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Inheritance  作者: KOUHEI
慣習の星
69/168

ホドワ

Inheritance

(インヘリタンス)受け継ぐ

午前中にマシュージと挨拶を交していた客の装いをホドワは盗み見ていた。

金になりそうだとほくそ笑んだ。


軽い気持ちで腹心の兵士らを宮殿に呼び寄せ、小銭で動く召使と共謀させ、客の妻が一人でいるところを襲わせ、身ぐるみ剥ぐか抵抗すれば殺しても良いと命令している。


残された夫が騒ぎだせば、神隠しだとか池の深みにはまり込んだ、とかのもっともらしい口実をいつもの通りに用意していたのだ。

宮殿内では帯刀を許されていない兵士らは長棒で武装し、広い庭で迷子になり女を見つけられなかったらしい。


庭に兵士をうろつかせたのがマシュージにばれると、とばっちりがホドワに回ってくるので、早々に返したが、今夜マシュージの話を聞いて、女の衣装だけでも手に入れたかったとホドワは悔やんでいた。

たぶんこの居間でくつろいでいる全員が、女が一人でいる時を狙って行動を起こせばよかったと後悔しているに違いなかった。


明日の予定をマシュージが口にせず寝所に戻ったのを機に、

ホドワは気心の知れたバルナベ、オーレリー、ウスローシを引き連れ自分の居間に招き入れた。

皆が重い腰を椅子に乗せると用意してあった膳に乗せた酒を前にホドワはうすら笑いを浮べた。


ザカリアートという地域の代表者で、女子供に人気があるだけの客と同席するのを忌々しく思っていたが、マシュージとの会話で考えは変わった。

くだらない時間を過ごしたという思いは変わらないが、あの客の持ち物は一筋の光明、もしかするともっと良い未来をホドワに与えてくれるかもしれないのだ。


腰の軽いウスローシが酒びんを持ち、空いた器に並々と酒を注ぎホドワの前に置いた。

舌舐めずりをして熱い目で受け取り口に含む。酒はこうでなくてはいかん。


「偉そうに、でかい船を庭に置きくさりおってと思ってが。あの中には金目のものが山ほど入っているようだの。どうだ今夜あたりあの船を移動させては? 理由など何とでも付けられる。わしは今すぐにでも船の中の物が欲しい」

強いアルコールが喉を焦がして胃の中に染みわたる。マシュージの振る舞う酒は、すぐに酔いの覚める軽い酒ばかりと不満が湧きあがる。


「伯父上。それはちと性急ではないでしょうか。到着早々船が無くなったと知れば心証を害します。なにしろキリング国の式典に呼ばれた客です。式典の当事者の友人の船が消えたりしたらまずい事になりまする。それなりに事情を考えませんと」

とやんわりとバルベナはいさめる。


兄マシュージ王と違って全ての実務を上っ面だけ整えてしまえば、それで良しとするホドワは最初のうちにくぎを刺しておかないととんでもない事になりかねない。


バルベナが酒を口にして満足げに息を吐くとホドワはにんまり笑った。

器の酒の減り方を見てここに居る皆はマシュージの酒より俺の酒求めているのだと一人悦にいった。酒は心を開かせる妙薬だ。

「なんだ。結局はブローレスの旗艦で送るつもりなのだろう。しかしな、あの中に宝がわんさとあると思うと震えが来るというか尻がむずがゆいというか。今から何ぞ口実でも付けてあの二人を呼び出してはどうだ。街を案内するとか何とか言って部屋から追い出せばよい。どうだ?」

ブローレス軍隊の参謀をも務める若い顔をしたり顔でみる。


どうだと言われて際ですなそうしましょうとはオーレリーは軽々しくは言えない。伯父は偉そうにふんぞり返ってはいるがほとんどの実権はマシュージが握っていて、動かせる人員はたかが知れているのだ。


「今日到着して連れまわして、挙句の果てに中庭に停めた船を紛失したら。そもそも彼らがここに来なかったと言い張らなければならない状況に追い込まれますよ。それは止めたほうがよいでしょう」


「オーレリー。そなたは天才か! そうよ、来なかった事にすれば良いのじゃ。おい、早急に兵士を集めよ。あんなやわな奴の一人や二人、寝具ごと丸めて焼いてしまえ。いやいやマシュージが眠ってからにしようか? それとも何か、マシュージが先に行動に移しているかもしれんな。それならそれで構わない。小さなおこぼれをわしらも頂戴しようじゃないか。はっはっはっ」


酒と一緒に良い事だけがホドワの脳裏を駆け巡っている。


「伯父上。そのような冗談はこの場ではよろしいですが、他ではあまり言わぬほうがよろしいですぞ」


「何をほざく。わしはそなたを褒めたのだぞ」


「伯父上。宇宙船がここ着陸したのはキリング国の軍隊が十分に知っているのですよ。当然軍隊のトップであるジーヴァス王子もこの情報は伝わっていると考えてよろしいでしょう。なにしろ客は親密な友人同士のようです。それに空には衛星というものが山ほど飛んでいる。その一つが空の上から我が国の庭のどの位置に船が置かれているか教えるのですよ。彼らには手に取るように分かっているのです。王がそれを踏まえて船の横どりをしたいのならさっさとやっていたでしょう。まだ我が軍の力はキリングと対等に戦うだけの準備は出来ていないのですよ。ですが王も何か手を考えておいででしょう。それよりも、王よりも先に何かうまい手立てを考えませんか? 私はあの上着が一枚あれば十分だと思うのですがね」


伯父を怒らせることなくうまく話を進められたとオーレリーは伯父の顔色を窺った。単純にホドワは拗ねただけなので安堵した。


政治にも疎く、最新機器にも何の理解を示さないこんな男がブローレスのトップに居ること自体が信じられなかったが、この安易さのお陰で他の三人は小さな権限を与えてもらっているのだからないがしろにはできないのである。

「上着一枚か……しかしあの宝石一個で戦闘機一機分になると思えば、悪くはないの。戦や企てはマシュージに任せて、わしはタイミング良くあの上着を盗む事にするか」


アルコールでマヒした頭の中は、手に入ったも同然の金が兄が住む新館よりも内装をより豪華にし、囲う女の数を増やせる事にホドワは満足していた。


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