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158章 白熱に議論す重鎮

「手緩い!!」


 怒号と共に叩きつけられた拳に円卓がビリビリと震える。

 その迫力は流石に百戦錬磨の将軍たる由縁だからだろうか。

 だが反論する大臣達も負けてはいない。


「そう言うが将軍、勝算はあるのか?

 彼我の戦力差は明確。

 昨日の戦いも神名担の勇者共がいなくては全滅してたのではないか?」

「勝てる確率がどうとかではない!

 皆の安全と尊厳の為に我々は立ち向かわなくてはならん。

 乾坤一擲、全ての戦力を以って一戦交えるべきだ!」

「奴等も交渉に応じる知能くらいはあるだろう。

 ならば食料や資源を取引材料とし、停戦の交渉に当たるべきではないか?

 最低限、我々や女子供達を保護する事を約束させれば……」

「その考えが甘いのだ!

 奴等の根源にあるのは人族に対する激烈な憎悪だ。

 例の邪神に煽られてるのもあるが、火が付いたアイツ等は手に負えない。

 ムザムザ資源を貪り取られ、虐殺されるのがオチだ!」

「されど主戦論をかざすだけでは……」


 喧々囂々。

 朝食終了と共に開始された会議に向けての各機関の打ち合わせは混乱の一途を辿っていた。

 事態の収拾を諦めたのか、コノハ姫が手を挙げる。


「もう結構です。

 皆さんの御意見はよく分かりましたわ」

「ひ、姫……」

「建設的な意見なら分かります。

 ですが感情論が先行してるようでは話になりません」

「し、しかしそれでは!」

「無論、わたくしも基本的な方針としては断固たる意志を持って戦うべきだと思います。けどその為には限りある戦力をいかに活用するかを考えなくてはならないでしょう」

「ですがその為には吾輩に全戦力を……」

「これはあくまでゼンダインを預かるわたくしの意見です。

 今後の対応については諸国会議で検討し決議致します。

 よろしいですね?」

「いや、その……」

「将軍は御理解頂けたようです。

 大臣達は如何ですか?」

「は、はあ……その」

「異議はございませんね?」

「は、はい!」

「それでは朝の朝食会と打ち合わせはこれで終了とします。

 午後からは諸国の重鎮がいらっしゃいます。

 この様な言い争いや粗相の無い様にお願い致しますね。

 それでは皆さん御機嫌よう」


 乱暴に椅子から立ち上がり踵を返すコノハ。

 その後を慌てて追う恭介と楓。

 俺とミーヌは顔を見合わせる。

 以心伝心。

 俺達は呆気に取られる面々を背後に、こっそり食堂を抜け出すのだった。





 やって来たのは<託宣の間>。

 憤然たる様子のコノハと恭介達がここへ向かったと宮中の者に訊いたのだ。

 昨晩と違い、扉は固く閉ざされている。

 俺とミーヌは口元に指を一本当てると、そっと耳を当てる。 

 そこで聞こえてきたのはこんな内容。


「早く下さいな、恭介」

「しかし姫……昨夜に続き今朝もでは……」

「大丈夫です。恭介は若いから」

「理由になってはいませんが……」

「まだ出るでしょ?

 もっと欲しいの……頂戴」

「(はあっ)……仕方ありませんね。

 今回だけですよ」


 コノハの嬌声と共に衣擦れの音。

 ま、まさか!?

 きょ、恭介……信じてたのに!

 裏切ったな……僕の気持ちを、信頼を裏切ったな!!


「アル……これって」


 俺と同じ結論に至ったのか、ミーヌも顔を赤らめている。


「ああ、俺達の知ってる恭介はもういない。

 今のあいつは人の道を踏み外してしまった外道だ……

 せめて俺達の手で葬ってやろう」


 悲壮な俺の決意に、哀しげな表情で同意するミーヌ。

 俺は深呼吸を一つすると、脚を振り上げる。

 そして気合を入れて蹴り開けると、ズカズカと場を制圧すべく踏み込む!


「そこまでだ!

 両手を上げ地に伏せろ!

 お前には弁護人を呼ぶ権利が……

 って、あれ?」


 託宣の間。

 驚いた様に俺達を見返すのは、半裸になった恭介と楓とコノハ……

 などでは勿論なく、

 椅子に座った恭介の腕から流れる鮮血を可愛らしい牙を覗かせて舐め取るコノハと、事態の推移にこめかみを押さえる楓の姿だった。


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