真っ赤なルージュは女の意地です。
鏡の向こうのもう一人の私が、じっとこっちを見つめている。
童顔ほ真っさらなキャンパスに色を入れていくと、視線は途切れた。
「まだー?」
後ろから貴方が聞く。
「うっせ、黙って待ってろ」
茶化して答える。
色とりどりに染まったそれを見ても、
綺麗なのか否か、私にはわからない。
けど、貴方が綺麗と言うならそれでいい。
「お待たせ」
「おう、綺麗綺麗。」
鞄を持ち、白いヒールに足を入れる。
…あ。
「ごめん、ちょっと忘れ物」
部屋に戻って、ポーチから赤のルージュを取り出す。
私の"絵"の最後の仕上げ。
「薔薇のように赤のルージュは女を強くする」
昔、なにかの雑誌で見た。