147章 軍団に演説す道化
「諸君 ボクは戦争が好きだ
諸君 ボクは戦争が好きだ
諸君 ボクは戦争が大好きだ
殲滅戦が好きだ
電撃戦が好きだ
打撃戦が好きだ
防衛戦が好きだ
包囲戦が好きだ
突破戦が好きだ
退却戦が好きだ
掃討戦が好きだ
撤退戦が好きだ
平原で 街道で
塹壕で 草原で
凍土で 砂漠で
海上で 空中で
泥中で 湿原で
この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が大好きだ
戦列をならべた術師の一斉発射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられた敵兵が魔術でばらばらになった時など心がおどる
戦車兵の操る火炎突撃槍が敵戦車を撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵を弓でなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった
槍先をそろえた歩兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ
恐慌状態の新兵が既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える
敗北主義の逃亡兵達を樹上に吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ捕虜達が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げる妖獣にばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ
哀れな抵抗者達が雑多な武具で健気にも立ち上がってきたのをブレスで身体ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える
神名担の虐殺者に滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだった集落が蹂躙され女子供が殺されていく様はとてもとても悲しいものだ
王国騎士団の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
竜騎士や天馬騎士を含む聖獣使いどもに追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ
諸君 ボクは戦争を地獄の様な戦争を望んでいる
諸君 ボクに付き従う<終末の軍団>諸君
君達は一体何を望んでいる?
更なる戦争を望むか?
情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?」
「「「戦争! 戦争!! 戦争!」」」
「よろしい ならば戦争だ
君達は満身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ
忌まわしき存在として侵害され堪え続けてきた君達にただの戦争ではもはや足りない!!
大戦争を!!
一心不乱の大戦争を!!
君達はわずか20レベル 物語なら序盤で敗れ逝く端役に過ぎない
だがボクの力を得た諸君らは一騎当千の強者だとボクは信仰している
ならば我らは、諸君とボクで総力100万と1人の軍集団となる
君達を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている恵まれた連中を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう
連中に恐怖の味を思い出させてやれ
連中に君達の獣臭を思い出させてやれ
天と地のはざまには
奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやりたまえ
格好よくなくとも
強くなくとも
正しくなくとも
美しくなくとも
可愛げがなくとも
綺麗じゃなくとも
格好よくて 強くて正しくて 美しくて可愛くて
綺麗な連中に勝てるということを実証したまえ
才能に恵まれなくとも
頭が悪くとも
性格が悪くとも
おちこぼれでも
はぐれものでも
出来損ないでも
才能あふれる 頭と性格のいい 上り調子でつるんでいる
できた連中に勝てるということを確証したまえ
努力できないまま 努力できる連中に勝ちたまえ
勝利できないまま 勝利できる奴に勝ちたまえ
不幸なままで 幸せな奴に勝ちたまえ
嫌われ者でも!
憎まれっ子でも!
やられ役でも!
主役を張れるということを証明したまえ!!」
「「「「ヴぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
「目標 王国本土 カムナガラ首都ゼンダイン!!
第二次侵攻作戦開始
状況を開始せよ
外なる神々の助力を得んが為 全てを蹂躙するのだ
征くぞ 諸君
……偉大なる総統閣下の復活の為に」
遥か北方の地。
咆哮をあげる無数の銃火器で武装した妖魔の軍勢の前で。
ヘルエヌ・アノーニュムスだったものは邪悪に微笑んだ。