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第12話 仮面
タナトスがもう少し様子を見たいというので、少女は嫌がりつつも、崖の見える場所まで近づいていった。
男や女が、相変わらず必死の形相で崖を登っていく。
「なあ、これ、必勝法とか無いのか?」
エロスが尋ねるので、少女は渋々こたえる。
「あるにはあるわ。まず一つは、他の参加者を脱落させること。もう一つは、仮面を被ること」
エロスは困惑した表情を見せる。
「仮面? そんなもん被ってどうするんだよ」
「仮面には魔力がある。全てを均質化し、一緒くたにしてしまうような魔力が」
「よく分からないな」
「当然よ。まあ、それを被っていれば、あとは地力次第というのが今のこの大会の現状ね。当然、仮面の存在も知らない蛙たちは、呆気なく蹴落とされてしまうというわけ」
崖登り大会の優勝者は、なぜか痩せ細った人物に決定した。彼は仮面を被っていたおかげで、その素性を知られなかった。