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151章 相思に相愛な勇者

 王宮付きの侍女に案内され俺達が通されたのは、

 豪華な天蓋ベットが中央にドデンとそびえ立つ寝室だった。

 何というか、無駄に凝った内装である。

 備えに24時間いつでも入れる浴室が完備されている。

 リラックスできる様、自動でムードある音楽を奏でる魔導器もある。

 客人の意志を感知して優しく光量を調節する照明器具もある。

 トドメにピンクの壁紙に、何故か落ち着いた風景画。

 これは俗にいう……アレな事に使われるアレっぽい内装みたいなのだ。

 まあ俺もカイルからの又聞きで直接目にした訳じゃないが。

 この突然の事態に思わず硬直し、思考がフリーズする俺とミーヌ。

 ここまで俺達を案内してくれた侍女はテキパキと寝室のチェックをすると、


「それではここで失礼致します。

 あとはごゆるりと、くつろぎ下さい」


 お澄まし顔で告げ一礼と共に去って行ってしまった。

 顔を見合わせる俺達。

 似たようなシュチエーションは一昨日もあった。

 だがアーヤに案内された時は酒が入っていた。

 こう素面で真っ向から向き合うと恥ずかしさが際立つ。


「取り敢えず……中に入るか」

「そ、そうだね……」


 赤面するミーヌを促し、寝室へと足を踏み入れる。

 緊張してるのか互いに動きがカチカチだった。

 ギコチナイ仕草でどうにかソファーに腰掛ける。


「えーっと、その……

 何だか緊張するな」

「う、うん……」

「いや~その、何て言うかさ……

 今日も色々あったな」

「うん…………」


 無言。

 横目でさりげなく様子を窺う。

 可哀想なくらい紅潮した端麗な容貌が見えた。

 と、俺の視線に気づいたのか、ミーヌが目線を返してくる。

 慌てて目を逸らす俺。

 い、いかん!

 の、喉が渇く。

 咄嗟に侍女さんが用意してくれたティーセットに手を伸ばす。

 同じ事を考えてたのか、ミーヌの手も伸びてくる。

 触れ合う指先。


「あっ……」

「んっ……」


 うあ。なんだこれ。

 胸の鼓動がうるさいくらいドクドクしてるし。

 気恥ずかしくてまともに注視できない。

 数刻前にあんなことをしたというのに。

 何だろう。

 今のミーヌと一緒にいる方が凄くドキドキする。

 どう声を掛けていいかも思い浮かばない。

 その時、ふと肩に体重を感じる。

 ミーヌだった。

 俯き加減で、そっと俺に身体を寄せてきてた。

 火照った身体から体温が伝わる。


「み、ミーヌ……あのさ」

「アル……すごくドキドキしてる……」

「あ、ああ。

 だってさ……愛しい人が傍にいるから」

「ホント?」

「嘘言ってもしょうがないだろ?

 それにミーヌには嫌でも伝わってる筈だぞ」

「フフ……そうだね」

「まったくミーヌも存外意地が悪い。

 ま、ミーヌはどうだか分からないけどさ」

「私も」

「え?」

「私も……すごくドキドキしてるよ?」

「あっ」


 俺の手を取ったミーヌが自らのふくよかな双丘に押し当てる。

 熱くて厚い弾力越しにも分かる。

 俺のと同じ。

 いや、それ以上に高鳴っていた。


「ミーヌも……」

「うん。アルと一緒だね……」


 幸せそうに微笑むミーヌ。

 飾らない純粋な好意。

 その笑顔に俺もやっと肩の力を抜き笑い返せた。

 ミーヌもそんな俺を見ておかしそうに笑う。

 が、その視線が一部を見て強張る。

 視線を追う俺。

 そこには自己主張が激しく衣服に反好期なヤツがいた。


「アルの……大きくなってる……」

「いや、これは男の生理反応と云うか!」

「さっきあんなにしたのに……」

「ミーヌさんが魅力的だからです!」


 何だこの羞恥プレイ。

 でもミーヌに嘘は言えない!

 俺の返答に、ん~と困ったように小首をかしげ考えるミーヌ。

 やがて恐る恐るといった感じで尋ねてきた。


「まだ……したい?」

「正直言えばしたいです!

 でもミーヌさんの身体が目的だと思われるのは嫌です!」

「そんなこと……思わないよ?

 アルの気持ちは……きっと私と一緒だと思うし」

「へ?」

「私も……もっと可愛がってほしいな、って」


 何だコレ。

 こんな事を言われて萌えない男がいるか?

 いや、いない(断言)。


「きゃっ」


 決断した俺はミーヌをお姫様だっこすると、ベットまでエスコートする。

 さっきコノハを羨ましそうに見てたしな。

 そして労わるように横たえると、その可憐な唇に自らのそれを重ねる。

 絡み合う舌。

 薄く糸を引く唾液。

 乱れ荒くなっていく息遣い。

 陶酔するように微睡む瞳。


「アル……きて」

「ミーヌ……」


 羞恥に頬を染めながらも両手を開き誘うミーヌ。

 程よい薄暗闇の中、窓から差し込む月光に浮かび上がる裸身。

 極上の白磁と絹を組み合わせた様な女神の造形。

 少し震えてるミーヌに優しく触れながら。

 俺とミーヌは互いの想いを重ね合うのだった。



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