キリング国 グリー
キリング国首都グリーの中心部には外堀を、流れのある川を配置した王家の宮殿がある。
川を挟んで街側には川べりに沿って樹木が四列並びその周辺にはベンチと遊歩道が繋がりグリーに住む人々に憩いの場を提供している。
川にはアーチ形の美しい橋がかけられているがその上には人の気配は無い。
橋の先にはグリーの街と変わらない四十階建ての灰色の高層ビルが厳めしく立ち、ビルを空から見れば多角形の巨大な建築物が流線形の土地の中に窮屈に建っている。
外側の建物とは別に、中央には三角形の建物があり三角の頭へ向かって二本の滑走路は伸びていた。
右の滑走路には今朝早くに待機させられていた百機の戦闘機が同列同方向に並べられ燦然と輝いている。
商業も工業も含めた全ての産業は王家の周辺で開発され成長してきた。キリング国の街グリー一番の旗頭は軍事産業で機器類の性能の良さは各国に知れ渡り追随を許していないという自負がある。
その都市の軍事施設の中枢を街中に配置し左の滑走路の真ん中には一隻の白い宇宙船が白い一片の雲のように鎮座している。
ありとあらゆる知識の全てを終結して国の内外の情報を仕入れ集積し把握して活用していた軍隊の網の目を全部無視して、突如として現れた白い船は風が吹いても雲のように消えず着地していたのだ。
事前に着陸許可を出していたグリーの軍の監視員は度肝を抜かれた。
ジーヴァス王子は格納庫で半信半疑で待っていたのだが白い船体が予定通り現れた時は腰を抜かしそうなくらいに驚いていた。
シールドが解除されエンジンにこもった熱が空に立ち上って行、船底のハッチが開き人の足が見えた。
固唾を飲んでいたジーヴァス王子は、装着したヘルメットのインカムを口元に下ろした。
「司令部、目視で女性二人と。男性一人を確認した。そちらは?」
格納庫の小さな窓から滑走路を監視して頭を引っ込めた。
見たものが信じられない。宇宙船は数多く見て来たジーヴァスはあらわれた船が特別珍しい型だとは思わないがどのレーダーにもあの船が引っかかっていないところに驚いていた。
「ズームで撮って見ていますが、あとからは誰も降りてはこないようです」
指令室のモニターで見ている司令官が慎重に言った。
もう一度窓越しに滑走路の端から歩いてくる人影三人を見直して、そろそろ姿を見せて良いころ合いだと判断した。
「近づいてきたよ。男は間違いなく私の友人ディアン・シルトだ。女はたぶんどこかの女一人と妻だと思うが、どっちだ妻は?」
一周四百メートルの円を描ける滑走路の端から、髪の毛を風に遊ばせた女性が二人と長身の見慣れた顔の男が一人歩いて来ていた。
「それは…美人のほうでしょうな」
ちょっと言い淀みモニターに映った二人の女性の顔をしげしげと見ていたので返答には時間がかかった。
「外れ。美人ではないほうだ」
司令官に王子は即答してやった。
もう何度もディアンにねだって妻の画像を送らせてしっかりと見知っていたのだ。
「ご冗談を…」
サスケの顔を知らない司令官はどこの国の相場でも美人が権力者の妻になると思い込んでの発言である。
「またあとで連絡を入れる」
説明するのももどかしく歓迎の笑顔を作って通信を切った。
「OK]
司令官以下通信使達は監視のために滑走路の二人を重点的にモニターに映して品定めをした。
サスケに二票、チャード姫に十一票という結果が出た。
広々とした滑走路の上を燦々と輝く太陽は降り注ぎ生きている安堵感を与えた。三人は格納庫の開いた扉の方へと歩いていた。
サスケは無事に船が着陸したのでどの星に降り立った時よりも喜び浮足立っていた。
格納庫の大扉の奥からは六人の兵士を従えたジーヴァス王子が出迎えにと足早に近寄って来た。
王子はディアンの前に足を止めるとにやりと笑った。
「ディアン! 間違いない。この男はディアン・シルトだ。隣の女性は妻のサスケ殿だな。でこちらが……ブローレスの姫君チャード姫?」
通路を作るように六人の兵士は左右に分かれて休めのポーズを作る。
ジーヴァスはディアンの腕を取り二人の女性から引き剥がした。
「ディアン。規則だ。確認作業を許してくれ。ハーラン、三人は僕が保証する君達は船を頼む。悪いな首都にどんな兵器も持ち込ませないようにしているんだ。それとホテルに泊っているザカリーにも君たちの無事を伝えた。後で顔を見に来るだろう。アアもう本当にほっとしたよ。腕の一本も無くなっているんじゃないかって心配したんだよ。奥方も君も怪我もなく戻って来て何よりだ。思い出したくないだろうが向こうでの顛末を詳細に話してもらえると助かる。あの美人の姫をどうやって船に乗せる事が出来たんだ。彼女は本当にチャード姫なのか? 僕が見た映像の中では一等不細工だったぞ。間違えて連れて来たのだろう。スパイではないのか。ディアンがチャード姫の顔を知らないから勝手に名乗っているのではないのか」
と矢継ぎ早に質問を繰り出した。
都市部にある軍の滑走路に一般人を迎えるのも初めてだが、遠来からの客の宇宙船の発着も始めての出来事だったのだ。
王子から行けの合図が送られると六人の兵士たちは姿勢を崩し、
足並みをそろえてディアンの船に向かった。
わざと開けていたハッチから兵士等は上って行った。
ディアンと離れたサスケとチャードは二人の男性に背を向けて遠くで乱立する建物群を珍しそうに眺めている。




