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Inheritance  作者: KOUHEI
慣習の星
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不安

ディアンがブローレスに急きょ降りたのには事情がある。


ザカリアートの代表を名乗って数年しかたたないディアンの知名度はかなり低い。ディアンが出席する宇宙議会は各星系の代表者の選任者に興味はあっても、特出する産業も無く地下鉱脈も見込みの無い惑星の代表になど誰も注目はしないものである。

ザカリーが特権階級や知識人に知られるようになったのは最近の事。


一年に一度か二度各星雲の知的生命体を徘徊させる惑星では必ず起ていた事がある。

移動する事を覚えた生命はより大きなエネルギーを必要としたため捕食を始めた。捕食をするために相手を知る必要があった。互いに生命は自分のテリトリーを主張し限りある生命を保つため戦う事を強いられてきた。

弱い生き物ほど群れをなして、食うか食われるかの戦いは餌場(領地)の奪い合いに発展した。


宇宙安全保障条約が結ばれた今でも、太古からの餌場確保のための闘いは熾烈になっていたのである。

そんな中、惑星間の結束を固めるため宇宙救護団が結成された。

非政府組織で紛争や災害に、どこよりも早く現地入りする緊急医療チームの一員に、ベルカル人を中心にディアンも参加していたのである。

宇宙救護団の活躍は議会で報告され、その資料は代表者が各星雲に持ち帰ったが、

主に興味を持ち見たのは慈悲深い女性達である。彼女等は注釈の付いた説明文の中にベルカル人の王子やセラ惑星キリング国の王子の姿の横や後ろに居るザカリアートの代表の姿を求めるようになった。


こうして公然とディアンの名前は上流階級の間では知られるようになり、

社交界にはあまり顔を出さないブローレスの国の姫君もまたザカリーの熱烈なるファンとなった。


ブローレス国マシュージ王は、明けても暮れてもディアンの顔写真を持ち歩く我が娘を不憫に思い、娘の願いを叶えてやろうと奮起したらしい。

女王に何度も頼みこみ最後には脅しと受け取れる言葉まで使ってディアンを呼び寄せている。


古い考えの慣習が根強いブローレスに、王子の友人を送り込むのに女王は少々抵抗があったが、王子の式典に参加してもらえればそれで良いと割り切ったようだ。

劃してディアンは船の到着空港をブローレスに変えたのである。


サスケはキリング国のガイド内容を頭の中にせっせと叩き込んでいて、

社会制度などはアン・オーサーと変わらないので、見るべき要点を絞っていただけに突然の予定変更に面食らっていた。


何はともあれキリングに着いたら雇った召使に、身の回りの世話を焼いて貰える(生きた先生となって教えてもらう事が出来る)と期待していた。ところが滞在期間の短いここブローレスではそんなことは望めない。


二人は箱の中に大量にある衣装からブローレスの風習にあったものを自分で選ばなければならず、髪の毛から靴までのおしゃれ等考えた事も無いサスケには服選びは苦痛でしかない。

もたもたしているサスケを隣に衣装部屋では、ディアンが早速箱の中から着て良いものと悪いものを分けてくれた。

サスケにブローレスの仕来たりを教える時間を割いてやりたくとも、ブローレスの王はディアンに旅の疲れなどとる必要は無いと思っているらしい。


会見が終わり二人が部屋に入った途端、また違う召使が現れて、ディアンだけを連れて行こうとしたのである。

誰に会うのかをディアンは尋ね、しばし着替えのために時間を取ってくれるように頼みこみ、サスケの用意を手伝っている。


「今日の夕食はこの上下を着用する事、明日はもう王と顔を合わせることなど無いから、この二着で過ごすように。そうだ、散歩は極力控えてくれ。もし誰かにあったらショールを外さず顔を伏せて歩き去る事。いいね。ここは女性と男性が仲睦まじく並んで歩ける場所ではないのだよ。セラでも特別に習慣の違う国なのだ」と、要点だけをディアンは言った。


素直にサスケは出された衣装を見て喜んでいる。

布を全身に巻きつけ飾りベルトで止めつけた簡単なものだったから、さっと羽織って見せる。

身の回りの世話を焼く召使の役を完璧にこなしているディアンに、感謝のしるしに裾をつまんで腰を折る、ディアンは見ていなかった。


ディアンの神経は衣装部屋から居間を通り抜けて通路に立つ召使の二人を気にしていた。

全くごり押しにもほどがあるとディアンも思っているが顔にも口にも出さない。

ディアン一人ならどんな状況であろうと切り抜ける事が出来るが、サスケはブローレスでは厄介者でしかない。

なぜならブローレスで必要とされているのはディアンであってサスケではないからである。


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