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60章 行末に俯きし少女

「……様」


 呼ばれた声に少女はそれが自分の新しき名であった事を認識し、振り返る。

 そこには彼の配下の者が傅き、自分の返答を待っていた。

 その者が手に持つのは万物・遠方を映し出す物見の水晶。

 刻一刻と変化する水晶に浮かぶ映像。

 一族の命運を期する会議の様子は混乱の一途を辿っている。

 冷静に理想を掲げる彼に激昂し反論する周囲の者達。

 我等の行く末はどうなるのか?

 少女は幾分か躊躇いを見せた後、自ら尋ね直した。


「状況は?」

「はい。極めて悪いと言わざるをえません。

 十二皇法神の方々は転輪皇様を除きほぼ全員が離反、他の有力者も賛同されている状態です」

「そうか……理解はすれども同意を得られず、というところか」

「はい……琺輪世界に繁栄せし我等真族の種族的な示量性状態情報量エントロピーは既に限界を迎えようとしています。

 このままでは滅びの定めを回避する事は出来ません。

 我等が王が提唱する案以外には」

「多種族の犠牲を以って根源に至る、か……

 おそらく琺輪世界のほぼ全ての生命が死に絶えるであろうな」

「仕方ありません。

 我等が生き抜く為です」

「……傲慢な思いだ」

「ではどうすればいいのですか?

 このまま座して滅びていくのを待て、と」

「そうは言っておらぬ。

 ただ剣皇姫は仰っていた。

『魂の在り方に拘るな』と。

 あの方達はきっと世界へ同化する手段を取るつもりなのであろう」

「はっ……論外です。

 己が身を生贄にするなど正気の沙汰ではありませんよ。

 どうか我等を導き下さい、暗天蛇様。

 十二皇法神に並びいる貴女の力が我等には必要なのです」

「……前向きに考慮する、と。

 皆にも……そう伝えるがいい」

「畏まりました。

 すぐに伝えて参ります!」


 少女の言葉に喜色を浮かべ去る。

 反対に少女の顔から憂いに満ちていた。


「これで、本当に良かったのか……?

 我は……我はどうすればいいのですか?

 転輪皇……

 ヴァリレウス……

 答えを聞かせて欲しい」


 思案と思慮の海に沈む少女。

 その身に一族の存亡を背負いて。

 暗天邪ミィヌストゥールは煩悶し続けるのだった。



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