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Inheritance  作者: KOUHEI
慣習の星
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サスケ 正義に燃える

サスケの居る樹木の植え込みの裏側から声は聞こえているのだ。緊張と怒りが身体を走った。

(行儀作法の中にはね、居丈高にはならないって項目もあるのよ!!)


身体を低くして茂った枝の間にそっと身体を入れる。決して覗き見をするつもりなど無いと言い訳をしながら女性を馬鹿にした言い回しが気になり顔を見てやりたい欲望が強まった。


入り込んだ樹木の中は、密集した葉を外側に見せているが木の幹回りは大きな枝ばかりで、

サスケが腰を折り曲げ、足を高く頭を低く、要領よく動かせば意外と苦労せずに移動することが出来た。

自分に言われたわけではないが高飛車な物言いにサスケは本気で腹を立て、どんな奴がそんなぞんざいな口をきいているのか顔を見てやろうと思った。


サスケが複雑に入り組んだ枝の間をかき分けて、樹木の裏側へやってくると、二つの足音の主がはっきりと見えた。

二人の男は洗いざらし地味な服を着て、身軽そうで艶のある長い棒を持ち、一人は胸の前で腕を組み一人は小脇に抱えている。


男等の前にはサスケと似たような恰好の女性が口元に両手を置いて後ずさりをしている。


二人の男は怖気つく女性をせせら笑い、

「おい女!」と手に持った長い棒で立っている女性の肩を突いた。


女性は肩を突かれてよろけそうになり踏みとどまると、反対側の肩に棒が伸びて突かれあっと声をあげた。

棒は容赦なく女性の足元をなぎ払い女性は横倒しに固い土の上に倒れた。


長い棒が倒れた女性の顔の前で止った。


「謝りの言葉を聞こうか? さっさと跪け!」


男が一歩前に出た途端サスケは目の前が真っ赤になり、隠れて居た枝葉の中から飛び出ていた。

幸いに男二人は倒れた女性ばかり気にしてサスケの存在に気がついてはいない。


何か投げつけて男達の気を引く物が無いか見回したが、手頃な石も落ちた枝も無かったので、

土の上や樹木の上を這うツタの葉の向きに目星をつけると、両手いっぱいにツタをつかんで引っ張った。


「この恥知らず! か弱い女性を捕まえて、そんな暴言が許されると思っているの。地面に這いつくばって許しを請うのはあんたたちのほうよ!」


丈夫なツタは男達の足元を通り密集した枝葉の樹木の上を超えて伸びている。

足元のツタがいきなり鞭のようにしなり男達の腰のあたりまで持ち上がり、男達は女を脅すのに使っていた長い棒を落とし前に進めていた足をすくわれて尻餅をついた。


「おっ!」


男の脇から落ちた棒を素早く拾うとサスケは、自分と同じ格好をした逃げ腰の女性の前に駆け寄った。


「逃げて。何とかするから」と声をかけ、棒を両手で握りしめて体勢を整えようとしている二人の男の前に近づいて、男二人が互いに引っ張り合っているツタを棒で絡めて頭の上からかけてやった。


「女! 俺様にこんなことをしてこの先、生きていられると思っているのか!」


「あんたこそ。その面の皮を百枚ぐらい剥いでもらいなさい。恥知らず。女性に手をあげて、しかも罵倒するなんて気が狂っているわ。あんたのような子供を持った母親は恥ずかしくて憤死するわね」


「何をほざいてやがる! 俺の母は俺を生んだことで一族から祝いの品を山と貰ったのだぞ。俺は一族の誇りなのだ」


「何を偉そうに。男だから偉いの? あんたたち間違っているわよ。男が百人いても子供は一人も生まれないわ。でもね女は違うのよ。百人いたら百人の子供が生まれるわ。あんたたちはその女性を守るためだけに存在してるってことを忘れているのよ。実質的に本当に弱いのは男なのよ。あんたたちは進化の過程で出来た副産物なのよ。それすらもわからないで威張ってんじゃないわよ。あんたたちみたいな男は這いつくばって居るのがお似合いよ!」


「女、女! どこでそのような知識を仕入れてきた。そうか宮殿内でたわけた電波を受け取っていたのはお前だったのか。お前のような奴は許しを請うても誰も助けなどするものか。今ここで成敗してくれる。その生意気な口を永久に閉じてやるぞ!」


男達は真っ赤な顔をして邪魔なツタを力で引きちぎろうとしたが、ツタは表皮だけ剥がれて白い芯は切れそうにない。


サスケは網にかかった二人の男にさらに手近なツタを引っ張り輪にして放り投げた。

男達がツタを引っ張り合っている横で、サスケは茶色に変わった古いツタを探し出して土から剥がし、怖々男達の周りをそのツタを持って二周した。

茶色のツタが男達の身体に巻かれたの見て、腰を落としたまま立ち上がらない女性のそばに駆け寄った。

「行くわよ。気違いに構ってられないわ。まったくもう女性にもてたかったら、あんな口をきくものじゃないわ」

サスケと同じ色のショールを被った女性の腕を取って立ち上がらせ、サスケに割り当てられていた部屋の方角へを歩き始めた。


「あの人たちは気違いじゃないわ。まっとうな事を言っているのよ」と小さな声で諭すようにチャードは言ったが、逃げることだけに必死のサスケには何も聞こえてはいない。


サスケは生まれて始めて大声を出して相手をののしった事に興奮していて、手を引いている女性を観察する余裕など無かった。

「怪我はない? 打ち身はあるわね。あーもう。七日間はあざを見るたびに、あの男達の言った事を思い出さなきゃならないなんて、最悪だわね」


ずんずんサスケは鼻息荒く歩いた。一度、立ち止まり二人の男が追いかけてこないのを確かめて、

持っていた棒を汚いもののように池のほうへ向かって高く放り投げた。

池の水音を聞いてまた足に力を込めて歩き始める。


女性を引っ張りながらディアンの言葉がサスケの耳によみがえってきた。

「ねぇ聞いてもいいかしら。私余計な事をしたかしら? 部屋を出るなって言われていたのだけれど」


薄布を通してサスケは女性の顔を見つめた。背格好と顔を覆った薄布の色は一緒だれど、よく見ればサスケよりもはるかに若い女性がサスケを見つめ返している。


「いいえ、余計な事ではありません。私はあの兵士にあって驚いていましたから。ここにはごく限られた者しか入れないのに、どうしてこんなことが起きたのか。考えてみますわ。あ、ここで結構。私はあの扉から出てきましたの。あの中に入れば安全ですの。あなた様はもっと奥の部屋へ行くのでしょう。それでしたらあなた様のほうが、先ほどの兵士に遭う恐れがありますわ」


落ち着きを取り戻した若い女性はサスケを心配して顔を曇らせた。


「大丈夫、走って逃げるから。じゃここでサヨナラね。行って」


女性が装飾された模様のある扉の中に入るのを見届けると、サスケは植え込みの中に隠れて部屋を目指した。


たっぷり十五分以上かけてサスケは部屋に戻ると、奥の部屋でディアンが用意してくれたピンクの衣装に着替えてベッドの陰に座り込み電子パネル手帳を取りだした。


「セラ惑星。ブローレス国案内サービス」と声に出して言う。ベッドの上へ顔を出して扉と窓を見る。召使、もしくはさっきの兵士の足音も影も無い事を確かめた。


慣習の項目にチェックを入れると、女性は国の宝だから一切表には出てこないと書いてある。


思い余ってサスケは住民の人数を見た、圧倒的に男性の数が多いことが分かった。

統計学の項目をチェックし、女性の死亡する年齢はほとんどが五十歳まで生きていない。

「その理由は」と声に出して聞いた。

そしてもう一度部屋の中と扉と窓を見た。

窓の外には人影は無い。


扉の前には長椅子を置いた。扉を開けようとすれば椅子がちょっとの間は侵入者を阻止してくれるとサスケは思っている。


「うっそ!」


画面に並んだ文字の列にサスケは驚いた。

{ 女性が短命に終わる理由 }

親の決めた結婚にそむいた罪で斬首。

通りで男を追い越し歩いた罪で投獄。

夫以外の男と歩いていた罪で斬首。

男の子を産まなかった罪で追い返されて父親に手打ち。

しつけと称して男の子を叩いた罪で斬首。

美しさをひけらかし何人もの男を手玉に取った罪で斬首。

幼い少年に嘘を教えた罪で家人によって撲殺。


「国の法律は。いえ、女性の地位はどこまで補償されているの……」


サスケの言葉が文字に現れたが、その下に答えは出てこない。

仕方なく右上の小さな文字を指でタッチする。


概要と書かれた文字が消え、

これはあくまでも近隣国周辺の住人による聞き取り調査の結果であり真実ではない…との注釈の後に二つの相関図が現れた。

一つは男性の権利と権限が地位と役職名の横に書いてある。一つは女性の制限された行動範囲と職業の羅列。


君主が統治の全権を持ち、自由に男性が力を行使する、セラ惑星でも稀な国家である…と締めくくってある。


「こんなのってないわ」


手帳を持った手が震えた。

さっきまで高揚していた気分が一気に去り、足元の床が透明になり暗い穴を開けてサスケはその穴に深く落ちて行った。


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