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187章 精鋭に思いし勇者

「ぬおおおおおおおおおおおお!!

 勇者アルティア殿、参るぞぉ!!」


 咆哮と共に俺に向かってきたのは屈強なる岩妖精ドワーフの王、ムスペルだった。

 真魔銀ミスリルの全身鎧に身の丈を超えるハルバードを手に突進チャージしてくる様はまさに重戦車。

 いかなる者もその一撃を止める事は叶わぬと思える程。

 冷静に動向を窺う俺の目には、慌てて王の進路から逃げ出す者達の蒼褪めた表情すら見えた。

 この暴虐をぶつけられる俺に対し、同情すら抱いただろう。

 だが、


「ば、馬鹿な……

 ワシの一撃を正面から受け止めた、じゃと!?」


 岩妖精特有の、口元に生えた豊かな髭を震わせながら驚愕するムスペル。

 それも無理はないかもしれない。

 鍛え込まれてるとはいえ、人族の青年が構えた剣が剛力を籠めた一撃を完全にいなしているのだから。

 タネを明かせば新しく得たスキル<流動>と<化勁>の効力だ。

 力のベクトルを反らし、尚且つ望むように流す。

 霊峰ザオウでの戦い。

 アマノサクガミこと天邪鬼の力の一端、

 ダイダラボッチに対し俺は完全に力負けた。

 禍津神とはいえ、神は神。

 人である俺とのスペック差を考えれば当然の結論だろう。

 あの時は禁じ手である念法の発動に成功したから何とかなった。

 しかし毎回念法を使う訳にはいかない。

 アレは確実に使い手の命を蝕むし、強制的に存在を昇華する。

 最終的には、人が人のまま強くならなくてはならない。

 それが神殺しに課せられた宿命なのだろう。

 だからこそ暇を見つけては技を磨いた。

 師であり親である父が最も得意としていた業を。

 それがこの<流動>と<化勁>である。

 まだ完全に使いこなすレベルに達してない為、多少は衝撃が洩れる。

 だがこの技法の完成形は<力や法則との融和>。

 魔力の生み出した術式や気の生み出した波動すら己が望むように操れる。

 特定スキル<仙道>の習得を目指しながら俺は日々切磋琢磨してきたのだ。

 そんな俺にとって、ムスペルの一撃は驚嘆はさせられるが対処できないほどではない。

 城壁をも砕く一撃を流動させ体内で循環。

 震脚と共に大地を踏み締め剣を持たぬ左手に集中。

 そっと王の胸元へ掌底を重ねるや、


「ふんっ!」


 練った闘気を纏わせ全力で叩き込む。

 自ら鍛えたという真魔銀の鎧を信頼してるのだろう。

 ムスペルは回避や防御すらしなかった。

 けどそれは誤りだ。

 俺が扱うノルファリア練法は元は妖精族に伝わる闘技。

 身体が小さい彼等は体格差を埋める為、

 衝撃を100%内部に浸透する技を体得している。

 故に、


「ごふっ……

 ぬかったわ……これが勇者か……」


 血を吐きながらも漢臭い笑みを浮かべ昏倒するムスペル。

 鎧には傷一つ付ける事なく体内を縦横無尽に迸った闘気と衝撃に内臓を傷めたのだろう。

 俺はその様子を油断なく見ながらも内心安堵の溜息をつく。

 偶さかスキルでいなせたものの、噂に聞く岩妖精王の一撃は俺の芯に確実にダメージを残していったのだ。

 流石は精鋭揃い。

 どこの誰を取っても苦戦は免れない。

 同様に向かってきた敵を退けた恭介とアイコンタクトで労わり合いながら、俺は始まったばかりの戦いに思いを馳せるのだった。














 ……何故か恭介とアイコンタクトをした瞬間、涼鈴が鼻血を出してたが……あまり気にしないようにしよう。

 世の中には知らない方が良い事も多々あるのだ(汗)。 



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