27章 質問に答える勇者
1時間目<現国>
騒がしいHRの後は担任である名無教師による現国の授業が始まった。
文章に描かれた人物の心象を読み取るといった内容なのだが……
これが意味不明である。
勇者として経験を様々な経験を積み、一般人より洞察力に優れた俺だが、他人の行動原理は推測できてもその心情なんぞは把握できない。
人が何を考え、そして何を為したいかなんてその人に聞くのが一番だろうに。
まあ授業については賛同しかねる部分もあったが、その内容は充実していた。
識字率を普及するのに有益だろうし、他者の想いを知る為にも必要なカリキュラムなのだろう。
板書されてゆく文をノートに記載しながら、俺はそんなことを思っていた。
<休み時間>
「アルティア君、日本語OKなんだよね。
スタイルいいけどモデルさん?」
「綾奈の家に同棲してるってホント?」
「ウェールズってどんな感じ?」
「竹刀袋持ってるけど剣道やってるのか?」
「スゲー身体だけど何やって鍛えてるんだ?」
「にににに日本のアニメとかはお好きですかな?」
1時間目が終わり休憩時間が始まるや、手ぐすを引いたかのように群がってきて質問攻めにしてくるクラスメート。
隣りの綾奈に助けを求めるも困った様に苦笑するのみ。
俺は嘆息すると覚悟を決め一つずつ応じて言った。
綾奈の祖父と古い知己であり、学園にはその縁もあってやってきたということ(昨日武藤翁と相談し作った嘘の内容だが)。
同棲ではなくあくまで客人として居候させてもらってるということ。
俺の生まれは名もない田舎の村の出身で、世間知らずで物を知らないので色々教えを願いたいということ。
幼少の頃から父親に剣技を叩き込まれた為、自然と身体が鍛えられたという事。
アニメ? とやらが何か分からないが、日本の文化は素晴らしいということ等をたどたどしくも伝えた。
皆は納得いったように頷くもまだ知り足りないようである。
予冷と共に席に着く飢狼達の眼差しを受けながら俺は再び嘆息するのだった。
2時間目<英語>
得意分野である。
様々な土地を渡り歩いた俺は、その現地の言葉や発音のアクセントをすぐに習得できる特技がある。
英語教師が話す内容を聞き大まかな感じを掴むと、大陸共通語に似たその言語をすぐに物にできた。
「じゃあせっかくだから……
ここは本場出身のアルティアにトークをお願いするかな」
「はい。では……~~~~~」
英語が苦手な者も楽しめる様、大袈裟にリアクションを取り入れながら流暢にユーモアを交え喋り出す。
内容は今まで行ってきた俺達の冒険譚の失敗談だが、地元に伝わる御伽話というフィルターを掛けたのが功を奏したようだ。
大爆笑を以って受け入れられた事に気恥ずかしさを感じつつも、俺は清々しい充実感を感じていた。