戯言
ミーティングが終わり、実務のある者は各作業に戻り、課長の吉井と当施設勤務のジェーナホルダー、大槻、薗田、高岡、そしてロキは歓談室へ移動した。
吉井からロキの世話を頼まれている薗田が、思案顔で問いかける。
「服とか、どうしたらいいかな」
「えー、いいよ、今のままで。何? スカートとか?」
「それより、下着、かな」
「そんなの着ていて、突然男に戻ったら、俺、変態だろ」
「それは不可抗力だろ? 人生、何事も経験だよ、ロキ」
「なら、高岡さんも女の下着、つけてみたらいいよ」
「いいねえ。お揃いにしようか? エン君も一緒にする?」
まだ若く、どこかお調子者の高岡は、最初から状況を楽しんでいる風だ。軽口には、ヒトゴトだと思って、と、ロキがしかめ面で返す。
「なーに? 高岡ちゃん。アタシとロキがお揃いの下着、着けられると思ってんの?」
エンが両手を腰に当て、フフン、と勝ち誇ったように胸を誇示して宣言すると、高岡は嬉しそうにクスクス笑った。
「せっかくだからあ、お小遣い稼いじゃおっかな?
ねえ、高岡ちゃん、ひと揉み三千円でどお? その先は、状況によってサービスしちゃうけど?」
「おー」
「げっひんだなあ」
エンの誘いにノリノリの高岡を、ロキが非難するような口調で遮る。
「エン君」
ロキの責めるような言葉を聞こえないフリしていた二人も、諌めるような吉井の声には、さすがにバツが悪そうに口をつぐんだ。
「これで釣りはあるか?」
「わお」
「ちょ、吉井さん!」
財布から五千円札を差し出す吉井に、休憩室にいた全員が目を見開く。
「冗談だ」
「いや、吉井さんがそんな冗談とか。きついっすよ」
「たまには冗談を言って欲しい、という要望を出したのは、谷城君の方だったと記憶しているが?」
「そりゃそうだけど……やっぱ、冗談とか、言わなくていいよ」
表情を崩さずに言い切る吉井に、ロキは、心臓に悪いし、と、ひきつった笑いを浮かべた。