緊張と不安
船内服に着替えた女性が二人、
一人は服に十分な遊び幅、ゆとりがある。もう一人は若い身体のライン余すことなく見せつけるかのように生地を肌に貼り付けている。
船内服はハードな船外服用の下着。詰まった首元から手首足首まできっちりと繋がった生地で仕立てられている。
小枝や木の皮の粉枯れた葉、あちこち引き破れ血が滲んだ衣装を脱いだ二人の女性がラウンジに入ると二人以上に華やかな男性が一人ゆったりと待ち構えていた。
白い曲線を生かしたソファーには知性あふれる広い額りりしい眉毛涼やかな目元、花弁のようにうすい紅が差したような唇。
顔全体から受ける印象はまだ幼さの残る少年といったところ、のディアンは慌ただしく動き回った気配すら感じさせない座り方で二人の女性を、優しいまなざしで待ち受けていていた。
離陸後サスケとチャード姫がシャワーと着替えにラウンジから消えると、ディアンはに操縦室にて最新鋭の電磁波防御装置、監視衛星からの造影防止装置、船に組み込まれている機能を駆使してブローレス軍基地の様子を見張っていたのである。
宮殿近くの基地からのミサイル弾の装填の動きも見られず、現時点では爆撃機の要請も宮殿からは出ていない。ありがたい事に船の防衛装置は完璧に役目を果たしていて、目立ちやすい宇宙船を彼らのレーダーから消していた。なんとか飛び立つ事が出来たというのにむやみに攻撃されて宇宙船が壊されては元も子もない。
小枝と枯れ葉とすり傷だらけの二人はさっぱりと小奇麗になっていた。
サスケの興奮は高まったまま沈静化する方向に向かってはいないのをディアンは見てとると、ちょっとだけ頭を冷やせる効果のある言葉を投げかける事にした。
緊急事態だというのに閃きだけで行動にうつしては墓穴を彫り続けているのをここらで止めさせなければならない。
二人の女性が心もとなげに座るの待ってディアンは優しく口を開いた。
まずはサスケの安心しきった表情を曇らせてやる。
「サスケ。この船は後二時間半でキリング国に入ります。それまでになんとかブローレスからの攻撃をしのがなければなりません」
一瞬でサスケの顔に恐怖が走った。
船は完ぺきに装甲板で覆われて機械室の音ももちろん外からの攻撃音も遮断しているが、サスケの頭の中の宇宙船は集中砲火の嵐の中を航行しているだろう。
「心配ですがこの様子だと撃ち落とされることは無いでしょうね」
微笑みを浮かべる。サスケは撃ち落とされるという恐怖の真っただ中に居る。
飛び立つ振動も機体を震わせるようなエンジンの唸りも、二人の女性の耳には聞こえないのに二人の表情の違いに内心ディアンは喜んでいた。
姫は運を天に任せ何があろうと驚かないと決意して落ち着こうと努力しているのに比べ、サスケの心は恐慌のさなかで何一つ考えてはいない。
天井の隙間、壁から降り注ぐ間接照明の明かりがラウンジを包み
指先の擦り傷が無ければずっとこの船内で過ごしていたのではないかと錯覚を起こすくらいに静かだった。
「あの、私たち逃げているところで見つかりましたよね、この船はもう網にかけられてブローレスに引っ張られているんですか。それともこのまま外から攻撃されて蒸し焼きになるのでしょうか」
サスケの不安はそこにある。見つかったからどんな目に会うのか考えただけでも恐ろしい。
心臓の鼓動が耳の中で早鐘のように打ち始める。
引きずりおろされた船をめがけてブローレスの人々が悪態をつき石を投げている様が眼に浮かんだ。
擦り傷だらけの手が口を覆い事の重大さをサスケに認識させた。
「どうしましょう。大変だわ」
同じようにチャード姫も口元に手を持っていった。サスケと同様に傷だらけの手ではあるが優しく折れ曲がった指先がなぜかたおやかで女性らしい柔らかさがある。
サスケは始めて船の中で自分以外の人間の動く姿に興奮していた。
女性がシャワールームに入り見えなくなっても扉の前から動かなかった。女性が身支度を整えている後ろ姿も生まれてはじめて見る作業のように目を離せない。
背丈の変わらない女性がサスケの船内服を着ると実に魅力的なつなぎに変身した。
活き活きした服のラインはどこもかしこも若さがあふれ出てまぶしい。




