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32章 真相に驚きし勇者

「好きなように呼ぶがいい」

 

 大机の上で女王は嗤う。

 どこかこの状況を楽しむ様に。


「如何に呼ばれようが、我の本質は変わらぬものなのだから」


 宣言し、腕を開いてゆく女王。

 制服を身に纏ったその細身から放たれる圧倒的魔力。

 示威行為なのか何なのかは分からない。

 しかし予想してたとはいえその戦力差に歯噛みする。

 これでは聖剣の力を駆使しても相討ちに持ち込むのがやっとか……

 って、え?

 俺はそこで疑問を抱く。


(相討ちに持ち込める?

 女王を相手にして?)


 以前推し量った戦力差は絶望的だった筈。

 それがどうだ?

 今女王が放つ魔力波動。

 おそらく歴代最高位の大賢者かそれを凌駕する程のプレッシャーを内包しているのは確かだ。

 だが逆に言えば今の女王から感じる魔力値はその程度。

 一軍を相手に悠然と戦った、あの戦慄を覚えざるを得ない絶対的絶望は感じられない。


(もしかして……)


 俺は先程ヴァリレウスと話していた内容を思い返す。


「では女王と呼ばせてもらう。

 色々尋ねたい事があるが、まず一つ。

 今お前から放たれるその魔力。

 女王、お前もしかして……」

「さっそく気付いたか。

 流石は我の見込みし勇者、目敏き事よ。

 そうだ……汝も気付きしように我はかつての力を失っておる。

 日々枷を課せられたかのごとく能力が減衰し、弱体化していくのはこの世界で生きていく上で詮無き事。

 世界が異物たる我等を排斥しようとするが故に起こり得るであろう、当然の代償なのだから」

「それだ。お前はいったい何をした?

 どうして俺達はここ(異世界日本)にいる!?」

「汝の疑問は尽きぬだろうな。

 長い話になる……まずは座るがいい。

 その、物騒なものをしまってな」


 構えていた聖剣、更にこっそり握り締めていたスタングレネードから指を離す。

 弱体化してるとはいえ、流石は魔族の女王。

 こちらの動向をしっかり把握してやがる……油断はならない。

 俺は警戒を怠ることなく女王が指し示した椅子へ腰掛け、女王を見据える。

 裂帛の視線を受けても女王は依然変わらぬ微笑を浮かべたまま応じるのみ。

 その眼差しに昼に感じた親愛を越えるものを感じ俺は当惑してしまう。


「さて……まずは何から話したものか」


 俺に見せつける様に大机の上で再度長い脚を組み直し、腕組みをする女王。

 柳の様に鮮やかな眉が思案するげに寄せられ、結論が出たのか解かれる。


「では結論から述べよう。

 我と汝は一度死んだのだ。

 そして今この世界に転生したのだよ……

 我の考案せし術法によって」

「な!?」


 薄々推測はしていた出来事。

 だが改めて女王の口から告げられた事実に俺は驚愕を隠しきれなかった。


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