという名で売られていた。でも残念なことにライスは、売っていなかった。
今度は注文を聞かれる前に店ごと爆破した。だが、逃げるときに躓いて俺も巻き込まれて死んだ。
ごはんライス先生ごめんなさい。記念品ということで書いたら、本当になんとなく書いたような出来になってしまった……。ちょっと実話で感じたことが中に混ざっています。