斑なホットケーキ
流行りのパンケーキはきれいにデコられ可愛くて口に入れるとふっくら溶けた
思えばあなたの作ったホットケーキはいつも斑に焦げててぺしゃんこだった
おいしいよおいしいよって言うから騙されてたよ
風邪をひいたとき出てきた手作りのグラタンはさらさらな物体で確かに消化は良かったね
遠足のお弁当にチキンのローストレッグまるごと一本入れるなんてクリスマスじゃないんだよ
せっかく一人暮らししたのに毎日遊びに来ないでよ
タッパーにポテトサラダとハンバーグ詰めて 笑っちゃう
私が死にかけたあの日 こっちに引っ張ってくれたのはあなたの手だった
母という人は無償の愛が得意なの?
私はいつも本心を隠して虚飾していい子ぶってまわりを騙してた
本当は嘘つきで冷酷でだらしなくて汚くて一人じゃ何も出来ないくせに
あなたはそれに気付いていたの?
私はあなたのことを何も知ろうとしなかった
あなたの好きな歌も画家も花さえも知らなかった
あなたがどんな思いで毎日を見送っていたのか
私が返すうわべだけの言葉をあなたはなぜ本気で受け止めたの?
悲しくはなかったの?
なぜ見放さなかったの?
いつもあなたはやさしすぎて
いい加減!
もういい加減
向かいあって
自己主張を
思いの丈を
感情を吐き
ぶつかり
怒って
涙を流して
笑って
行動を起こして
もっともっと
娘として
母として
しゃべって
壊して
土足で入って
もっともっと
深いところで
同じ血の通う
人間として
ねえ お母さんーー
私の焼いた斑なホットケーキを食べて欲しかった
白いカーネーションを買えばよいのだろうか
かすみ草をいっぱい入れて
あなたの好きだった花がかすみ草だと知ったから
そしたら真っ白な大きな花束ができるね
かすみ草の花言葉は「清い心」だったよ