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Inheritance  作者: KOUHEI
慣習の星
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離陸準備

東西南北にある建物の中の動きは無いに等しい。皆それぞれの部屋で安眠をむさぼっているらしい。

昨夜の見張りの男達は旧館と新館の間に固まっている。見張っていた間、気になった事を報告しあってでもいるのだろう庭に出てくる様子は無い。


ディアンは遠隔操作で開けておいた外壁の倉庫に荷物を入れ、燃料タンクの蓋を開けて船内に入った。

手動操縦をやろうにも自動操縦でまかっせきりにするにも、どちらを選んでも全ての装置の安全チェックが終わらない事には船は離陸できない。


機関室から操縦室に入り音声認識で全ての機能を復活させる。

「くそ、シールドを張るにはハッチを閉めなきゃならない」

ブローレスの軍隊のレーダーから消えるにはシールドは絶対に必要。

活き活きと動き始めた熱量は船の主軸部分に蓄積され始めた。


要の燃焼室の圧力はまだ低い。一次燃焼室ででた可燃ガスを二次燃焼室で圧縮空気と混合し再燃焼して推進力を得る旧式のロケットならば、無駄な圧縮装置も少なく、とっとと出発できるのにと船内を走りまわる電気信号を苛立って追いかける。

刻々と変わる燃焼室の圧力に制御装置の一つのタービンも合わせて静かに回り始める。


船内から機関部の動き回る電気シグナルからディアンは意識を離した、己がかかわれることは終わっている。定期的に動き始めた電気の流れから今度は外へ微弱な生体電気エネルギーへ、船から庭へ宮殿内に動きまわる人間の様子をディアンは探った。そろそろサスケに合図を送る頃合いである。


広い庭の一角に二人分の微弱電流をみつけそのパターンから一つはサスケのものと判断した

ちょこまかと移動している二つのシグナルは間違いなくこの船に向かっている。

操舵室の計器類を一通り見渡した。全てのシステムが何時でも命令されていいように待機し始めている。


「たまには先を読んで、船の近くで待機しようと思ったようだな。まァ良い、さっさと来るがいい」


建物の内部には一定の速度で移動し始める人の動きが目立ち始めた。

廊下から隣の建物の廊下へ行列のように弱いシグナルは動いては戻って行く。

どの建物にも単独で動き回る人の動きは見られるがその数は少ない。


気になるのは宮殿の一角、

「マシュージはまだ眠っているようだが、あいつらも寝ずの番をしていたらしいな」

どの建物よりもおびただしい電気の流れが一過所に新館の外堀側の部屋に集中している。熱を持ったその機械類のそばには固定されたように動かない人間が三人、電気シグナルに目を凝らし耳を傾けている

そのうちの一人が活発に動き始めた。

「見つかったか」

東館からか四百メートル離れた北の建物から飛び出して来た人間がいる、新館や他の建物の人間と明らかに移動する速さが違っていた。

北から走って来た男は複雑に入り組んだ外側の階段から機械類のある部屋に入って行った。


間違いなく船の熱がレーダーに感知され通信使が上司を呼び寄せたと思われた。

報告を受けた上司はきびきびと部屋から通路に出て王の寝所へと向かっているのだとディアンは思った。

「寝起きの悪い王であれば良いが」


ディアンの合図を待たずに早めに部屋を出たサスケを褒めてやりたくなった。無駄にザカリーの力を見せることなく出発できそうである。


しかし気になるのは一緒に移動しているもう一人分のシグナルは誰なのだろうと首を傾げた。

まさか逃げ出そうとしているところを召使いに見つけられて、口封じのために連れまわっているのではないのか。


「ありそうだ。窮地に陥ると底力が出るのだな」

我ながら面白い想像だと笑い、手動でハッチと梯子階段を開けるためにディアンは操縦席を離れた。


マシュージ王の動きも気になるがサスケを船内に入れない事には逃げ出すことはできないのだ。


ラウンジに入る内側のドアをロックして壁のスイッチを押し電源を遮断する。

近くに来ているサスケを感じながら階段の付いたドアを押した。油圧式の開閉装置はディアンの怪力に難なく負けてツタの這う固い土の上に押し下げられた。


船底部分にあるハッチはかなり近寄らないと開いているか閉まっているのかは分からない。


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