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166章 議題に白熱す一同

「まず皆様にお尋ねしなければならないのが、

 終末の軍団と名乗る妖魔の軍勢に対する姿勢です。

 銃器といわれる謎の武具に対し、わたくし達はあまりに無力でした。

 轟音と共に高速で鉛玉を射出する、ただそれだけの殺戮武器。

 いえ、あれこそ兵器と呼ばれるものの正しい姿なのかもしれません。

 忌まわしき事ですがこの銃器を装備した妖魔一匹の力は、

 腕利きの兵士一個小隊と並び立つという概算が出ております。

 ここにいらっしゃる守護者の方々の力添えを得ても、

 正直苦戦は免れない程です。

 これらを踏まえて会場の皆様に再度問います。

 命の限り戦いますか?

 苦汁を舐めつつも降伏いたしますか?」


 名ばかりの主催者とはいえ、口火を切るのは議長でもあるコノハの役目である。

 堂々たる毅然とした問い。

 会議に集いし者は各々挙手をし発言をしだす。

 要約すれば戦うか否かになるのだが、その端々に個性が垣間見れるのが特徴であろう。

 例を挙げて述べれば、


岐神 「源氏様の意見を鑑みるまでもなく、

    悲劇は喰い止めなくてはなりません。

    乾坤一擲、わたくし達の力の及ぶ限り、

    正しき強さを見せなくてはならないと思います」

颯天 「同意。吾も主の意見を支持する。

    彼我の力の差は歴然でもここで動かねば比喩でなく世界が終る」

八咫 「簡単に言うけど勝算はあるん?

    ボクも戦わなあかんと思う。

    けど、闇雲に突っ込めばええという訳じゃないんよ?

    失われるのは何もんにも掛け替えのない命なんやしな」

ミズハ「避けられない戦いであることは今更指摘するまでもありません。

    されど彼我の戦力差をいかに埋めるかが重要である、

    とミズハは進言させていただきます」

源氏 「ああ、基本的に俺も徹底抗戦すべきだとは思うが……

    だが彼のモノ達相手に無策では駄目だ。

    ただ力のみに頼ったやり方では俺の二の舞になろう。

    お前はどう思う? 神名担の勇者達よ」

恭介 「自分ですか? 

    そうですね……効率の良い戦争などというものが無い以上、

    憂慮すべきラインまでは犠牲が出るのは仕方ないかもしれません。

    その上で如何に戦うかが重要なのでしょうが」

アル 「同感だな。断固として戦う……という強固さも必要だが、

    肝心なのは打ち勝てるかどうかだろ?

    希望がないまま立ち向かうのは愚の誇張だしな。

    まあ幸いな事に策はあるんだけどさ。な、ミーヌ?」

ムトー「ほほう。それは気になりますな。

    防人や術師達もそれを聞けば奮起しようというもの」

ミーヌ「はい。策と云っても銃弾を無効化するのが精一杯なのですが……」



 この様に建設的な意見も出てる裏では、


将軍 「この緊急時に何たる悠長さ!

    火急且つ速やかに指揮権の統一をすべきだ。

    然るべき役職の者にな」

大臣1「降伏すべきルートも考慮すべきではないか?

    先程も述べたが資源を提供すれば奴等とて無慈悲ではあるまい」

団長 「それは直接相対してないからそう言えるのでずぞ。

    奴等は殺戮の権現たる存在。

    彼の邪神の恩寵を得てからは手が付けられん」

大臣2「しかしだな。まず身の安全を配慮しなくては……」


 等と権力闘争と自己保身に躍起になる者達もいた。

 そんな様子を冷めた目で見る竜桔公主。

 彼女にとって全ては愚かしい俗世の出来事であった。


涼鈴 「お母様……どう動かれるのです?」

竜桔 「無論静観だ。

    妾達は逸脱者たる存在。

    安易に動いてはならぬ」


 肩を竦め茶を啜る。

 それが強大な力を持つ為に世界に多大な影響を及ぼす竜神族の掟だった。

 喧々囂々。

 白熱する議論。

 故に皆は気付かなかった。

 所用で、と離席した大臣が何やら兵士達に指示を出すのを。

 頷いた兵士達が何やら不穏な動きを外でし出すのを。

 そして、


「これは……どういうことですの?」


 形のいいまなじりをキリっと上げてコノハは問う。

 その言動には怒りのニュアンスがありありと込められていた。


「見ての通りです。

 所謂クーデターというやつですな」


 肥え太った顎を震わせ、いやらしい笑みを浮かべる大臣。

 その背後からは『銃器を持った』兵士達が無数に会議室へと雪崩れ込み、参加者へその銃口を向け始めるのだった。


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