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161章 会議に来れる神々

「南方地域ナトゥリの守護者、岐神様。

 並びに諸族代表ムトー様、御来場です!!」


 扉に控える物言いの歩哨が高らかに宣言する。

 会議の場にいた者達は一斉に直立し、入口を仰ぎ見る。

 入室してきたのは一人の女性と二人の男だった。

 先頭に立つのは霊峰ザオウの主にて遮礎神。

 侵し難い神秘的な雰囲気。

 巫女服を纏い艶やかな黒髪を持つ美しい容貌。

 人々が神に抱く畏敬の念を凝縮したかのようなその楚々たる佇まい。

 皆は一斉に頭を下げる。

 特に会議の主催者であるコノハの緊張は最高潮だった。

 普段の不敵な成りはいずこかへ潜めガチガチになっている。

 そんなコノハを見て目を細める岐神。

 こっそり溜息をつくと決意する。

 諸国の者達に侮られない為にも緊張をほぐしてやらなくては。

 コノハに一礼すると声を掛ける。


「本日はサクヤ様の命もありますが、

 王都へとお招きいただきありがとうございます、コノハ姫。

 病床の父上の名代とはいえその苦労は忍ばれますわ」

「こ、こちらこそお忙しい中おいでいだだきまして」

「まあひどい」

「え?」

「わたくしと貴女の仲ではありませんか。

 もっと砕けた感じでよろしいのですよ?」


 悪戯めいた口調で苦笑する。

 そんな岐神に対しコノハも肩の力が抜けた様に脱力する。

 上手にやろう。

 不敬がないようにやろう。

 肩肘を張っていた自分だったがその言葉でかなりリラックスできた。

 幼少期に岐神へ預けられ英才教育を受けた仲とはいえ、優しく自分を気遣うその心遣い。

 流石は尊敬する「姉」だと思う。

 深呼吸を一つするとコノハも微笑み返す。


「心遣いありがとうございます、岐神様。

 わたくし……もう大丈夫ですわ」

「フフ……やっと笑顔が見れましたわね。

 わたくしは貴女の味方ですから。

 今日は共に頑張りましょう」

「はい!」

「それとこちらは人族代表の方です。

 会議に諸族の意見を聞きたく、わたくしに同席していただきました」


 自分の後ろに控える初老の男を紹介する岐神。

 身なりはいいも漂わす雰囲気は只者ではない。

 コノハも思わずたたらを踏む。

 少々警戒した楓がそっと手に術式を潜める。

 そんな楓を手で制するとコノハは笑顔を浮かべ歓迎の挨拶を述べる。


「ようこそ、王都ゼンダインへ。

 わたくしの名はコノハ・イシュタル・ゼンダイン。

 今日は御足労いただき感謝しております」

「こちらこそお招きいただきまして。

 儂はムトーと申します。ヤクサ周辺の長をさせて頂いてる者です。

 今日は諸族代表としての意見を述べさせてもらう為、同席させて頂きました。

 田舎者故無礼があるとは思いますが何卒ご寛恕いただきたく存じます」


 深々と臣下の礼をするムトー。

 諸族代表とはいえ庶民にとって王族はまさに殿上人。

 会話するのも畏れ多い。

 その気持ちが分かるのかコノハもそれ以上は追及しなかった。


「最後に軍部の責任者にしてわたくしの警護、

<神足>の颯天……はもう御存知でしょう?」

「ええ、幼少のみぎりにはお世話になったんですもの。

 お久しぶりです、颯天」

「久しいな、コノハ。

 壮健そうで何よりだ」


 コノハの声掛けに応じたのは30前後の偉丈夫だった。

 流れる白い長髪。

 鍛え込まれた肢体。

 俊敏そうな印象を受ける鋭利な容貌。

 落ち着いた渋い声。

 控える女給達も陶然とした表情で先程から颯天を見ている。


「以上がナトゥリの代表になります。

 改めて本日はよろしくお願い致しますね」

「こちらこそよろしくお願い致しますわ。

 姉様……もとい岐神様の席はこちらになります」


 案内の者を使わず手ずから招くコノハ。

 姉様という呼称もさることながらその行為はホストとしてゲストに対する最上級の敬意の顕れだろう。

 区分けされた席に向かう岐神。

 先にいる人物達を見て好意的に微笑んでしまう。

 無論それは先方も一緒の様だったが。


「またお会いしましたね、二人とも」

「ええ。二日ぶりです」


 苦笑を堪え合うアルとミーヌ。

 ナトゥリ解放から僅か二日ぶりの再会であった。


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