愛シキ21デ
栞は花好きの天使と出会った。天使は栞に
何を遺すのか
彼女は言われた通りに椅子に座った。その瞬間彼女の頭に強い衝撃が走った。その衝撃は総てを侵食し、全ての境界を無くした。
「うぁぁ…ん…ひ…か…あ…」
栞が呻いた。
「思い出したか?」
九龍崎が問い詰める。
「:Physical Pleasure:思い…らひまひたぁ…」
彼女が恍惚とした笑みを浮かべて元気良く言う。
「そうか…」
九龍崎はそう言い、右手の人差し指を上に向けた。すると、彼女の頭に黒い突起物が生まれた。
「ひぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ痛い痛いぃぃぃぃぃぃ」
彼女は叫びながら跳ね回る。
「思い出したか?栞」
九龍崎は笑って問う。
「うん…あの…その…間違えてたらごめん」
栞が自信なさげに言う。
「お兄ちゃん」
九龍崎…いや犀川勝人は笑った。
十五夜はモニターから目を離した。顔は何時もと違い怒りでくしゃくしゃになっていた。
「舐めやがって糞が!」
彼が横の棚を蹴る。その衝撃で棚の上の書物が倒れる。彼は息を切らしながら下へ向かう。下にはこんなこともあろうかと部下と脱出経路を用意している。彼はドアを開けた。そこにあったのは
無惨な部下の死体だった。
「遅かったですね、マ♡ス♡タ♡ァ♡」
栞が笑って言う。勝人はまだ生き残った部下と格闘戦を繰り広げている。が、すぐに全員を打ちのめした。
「犀川栞…」
十五夜が悔しさを噛みしめるように言った。
「なめるなよ…」
そう言って彼は指を鳴らした。すると電車の中から一人の男が出てきた。その男は栞が良く知っている、いや忘れることができない人物だった。
「久しぶりだね…栞」
そう言った人物は古嵜だった。手にはナイフが握られていた。
「肺ペストはどうしたの?」
栞は疑問に思っていたことを聞いた。
「ああ、あれかい?栞が去った後十五夜さんに頼んでナノマシンの出力を弄ってもらったんだ。後遺症がかなり残るけどなんとか生き残れたんだよ」
古嵜は笑って答えた、が眼は笑っていなかった。
「後遺症のお陰でなぁ、感覚がないんだよぉ…」
古嵜は泣きながら答えた。
「あら、そう」
栞は言い終わる前に古嵜に近づいた。そして彼を思い切り突き飛ばした。
「あら、そうごめんなさい興味ないわ」
「ぼはー」
古嵜は飛びながら呑気に言う。そして彼の体は思い切り電車にぶち当たる。
「んげーお前絶対殺すからな」
古嵜は立ち止まって呻いている、がその瞬間電車が発車する。古嵜は必死にもがくが、運悪く服が絡まってしまい、電車に引きずられながらどこかへ消えていってしまった。
「今よ!」
栞は叫んだ。勝人は端末からアプリを起動して言った。
「頼むぞ”栞”!
「勝率は?」
犀川勝人は尋ねた。
「多く見積もっても、かなり少ない。奴は恐らくまだ何か隠し持ってる」
栞は返した。
「:Idea:一つあります!」
彼女の頭から声がする。
「栞、何か言ったか?」
疑問に思った勝人は尋ねた。
「:Tell:私です!ここです!頭の中です!」
また喋った。
「ん?頭の中で話しているのね」
栞が言う。
「:Yes:私は貴方の中の執行機関です!私に策があります!」
頭の中の住人は言う。
「一応聞くがその策とは?」
勝人は尋ねた。
列車の中で十五夜はスイッチを押した。それは研究所の起爆装置であった。
「私もヤキが回ったな…」
十五夜はパソコンを操りながらそう言った。
「自動爆発装置解除、これによって封鎖していた、全レベルの扉を解放します」
彼の言葉を遮るかのようにアナウンスが流れる。
彼は特に動揺もせずにシステムを確認する。自爆装置がオフになっていた。彼はオンに戻す、が。
<<これはマスターキーによって行われた動作です>>
とパソコンに表示される。
彼は一瞬で事態を把握し…横のスイッチに手を伸ばす、が手は届かなかった。心臓に激痛が走る。
彼は苦悶の表情を浮かべ椅子から墜ちる。
パソコンに十五夜の顔が映る。
「貴様…まさか…」
十五夜は声を捻り出した。
「マスター私は…貴方と共に…」
”彼女”が笑う、十五夜は少しだけ口を緩ませ動かなくなった。
「さあここから脱出するぞ、離れろ」
勝人が言う。
すると天蓋に穴があいた、そこからはヘリコプターが顔を覗かせていた。ヘリコプターから何人もの人が降りてくる。
栞は安堵し、眠ってしまった。
栞はひたすら続く鬼灯の花畑にいた。その先には”天使”がいた。
「ここへ来てしまったのですね…」
天使は残念そうに言った。
「あなたは…わた…」
栞が言ったが天使が遮った。
「みなまで言いなさんな、私はマスターを迎えに行きます。それが…役目だから」
天使は俯いて答えた。花畑の向こうからは十五夜がゆっくりと歩いてきていた。
「それじゃ行って来ますよぉ」
天使は笑って言った。そして消えた
「うん!行ってらっしゃい!私がんばるから!助けてくれてありがとう!」
栞は泣きながら言った。そう言った瞬間周りの花畑の花がカキツバタに変わった。そして天使が立っていたところにはネモフィラの花が咲いていた。
栞は涙が止まらなくなった。
彼女は眼を覚ます、まだヘリの中だった。ふと横を見ると勝人が眠っていた。
「すいません、まだ着いてません」
パイロットが言った。
「いえ、いいんです」
栞はパイロットに言った。
「おっ栞さん!夜明けですよ!綺麗だなぁ」
パイロットが子供の様に言う。栞は言われるがまま空を見た。
雲に阻まれて全てを見ることはできないが空には金色の太陽が掛かっていた。
「まるで、向日葵みたい」
と言う天使の声が聞こえた気がした。
勝人も目醒めたらしく、外を見る。
「綺麗だなぁ…」
勝人がしみじみと言う。栞はうなずいた。
栞は太陽に向かって笑った。太陽も栞に向かって笑った気がした。
完結しました。どうも二本針怜です。やっぱり疲れた、今日留学していた友達が日本に帰ったらしく、今すぐに会いたいと思って家に電話かけたら家にいませんでした。なんでや!
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