105章 快楽に溺れし少女
歓迎も兼ねた祝いの宴も盛り上がり、たけなわとなる。
勧められるまま杯を重ねるミーヌと俺。
ミーヌはワインで飲み慣れているとかで、かなりの酒豪だった。
まあザルで底なしの俺ほどではないが。
瓶じゃなく樽でもイケると豪語する俺に悪ノリする二人。
美味いつまみを出してくれるアーヤを交え歓談の一時。
あっという間に時間が過ぎ去っていく。
が、俺達のペースに合わせたムトー老が潰れた為、お開きとなった。
テーブルに突っ伏したムトー老へ労わる様に毛布を掛けるアーヤ。
そんな表情にこの世界でも祖父を大事に想う綾奈の心が見え隠れする。
テーブルを片付けたアーヤは、俺達を手招きする。
少し足元がふらつくミーヌと共に案内されたのは客室。
っていうか寝室であった。
「狭いとこで申し訳ございませんが、今宵はこちらでお休みください。
それでは勇者様、ごゆっくり」
何を想像したのか、少し顔を赤らめながら立ち去るアーヤ。
中を見れば大きめのダブルベットがドン! と俺達を待ち構えてる。
これはあれですか?
俗に言う「昨夜はお楽しみでしたね」状態という事デスカ?
心臓が荒く脈動し、呼吸が苦しくなる。
ふと息遣いを感じ隣りを見る。
アルコールだけじゃないのだろう。
恥じらうようにミーヌも顔を上気させていた。
俺の様子を窺う様に俺とベットを幾度も見交わしている。
「ア、アル……
その、私初めてなので……
やさ、優しくしてください……」
途切れ途切れに呟くミーヌ。
俺の手をそっと握ってるのがいじましい。
俺は優しく握り返すと、
「ああ、任せろ。
身も心もトロトロにしてやる」
と少し意地の悪い声色でミーヌの耳元で囁いた。
電流が奔ったように身を震わせるミーヌ。
長い夜の始まりだった。
「ア、アル……」
「どうした?」
「そんな風にされたら私……」
「ん~? 聞こえないな~」
「ひうっ!
あっ……うう……」
わざと指元をずらし反応を見る。
身体をのけ反らし応じるミーヌ。
乱れる髪と熱く火照る肢体。
そんな様子が面白くて、愛おしくて……
つい、意地悪をしてしまう。
本当に敏感だな、この娘。
好きな女性が快楽に悶える様を見れるのは、相方だけの特権だろう。
「アルの意地悪!
わ、私……
私もう……我慢できない……」
「じゃあおねだりしてごらん。
俺にどうしてほしいか」
指を殊更激しく躍動。
触れる肌から伝わる鼓動が激しくなる。
終焉は近いかな?
「うう……あっ……
……恥ずかしいけど、言うから……やめないで?
アルの……アルのをください……
お願い、します……」
「フフ……良く言えたな、ミーヌ。
お利口さんな娘にはご褒美をあげないと……なっ!」
俺は一気にミーヌの身体を引き寄せると、
渾身の力を籠めて打ち付けた!
……幼少の頃から剣を握り鍛えた鉄釘のような指を。
「ふあっ、あああああああああああああああああああ!!!」
快楽の渦に溺れていくミーヌ。
脱力しベットに倒れ込むミーヌを支え、ゆっくりと横たえながら、俺は自分の肩凝り解消マッサージの腕も満更じゃないな、と再確認するのだった。
ん?
何だろ?
何だかどこかで「っざけんな」とか!「時間返せ!」とか「そういうオチかよ!」とか、聞くに堪えないヤジが飛ばされてる気がするのだが……
まっ、気のせいだろう。
第一俺達はまだ婚姻もしてない清い仲なんですよ?
ヘタレじゃなくて大事にしてるのです。
婚前交渉はしないのです、ええ。
ヴァリレウス達が何か言ってたが、勇者アルティア・ノルン。
女性関係は潔癖です、はい。
何かを期待されても困る。
まあ今回の件は宴の際に最近肩凝りが酷いとミーヌが話したのが切っ掛けとなり、なら就寝前に俺が揉んでやるよ、という運びになったからなのだが。
こう見えてもマッサージは得意である。
パーティの仲間達からも、
「手付きが巧み過ぎ。プロか、お前は」
「上手すぎてエロい」
「っていうか、○感マッサージ並にヤベーだろ、このテクニック!」
との賛辞(一部違う気が)を受けたほどだ。
ミーヌも胸が大きいから大変なんだな。
動くと揺れるし、走ると痛い時があるとか。
男には分からない苦悩にうんうんとしたり顔で頷く。
幸いな事に俺の腕前をお気に召したようで良かった。
至福の表情を浮かべ天使の様な寝顔をさらけ出すミーヌ。
隣りに俺も潜り込み、毛布を掛ける。
猫の様に頭をグリグリと俺の胸元に寄せてくる。
俺は腕枕をしミーヌを抱き締めると、連戦で疲弊した身体と精神を休める。
今日は本当に色々あった。
サクヤとの邂逅。
楓との出会い。
明日香との遭遇。
ミーヌの内面世界、ヘルエヌとの決戦。
そして極めつけは仮想世界カムナガラへの潜入。
物語にすればかなりのものになるだろう。
でも何とか想い人を取り戻しこうして抱く事が出来ている。
無論俺だけの力じゃない。
多くの人の助言、助力があったからこそだ。
俺は不思議な運命の導きに感謝を述べつつ、愛する人と共にしばしの微睡みを楽しむのだった。