178章 弁解に号泣な少女
ズキズキと痛みを奏でる頭に吐きそうになる。
全身を襲う悪寒と堪え切れない倦怠感。
夢すらみないような睡眠の後、俺は最悪の目覚めをした。
薄く目を開けると既に昏くなり掛けている。
どうやら夕刻まで眠りこけてしまったらしい。
ここはどこだ?
どうやら会議室じゃないようだが……
そこまで思い至った際、俺の脳裏にあの戦いの情景が思い浮かぶ。
皆を吹き飛ばし勝ち誇る煙羅煙羅。
聖剣であるヴァリレウスと共に挑んだ魔戦。
犠牲なく勝利できたのは僥倖に過ぎないことを俺自身が一番よく理解してる。
だが、その結果はどうなった?
「みんなは!?」
寝かされていたベッドから跳ね起きる。
すると気付く。
ベット脇に併設された机の上、涙を流した跡が目立つミーヌが眠っていた。
どうやら俺に付き添って看護してくれたらしい。
魔術師のローブではなく簡易で動きやすい白のワンピースを着ているが、
懸命だったのだろう。
汗や泥で汚れていた。
俺自身も聖剣は外され、防具なども一式脱がされ身軽な服装になっていた。
どうやら全てミーヌのお世話になったようだ。
「苦労を掛けたな。
……すまない、ミーヌ」
そっと労わる様に髪を撫でる。
すると「ん……」と色っぽい声を出してミーヌが目覚める。
寝惚け眼で俺を見るミーヌ。
しかし何事もない俺の様子を見て、顔をくしゃくしゃに歪ませる。
「アル! アルぅ!!」
大粒の涙をボロボロ零し、凄い勢いで抱きついてきた。
その慣性を受け止めるだけの力はまだなく、俺はベットに押し倒された。
胸元で歓喜の嗚咽を洩らすミーヌ。
俺は落ち着くまで髪を撫でる事しか出来なかった。
「し、心配したんだから!
もう目を開かないんじゃないかって……
ホント怖かった!」
「すまない……」
「大体アルは勝手過ぎるよ!
何で自分ばかりが背負い込むの!?
もっと私を頼ってよ!
私は……私は、アルの恋人なんでしょ!?」
「すまない……」
「もう知らない!
アルの馬鹿!
私の知らないところで勝手に死……
……ううん、嘘。
それだけは……言えない」
激しく俺を糾弾するミーヌだったが、急に言葉が尻すぼみになる。
激昂する彼女だが、さすがにそれは言えなかったらしい。
項垂れしゃくりあげるミーヌ。
俺は謝罪しながら涙を一つ一つ唇で掬い取っていく。
「アル、私……酷い事を……」
「何も言うな。
ミーヌの気持ちはちゃんと分かってるよ」
「怒ってない?」
「怒る訳ないだろ。
ミーヌはいつも俺の身を案じてくるてるしな」
「うん……」
「だからさ、今だけは俺の傍にいてくれ。
俺に、生きて君を愛してるって、実感を与えてくれないか?」
「うん、アル……
大好き……」
「俺も一緒だよ、ミーヌ」
滅びを視続けていたせいか俺の身体は熱病に掛かったように震えていた。
けど、こうして抱き合いミーヌを間近に感じてると嘘みたいに震えが落ち着いてゆく。
ああ、そうか。
これが生の実感。
俺が俺らしく生きていくための意義なのか。
改めて認識し直すミーヌへの想い。
不思議そうに俺を見詰めるミーヌに優しく口付ける。
恋人らしい不器用な喧嘩と仲直りの儀式を始めるべく、
俺はミーヌのワンピースのボタンを外し、脱がせていく。
羞恥に顔を赤らめるも俺の頬を撫で応じるミーヌ。
薄暗闇の中、
白い裸身が女神の様に映えた。