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王宮魔術師は旅へ出る  作者: 逆姓 柳
序章
3/12

3話.重要キャラ登場ただし二章まで登場しません

改稿済み

 

 開かれた扉の先には円の形をした机に余すことなく揃った室長メンバー(代理含む)と一番奥の上座に王様であるジークの野郎が椅子にふんぞり返っているのが見えた

 

 あのーみなさんなんでそんなにお顔が怖いんでしょうか、みんななんか機嫌悪くなるようなことあったの? いや俺が遅刻したせいなのはわかってますがね

 

「すみません遅刻しました」

 

 とりあえずこの場を収めるために頭を下げて謝る、決してジーク王の青筋立てた顔が腹を空かせたドラゴンが目の前にいるレベルで怖くてではない、いやウソですマジ怖いですあれ、本気で取って食いそうな決して王様のしていい顔じゃないんだけど

 

「ちっ、まあいい空いている席に座れ」

 

 舌打ちまでし始めちゃったんだけどあの王様、いいのあれ、いや原因は俺なんだけどさ

 

 ともかくお許しは出たので俺は第三研と書かれた名札の置かれた席に座る

 

 それを待っていたかのように、いや俺の遅刻を待って、それを皮切りに王様が口を開いた

 

「それでは第三研のバカも揃ったので、今から緊急魔術研会議を始めるとする」

 

 ここで俺は会議室の中を落ち着いて確認する、いるのは各研究室のトップたちと王様のみ、いつもならここに大臣なり他の一部の貴族もいるはずなのだが何故かいない? なんだか嫌な予感はするが気にするまい、火の粉は降りかかって怪我をする直前まではスルーするのが気軽に生きる俺のポリシー

 

 にしても、今この部屋の平均年齢は驚くほど若い、第一研室長であるガリウス=リオが30少しで最高齢で、第二研の室長代理として来ているハンク=フォレスター、第三研室長の俺、第四研室長のレイリー=スコーリオ、第五研室長のメアリー=カートラル、第六研室長のルーチェ=ルール、さらに王様であるジーク=フロムガルドと揃って20代だ

 

 これを人材不足と見るべきか、人事の一新の成果とみるべきなのか、俺の想像だと魔術職のトップは年寄りどもの巣窟なんだがな

 

 だがまあこれもやむえぬことであることも分かってはいる

 

 五年前の戦争のせいだ

 

 その当時の俺はお袋の治療費を稼ぐために駆け回っていてかまってられなかったが、ここフロムガルド王国とノキスタ帝国とで戦争をしていた、いや戦争とも呼べないただの蹂躙だったらしい、なんたって国土の差がフロムガルドの5倍もあり、屈強で知られるノキスタの軍の侵略だからな、いくら豊かで知られるフロムガルドでも限界がある、戦争自体はこちらの首都にまで至らずに東の都であるどこだったか覚えてないが、まあどっかで食い止めたらしいから俺に影響は無かったが戦争末期にはこっちの軍は全壊状態だったらしい、そんな中でジークの父である前王は最期の策としてある奇策を出した、それが王自体が死兵となって囮として当時の全王宮魔術師2500人を一斉に投入する作戦だったらしい、その結果前王は死に王宮魔術師も全滅に近い被害を受けながらもノキスタの軍に決定的な打撃を与えて休戦に持ち込むことに成功した、いわゆる勝負に勝って試合に負けた状態になった

 

 そのせいで、戦後のこの国は王の引き継ぎを誰にさせるのかで揉めに揉めたり、この国の魔術の研究機関で最高権威であり非常時には重要戦力として駆り出させる王宮魔術師の不足に超悩まされた

 

 第一研の研究対象の集団魔術や第二研の攻撃魔術はともかくとして、流石に第三研の医療魔術や第四研の魔道具研究、第五研の産業魔術は生活に大きく係るのでかなりに急務になったらしい、ちなみに俺が王宮魔術師になったのは人員不足で一般にも求人が出回ってたこのころで、室長になれたのも、どうせ室長を決めるなら長い間就ける若手を候補にしようという提案があり、多少だが成果を出した俺に白羽の矢が立った

 

 そして、現状だが第一から第六研まで活動できるレベルまで回復していて、第六研は魔石の研究をしている、蛇足だが戦争前は第九研まであって、第七研から順に生活系魔術、空間系魔術、召喚系魔術の研究をしていたらしい、空間と召喚って似たような分野っぽいから統合すればいいってのに、どちらも重要性が高いからって理由で共存していたらしがな

 

「それで陛下、今回私たちが集められた理由は何なのですか」

 

 俺の隣に座っている第四研のイケメンなレイリーが率直な疑問を王にぶつける、多少王様にする言葉遣いとしてはおざなりだとは思うが、こいつは結構良い家柄の出身だしこの場では問題ないのだろう、まぁこいつは家柄云々を嵩に着ない本物のイケメンだから俺でさえ仲良く付き合えているぐらいだし、この王様なら気にするはずもあるまいしな

 

「それはだな………………ええい悲観的に言うのも面倒だ、端的に言おう、魔王・・が確認されたことがクレシオン聖国から報告された」

 

 国王は最初は暗い語調で言おうとしたが、嫌気が差したのか一気に言い切った

 

 だが、会議室はその1つの単語の衝撃に襲われる

 

 魔王、その存在はフロムガルド王国の北に住んでいるはずの魔族の頂点を指す言葉だ、俺も幼いころにおとぎ話として聞かされたことがある、内容としては民を苦しめる魔王を討つためにクレシオン聖国で召喚された勇者が旅をしていき、ついに魔王を倒したものだが、重要なのはそれが100年前の史実であることだ、おとぎ話という性質上脚色はされているのだろうが、確かに勇者の痕跡は各地に残されているし、この国も話の中に出てくる、だがそれは魔王の存在も確かにするということで畏怖の対象として今尚恐れられている、曰く魔王は絶大な力を持ち万の軍勢すら砕く、曰く魔王は魔将軍率いる軍勢を指揮して世界を収めようとする、とかまあ色々と逸話はあったりする

 

 しかしまあ、そうなると困ったことだぞ、この国は最も魔族に近い場所にある国だから、一番被害を受けやすいということになる、嫌だぞ俺はまだ死にたくない

 

 会議室が静寂に包まれる中、恐る恐るといった様子で第二研のハンクが聞く

 

「それは陛下、クレシオンが勇者を召喚するまで防戦するということですか?」

 

 確かにそれが一番堅実な手だ、誰しもがそれを考えるだろうな、しかし俺には嫌な予感というか今推測に変わったものがある、なぜここにその他の貴族サマがいなくて魔術師のみが集められたのか

 

「いや、勇者は召還されない、正確には出来ない」

 

 再び会議室に衝撃が走る、そして俺の予想が段々と正確身を帯びてきているのが実感できてしまう

 

 畳みかけるように微かに分かる程度の怒気を孕んだ声で王様が続ける

 

「クレシオンから報告はこうだ、魔王の座に就くものが現れる神託があった、しかし何者かによって召還の儀の秘術の間が破壊され我が国は勇者を呼ぶことが叶わなくなった、ゆえに貴国は勇者の降臨を待つ間魔王の進行を食い止めよ、だ、まったく迷惑なことこの上ない」

 

 一息、王様はため息を吐いてやれやれと言った様子で首を振る

 

 その様子に思わず俺は身構えてしまう、そして若干の冷や汗と手の震えが出始めてしまう

 

 何故なら俺は体感的に分かってしまうからだ、この様子を何度も見てきている俺にとっては分からなくてはおかしいほどだ、ああこれを簡単に言い表すならば

 

 あの王様、滅茶苦茶にキレてるんですけど

 

 微かに漏れる怒気に一旦落ち着いてため息は特にやばい、これは自分の手に負えないから周りの人に不幸をまき散らす予兆、状況からよーく分かるが俺たち魔術師に丸投げ

 

 そして半ば予想してしまっていたことを王様が言う

 

「そこで私は考えた、この危機を乗り越える手段を、しかし悲しいかな浅学な私では無理だった、ではどうするかだが…………君たちだ、優秀な若き博学な魔術師諸君、もうクレシオンには頼らん、何故歴史上毎回先鋒をやらされる我が国が魔王退治の英名を譲らねばならんのだ、どうせいっそ勇者も我が国で召還すればいいではないか、ということで君たちには勇者の召還を実現してもらいたい、もしくはそれに準ずる何かをしてもらいたい」

 

 信じられないような無茶ぶりに全員が硬直する、その中で辛うじて声を上げる奴がいた、いや俺なんだけどな

 

「いや流石にそれは――――」

 

「なお、異論反論は一切受け付けない、そしてこれは準第一級機密として、特例として信用できて協力する研究者にのみ伝えてもよいとする」

 

 くそー、無視ですかそうですか、というか無理過ぎる命令だな、それ

 

「タイムリミットは半年だ、それまでにどうにかできなければ死兵となると思え、だが成功の暁には望みの報酬を与えるとする、以上だ、これで会議を終了する」

 

 言いきったという顔をしながら王様は逃げるように部屋から出ていき、室長メンバーがほっと一息ついたことで会議が終わった

 

 なんの解決にもなっていない絶望感を残して

 


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