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王宮魔術師は旅へ出る  作者: 逆姓 柳
序章
7/12

7話.新装備ただし以前の装備は知りません

改稿済み

 

 ジークに案を出してから数日が経った

 

 幸いにも、俺の案は許可が下りた、それのため今の俺は研究室に出勤しなくても良い身分だ、やはり持つべきものは権力者の友達に限るぜ

 

 そんな状態ではあるのだが、俺は今、第三研にある俺の個人研究室に来ている、研究道具から杖にローブやらと魔術師としての全ての道具に資料をここに置いているからだ

 

 流石に貴重品も多くあるのに自宅に置いておくのはセキュリティの面で不安すぎるからな、その点ここは国が勝手に守ってくれてて金も手間もかからなくてありがたい

 

 ちなみに魔王発覚みたいなニュースはすでに第三研の奴らは知っている、人の口には戸を立てられないし、俺の手は羽毛の如く軽く詳細に情報を書類に纏めてばら撒いたからだ、どうせ時期に知れ渡ること、遅かれ早かれの差だ

 

 そんなことを考えつつ今回の案のための用意を並べて確認していく、仕事だが気分は遠足の如く軽い

 

「大杖は新品を用意した、ローブも同じく、靴は新しくあつらえるより愛用のこれでいいだろ」

 

 まずは基本装備と確認を始めたが、よく考えなくても恐ろしいほどの上物だ、靴は昔師匠から誕生日プレゼントとして貰ったものだが、材料がまさかほとんど判別不能だとは思わなかった、分かったのだって希少なエンシェントスライムの粘液から極僅かにだけ生成できる液体金属だったし、だがさらにそれに負けず劣らず杖もローブも良いもの過ぎるくらいだ

 

 また別の愛用の短杖を並べながら、これを受け取りに行ったときのことを少しだけ思いだしてみる

 

 ∴

 

「よぉテス、出来てるか?」

 

 俺はテスの研究室に入りながら声をかけた

 

 そう言えば、一応は室長である俺は自分だけの研究部屋を持っているが、普通は数人相部屋で使用するのが当たり前だ、それに他の研究室では一括りのグループでそのグループ長の指示に従って仕事をするわけであって、前までは同じ方式だったこの第三研もそういうふうに建てられているので相部屋であるのは仕方がない

 

 しかし例外というのも存在して少人数だが1人部屋を持っている奴らもいて、例えば何か結果を出すことが出来れば部屋を与えることもあり、明らかに事故や怪我で巻き添えをくらいそうな研究ならやむなく部屋を与えることもある

 

『ドーーーーン』

 

 今聞こえた爆発音はエーファ=ルーナリアの研究で起こしている事故らしい、どう考えても周囲にいる奴が危険だということで部屋を与えた後者側の例だ、いや結果はだしているから前者でもあるんだが、だがどうして薬草と併用した魔術の研究テーマで爆発が起きて新しい攻撃魔術の開発が成功するのか意味が分からない

 

 話が脱線したがようするにテス=キューラも1人部屋を持っている1人だ、ちなみにテスは結果を出して部屋をもらった側だ、まあ昔の同室の奴からは音が五月蝿いって苦情が来てたからどっちにしろ1人部屋にはなっただろうが

 

「あっ、アルマさんじゃないですか、待ってましたよ」

 

 机の陰から身長160センチ足らずって所の金髪の美少女が、おっと間違えた、美少年が現れた、こいつが男って詐欺だろ絶対

 

「それが例の注文品か?」

 

 それよりも今は壁に掛けてある黒く地味目に仕上がった新品のローブと170センチはある大杖に目線が行った

 

「はいそうです、世界樹の根と緋緋色金にアダマンミスリルで作った杖に、邪竜の皮と鱗、さらに凍氷狼の毛皮に煌聖金糸で作ったローブですね、でもよくこんな素材を手に入れましたね、国宝級にロスト品に古代技術制の物と二度と手に入らないような品ばかり、おかげで作るのも人目に付かないようにするのが大変だったんですから」

 

 そう言いつつもウキウキした顔で大杖とローブを手渡してくる、よく見ると目元に隈が出来てる、無理させたか

 

「お疲れさん、素材の出所は気にするな、この前城の宝物庫に忍び込んだ時に埃かぶってたのをかっぱらってきただけだからな、ああでも一部は自腹だよ」

 

「まあ、そんなところだとは思いましたよ、で、報酬はこれの余った素材でいいんですよね、というかこんな極上素材を今さら返せなんて言われても返せませんよ」

 

「ああくれてやるよ、俺はそういう製作に関しては素人だからな、宝の持ち腐れは勿体ないし」

 

 受け取った大杖とローブを確認してみると、大杖にギミックが仕込んであって持ち運びが便利なように三つ折りに出来るようになっていた、試しに折りたたんでから再展開してみると展開時にかっちりと音が鳴った、ジョイントもしっかりしてるみたいだ

 

「一応、サイズがこれなんで三つ折り式にしときました、ローブの外側の腰の部分に装着できるように作ってますんで不便はないと思いますよ」

 

 確認してみる、あった、確かに持ち運びは便利にはなるだろう

 

「でも、確か三つ折り式って言えば強度が弱いって話じゃなかったか?」

 

 チッチッチと舌を鳴らしながら指を振ってきた、どうでもいいがイラッと来る仕草の割にあまり苛立たないな、やはり容姿の問題か、美少女のような美少年って得だな

 

「甘いですね、この僕が考えてないとでも思ってるんですか、ちゃんと仕込みはしてますし、そもそも材料が良すぎて手を加えなくても十分な耐久度を確保できてます」

 

 それって材料のおかげであってお前の功績でもないような……、いや止そうかこっちはさらに門外漢だし

 

 とりあえず引き続き今度はローブの確認をする、見てみると黒い邪竜の皮をメインに所々を鱗で補強して内側を凍氷狼の毛皮を縫いつけて着心地を良くして、さらに煌聖金糸が飾り縫いとして縫いこんである、無論材料がいいので飾り縫いだって防御力に影響を与えてくれるだろう、さらにさらに内ポケットに外ポケットを多数備えてる

 

「ローブの内側の左ポケットの横見てもらえますか」

 

 テスがそう言ったので、その場所を見てみる、するとそこには四角い機械が埋め込んであった、機械には穴が空いていて何かをはめ込めるようになっていた

 

「うん? なんだこれ」

 

「それ僕の新作魔道具です、ここにこうやって魔石をはめ込むと」

 

 テスが近づいてきてそこに魔石をはめ込む、しかしこれと言って変化は起きない

 

「どういう効果なんだこれ?」

 

 分からないのでバッサバッサとローブを振ってみるが変化はない

 

「焦らないでください、ちょっと持ってててくださいね」

 

 俺がテスに見せつけるように持っていると、テスは魔術を使う

 

「『火矢』」

 

 それはシンプルな攻撃魔術だった、魔術師として最初期に覚えるものだが人をたやすく殺せる術、流石に王宮魔術師として目の前で発動されたその程度の術で殺されることはないが決して室内で使うものじゃないその術は、一本の炎で形作らせた矢を生み出し、テスがそれを操作してローブに当てる

 

 心の広い俺だから良いが許可も取らずにそんなことをするなよ、なんか全く悪気のなさそうな顔したところでよくないものはよくない、とりあえず一発凸ピンをいれて許すことにする(指に風の塊を纏わせて威力アップで)、これは教育です

 

「いっったーーー、反撃にしてはやりすぎだー」

 

「うっせーー、あぶねえだろうが、室内で火にまつわる術の使用はやめましょうって習わなかったのかてめーー」

 

 キレてないです、少し怒ってるだけで俺の心は凄ーく寛容だからこの程度ですんだんです、感謝しやがれ

 

 怒鳴った……じゃなくて注意が効いたのか、テスはしぶしぶと額を押さえながら引き下がる

 

「もういいよ、それじゃあもう一回するからローブを見ててよ」

 

 言われてローブを見る、そこにテスがもう一度『火矢』を撃ち込む

 

 するとローブに着弾する瞬間にローブの表面に一瞬だけ魔術『障壁』が展開した

 

「見た見た、凄いでしょ、これが僕の新作魔道具『自動障壁』、魔石の魔力を使ってて任意じゃなくても自動で発動するんだよ」

 

 そのすさまじさに言葉が出ずに冷や汗が出る、これはもはや革命だぞ、こんなものが量産できたら軍部の奴らが絶対戦争に乗り出そうとする、ただでさえ戦場における魔術師が戦況を左右するこの時代にノーリスクで大規模魔術の準備が出来るとなるとバランスブレイカーにもほどがある

 

 絶対に嫌だ、戦争なんてしたくない、働きたくないでござる、戦時下の仕事のマニュアル見たけど地獄のような仕事量だったんだぞ

 

「おい……これ量産できるのか……?」

 

「無理無理、だってこれ預かった煌聖金糸を使って作ったんだもん、後多く作れても5,6個作れるかなって程度だよ」

 

 よかった、危機は去った、危うく戦争を始めたきっかけを作るところだったぜ

 

 ∴

 

 荷物の確認が終わった、唯一怖い点としては食料が足りるかどうかだが、携帯食料で5日分は用意したから足りると信じたい、水はどうにでもなるんだが食べ物は魔術だといかんともしがたい

 

「にしても、ついにか、俺の他力本願計画が始動に移せるとはな、まさかジークに借りたデータのおかげで最後の調整が即効で終わるとは思わなかったぜ」

 

 感慨深げにつぶやいてみる、いかんいかん、まだ成功すると決まったわけじゃないんだ、気合いを入れなおさねぇと

 

『パン、パン』

 

 頬を叩いて気持ちを締め直して、やっと数年がかりで昨日完成した魔術陣の設計図を見つめる

 

 やっとだ、これでやっと……

 

 そのタイミングで部屋のドアが勢いよく開かれた

 


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