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114章 森林で相対す勇者

「はっ! 正義?

 自分に敵対するモノを屠る際に唱える綺麗事さね。

 お前達はどんな御題目を以ってあたしに立ち向かうんだい?」


 血の滴る鉈を俺達に突きつけながら、老婆は言った。

 その足元には小鬼の首が転がっている。

 問い掛けと共に放たれる妖気。

 鬼気迫るそれが、老婆が只者では無い事を如実に語っている。

 俺はミーヌを視線で促し、少年達を後方へ下がらせるよう指示。

 老婆の危険度を理解したのか、ローブを翻し少年達と共にミーヌが距離を置く。

 俺は油断なく老婆の動向を見据えながら聖剣を構える。

 問いに対する返答やこの事態に対する連想が思い浮かぶ。




 間に合った、というのが正直な感想だ。

 悲鳴を追って森を駆け抜けた先、醜悪な老婆に襲われる少年達がいた。

 悲壮に目を閉ざす二人の姿が視界に映った瞬間、脳裏が白熱する。

 事情なんて知らない。

 けど、見捨てられる訳がない。

 絶望を希望に変える。

 弱き者、虐げられし者に救いの手を差し伸べる。

 それが俺の勇者としての……

 いや、人間としての存在意義。

 ……何ていうのはカッコつけた建前か。

 理屈じゃない。

 俺の本能が「救え!」と駆り立てるのだから。

 まったく困った性分である。

 俺は俺自身の利己的な願いの為に誰かを救う馬鹿者なのだろう。

 そんな浅はかな自分を内心自嘲しながらも魔力付与された脚力を全開し、全力で疾走。

 ミーヌと共に毅然と割って入り立ちはだかったのだ。

 震えていた少年達だが、俺達を見て安堵したように涙している。

 誰かの想いを受け、誰かを護る為に戦うのは何て誇り高い事か。

 闘志が漲り、魔力が駆け巡る。

 これから先は俺の出番ターンだ。


「義とは、正しい行いを遵守すること。

 正義とは熱く心に秘めるもの。

 ……決して振りかざすものではない」

「はん。少しは分かってる様さね。

 所詮道徳や善と云う概念など、一部の人間が作り出したルール。

 今を生きるあたし達の知った事じゃないね」

「そうだな。そんな概念は古いのかもしれない。

 だが……例え時代が変わろうとも変わらない、普遍的な思いがある。

 弱き者、虐げられし者に救いの手を。

 堅苦しい御題目など知った事か!

 理屈で道理が覆せるものか!!

 何故なら俺には分かる。

 俺の中にあるこの想いが、お前を悪だと確信させる!」

「ほう……随分粋のいい小僧だ。

 山姥と呼ばれたあたし相手に啖呵を切る胆力があるんだからね。

 ならばどうする?

 このまま朝まで青臭い生討論かえ?」

「知れたこと。

 自分の正当性を主張するなら方法は唯一つだろ?」

「ああ」

「そう……」


「「勝った方が正しい!!」」


 その言葉を口火とし、俺と山姥は同時に得物をぶつけ合う。

 均衡する鍔競り合い。

 まさか最速を誇るノルファリア練法の初撃を防ぐとは、な。

 老婆の姿からは考えられない反射神経と剛力である。

 ボロを纏った山姥の肌におぞましき禍那が刻まれているのを見て取った俺は短期決戦を決意。

 チャクラから闘気を循環し魔力回路をフル稼働。

 山姥を突き離し距離を取る。

 山姥も負けじと妖気を以って対抗してくる。

 薄暗い森の中、眷属との魔戦が開始された。



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