107章 告白に白熱な勇者
自己主張の激しいアホ毛と対戦し始める。
俺の愛情を込めた撫で方に対し、思春期ばりの激しい反抗。
父さん妖気です!
と、ばかりに元気にそそり立つアホ毛。
「どうした、勇者よ。
お前の力は所詮その程度か?」
そんな幻聴が聞こえる。
更に小馬鹿にする様に時々揺れ動く。
どっかから電波を受信してるのだろうか?
俺には理解不能だが、女性術者はすべからくアホ毛を装備してる。
やはり独立器官のように感じる。
挑発的な動きを示すそれは、最早人格を持ってるのでは?
だがこうなると俺も意地がある。
簡単には引けない。
持てるテクニックを全て活用し、お前を倒す!
等と朝から無駄に燃える事5分。
う~ん、と可愛い声と伸びと共に眉間に皺を寄せたミーヌ。
いきなりパチリと目を覚ました。
寝相は悪いものの、寝起きはいいらしい。
少しボーっとした眼で俺の顔を見て、次の瞬間すごく嬉しそうに微笑む。
「おはよう、ミーヌ」
「あ、アルだぁ。
うん、おはよう……って!
夢じゃない!?」
満ち足りた表情が急激に強張る。
あのアホ毛すら急に元気を失ったかのように半ばから萎れる。
「アル……その、昨夜は……」
「ああ、気持ち良かったろ?
無理もない。
大分疲労が溜まってたぞ、お前」
「え? うん。気持ち良かった……です。
じゃなくて!
そのぅ……私達一緒に寝たんだよね?」
「ああ、すっげー休めた。
ミーヌの隣りだったからかな?」
「それは私も一緒。
こんな風に悪夢に悩まされない気持ちいい睡眠は初めて」
「そっか。お互い様だな」
「フフ……そうだね。
けど……アルは私でいいの?」
年頃の男女が同衾すると、世間一般では……」
「いいのも何も、俺にはミーヌしかいないぞ。
私で、何て言うな」
「嬉しい……。
ちょっと不安だったの。
あんまり幸せで、これがまるで砂上の楼閣のように思えて。
でもアルの言葉で私は実感できた。
夢じゃない、現実だって」
「大袈裟だな。これからは俺がいるのが日常になるさ」
「ホント?」
「嘘なんてつくか。
心配性だな、ミーヌは」
「だって……」
「ああ、もう!
口で駄目なら身体に分からせてやる!」
俺は強引にミーヌの両手を抑え込む。
少し怯えながらもそれでも期待を抱くミーヌの眼差し。
わざと焦らす様に時間を掛けゆっくり迫る。
「俺が嫌いか?」
「ううん。好き。大好き」
「じゃあ俺を信じろ。
信じるという事に重きを持つ、俺を信じてくれ。
この想いは俺だって怖いし不安だし、本当なんだ。
だからさ、時間を掛けてゆっくりと育んでいこう。
焦る事はない。
俺達は俺達なんだからさ」
そう告げ、唇を重ねる。
可憐な瞳が閉じられ、体の温もりが伝わる。
激しく脈動する鼓動。
この高鳴りは俺とミーヌどちらのものなのだろうか?
あたたかい空間でひとつになりながら、俺は愛しい人を労わる様に抱き締めた。