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王宮魔術師は旅へ出る  作者: 逆姓 柳
2章.遠き魔法の異世界
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1話.異世界は青かった

 

 目が覚めるとそこは最後に見た手の入った森とは違い、方向感覚すら狂わし、一度入れば出ることが不可能なような、まさしく魔の森と言える場所だった


「ああ、意外と成功したのか、にしても魔力切れで気を失うなんて何年振りだ……………待てよ、魔力切れだと!」


 とっさに気絶して倒れていた我が身を起こして、魔術陣と魔力貯蔵器を確認する


 幸いにして、魔術陣は書いた時と鏡に映したように反対になった物がしっかり地面に刻み込まれてくれていた、そりゃ帰還用として出現地点に対になる陣が出来るように作ったんだから当たり前だ、そうでないと困る


 だが、問題である10個の魔力貯蔵器には俺の出発前の予想と違い、ついさっき思い至った結論のとおりに、一欠片の魔力も残っていなかった


「やっべぇぞ、あれだけの魔力で片道分にしかならねえとは、くそっ、…………いや今はそれよりも」


 確信はないが異世界に来るのは成功した、だが誰もいない森で、どれだけの規模かも分からない森で、魔術が取り柄である俺が魔力切れで孤立するなんて、自殺行為でしかない


 気絶して眠っている間に僅かばかし回復はしているが、もしもの時のためにこれだけは取っておかなければいけないしな


「とにかく水を確保しないとまずいか、もともと魔術で作るつもりだったんだ、今は幸い日も高い、のたれ死ぬ前に生き残る道筋を作らねえと」


 とにかく地面に刺さった杖を引き抜き、折りたたんで腰に提げ、持つ余裕から魔力貯蔵器を保存食の詰めたショルダーバッグに無理矢理押しこみ、残りの魔力貯蔵器は周りに埋めておく


 そうして俺は、飛行魔術も水精製魔術も使えないままに森をさまようことを決めた


 ∴


 今俺が登った木の下を赤地に白い模様を持つ虎のような魔物と思う生物が過ぎていった


「見たことのねえ奴だな、だが見たところ確実に肉食っぽいし今見つかると危なかったな、危なそうなのがいるならそれなりに慎重に動かないとやばいか」


 何か遠くから物音を感じたから高さ3メートルほどの木に慌てて登ったが、どうやら正解だったみたいだ


 通り過ぎたのを確認して飛び降りようかと思ったが、魔力の無い今怪我でもしようものなら即座に命の危機なので面倒くさいとは思いながらも、登った時と同じように降りる


「うーん、いかに魔術に頼り切った生活をしていたかよく分かるな、城を登るのも一部の移動もそうだったから少し考え直さないといけないかな」


 これまでの行いを反省しつつ、俺はまた当てもなく歩き始めてみる


 この世界に来てからもう4時間は歩いているが、発見したものといえばまださっきの虎と時々みかける薬草のような草だけだった、ちなみに試しに一束分ほど回収してみたが俺の世界の物とは違っていそうだった、もし余裕があればエーファに持って帰ってやろうと思う


「どうにも参るなー、こうも変化に乏しいと迷っていそうで怖くなる」


 迷わないように一定間隔で木に目印をつけてはいて、今のところ同じ木を見た覚えはない


「何にしろ日が傾いてきた、どこか野宿出来る場所を探さないとまずいな」


 まだあの虎のような脅威しか見てはいないが、夜になればどうなるか分かったもんじゃない、その上、今の俺には自衛する力さえない、早いところ睡眠をとって魔力を回復させた方がいい状況だ、幸い気候は穏やかなようなので、このローブを着ての野宿なら風邪の心配もいらなさそうだ


 日は赤くはなってはいないが、もうなりかけてはいる、そのことが冷静に自覚しながらも足を速めてしまう


「…………んっ? なんだこれ」


 見てみれば少し先から緑だった森の木が青くなってきている、それもより奥へと進めば進むほどよりしっかりとした青へと森が変わっていた、なんとなく空気がひんやりとしだした気もする


「どう見ても木は同じ種類なのに色だけが違うおかしな現象か、まだ先も深そうだし行ってみるか」


 好奇心に駆られて、森の奥へと進んで行く、すると勘違いではなかったようで進むほどに気温が下がってきているのがわかった


 挙句によく見ると草の上に所々で霜が降りている、だがこのローブを着ている今この程度の寒さなら考えるにも値しない、防御力もそうだが内側に縫い付けられている凍氷狼の毛皮のおかげで暑ければ涼しく、寒ければ暖かいというオールマイティさで俺を守ってくれている


 そのことに安心しながらも霜の降りた足元のシャクシャクとした足の感触を楽しみながら歩く、ちなみに俺の靴は魔力を遮断する特殊な金属の入った靴だ、魔術の研究員である以上必須な上に金属の入った靴は安全性抜群である


「ついに木が樹氷になってきたか、おかしいな、出発地点からそう遠くは離れられていないのに気候そのものが変化するか普通」


 そしてさらに歩き続けて日が赤く燃え盛って薄暗くなったころに俺はこの森の中心であろう場所に到達した


 そこは青くなった木に空気の混じった氷の付いた樹氷で白さと青さで美しく夕日に照らされ、そんな樹氷に囲まれた何故かこの寒さのなか凍っていない青い透き通った水の湖が夕方特有の薄暗さで鎮座していた


 ようするに


「……………………………………」










 言葉も出ないほど青く幻想的に美しかった


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