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42章 焦燥に駆らる女王

 闇の帳が下り色取り取りのネオンが煌めく市街の上空。

 冷たい寒気が吹き荒ぶその中を、有翼の彫像が飛翔する。

 その背から指示を出しながらミーヌは焦燥に駆られていた。

 ヴァリレウスが足止めを買って出てくれたものの、多勢に無勢。


 万全ならいざ知らず、担い手の協力も無しに無理に現界している今の状態では、果たしていつまで防ぎ切れるか……

 それに一番の問題はアルだ。

 先程までは苦痛の譫言を洩らす余力があったのに、今は完全に昏倒してしまっている。

 体温が徐々に低下し、体力も急激に失われていく。

 このままでは遠からず『死』を迎える。


(死……!?)


 ミーヌは自らが連想した不吉な予感に身震いした。

 勿論ミーヌとて数多の死を見送ってきた者である。

 ミィヌストゥールとして死を生み出し、

 法輪世界では死神の代名詞とでもいうべき存在だった。

 自分に誰かの死を想う資格などない筈なのだ。

 それこそが無慈悲な女王と蔑まされていた自分の在り方なのだから。

 しかし今、ミーヌはアルを失いかねない恐怖に必死に戦っていた。


(アルを救う……我の命に代えても……!!)


 強い意を込め決意を新たにする。

 ヴァリレウスの告げた通り、アルを救う事が出来るのは闇魔術師である自分だけなのだから。

 魔眼を使用し傷口を見る。

 アストラルに付いた損傷がマテリアルにまで及ぶ、

 深度3レベル相応の重度な傷。

 人族のステータス表示風にいうなれば、今のアルはHPとMPの両方に継続的なダメージを受けつつ、最大HPの値が減少し続けているようなもの。

 勇者クラスとして破格のステータスとHPを持つアルだからこそ、まだ生きていられる。


(我から奪った力をどのように使用したのか、厄介な術式を組み込みおって)


 悔しさに歯噛みする。

 手を打たなくてはあと1時間も持たないだろう。

 一刻も早く儀式魔術を行わなくてはならない。

 それには落ち着いて儀式に集中できる場所が必要である。

 一瞬自分が根城にしているホテルのスイートが思い浮かぶ。

 だがヘルエヌの探索の手がどこまで伸びているかが不明である。

 自分の居場所など既にバレていると思った方が良いだろう。


(どうすれば……)


 その時、生徒達の悩み相談をしていた時にふと雑談に出て来た建物を思い出す。


(そうか。あそこなら)


 打ち捨てられた郊外の教会。

 度胸試しに使われるような廃屋である。

 わざわざ訪れる様な者とていない場所故、ヘルエヌの手も及び辛い筈。

 ミーヌは使い魔たる彫像に新たな指示を出すと、郊外の教会を目指す。

 勇者にして洸魔術師……

 自分とは正反対なのにそれ故に強く心惹かれる自分の想い人。

 アルを救う為に。


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