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Inheritance  作者: KOUHEI
水の惑星
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ため息

挿絵(By みてみん)

宮殿では贈呈式の真っ最中、東の館に戻っている サスケは

寝室とディアンのいる部屋との間を隔てている扉を見つめてため息をついた。


口には出さないけれどどうか彼があのドアを開けて体調を尋ねたり

出かける時間が来ましたよと、入って来ないようにと願っている。


予定としては明日の朝この離宮を離れないと次のジ-ヴァス王子の新任式に間に合わないとディアンはいった。


ウッドハの儀式の流れとしては披露宴が明日から四日間にまたがって行われるという。それこそ歌や踊り劇までも舞台では演じられる豪華な祝宴であるらしい。

それらを皆パスしてまた船の中の旅が始まると思うと憂鬱の一言に尽きるのである。


手元にある手帳に、コフラ惑星の地表の大きさ人口密度、生物の有無など降りる前に船の中で見たガイドをそのまま書き込み、また眉間に手を当て何が聖堂の中で起きたのかを考えようとした。

ディアンは花弁に埋もれた新郎新婦二人はきっと幸せになるに違いありませんと言っていたが

実質見たのはディアンであってサスケは朦朧としていた頭でひたすら倒れないようにと、意識を失くさないよう努めているのがやっとで、無意識に背筋だけを伸ばしていた記憶だけは聖堂内ではある。

アン・オーサーの先遣隊としての責任ある任務は意識と一緒に飛んでしまい、覚えているのは生々しい海獣の口の中だけ。


強盗に拉致され、棺桶のように長い箱に入れられて海に放り込まれていた間、(とディアンが言っていた)呑気に寝ていた自分は何と太っ腹。

箱の中で海獣に襲われ命からがら生き延びた偶然と、漂った箱がぶつかった崖をよじ登り辿りついた先が泊っていた離宮の庭とは。(潮流の加減でそうなったらしい)

そこでもサスケは美しい花の焼きタイルを見て安心したのかまた眼を閉じている。

どれだけ眠たかったのか? それとも思考能力が年齢とともに無くなったのか。ああ。そうに違いないヴィテッカでは三十を過ぎたら脳の萎縮が始まるといわれていたから。


ヴィテッカ議会の演壇で発表するのを想像してそっとサスケは扉を警戒しながら口を開いた。

「コフラでの夫の役割は商売を成功させ富を築くことにあります。わたくしの出席したウッドハの婚姻式は豪華絢爛で、列席者の多くは遠路はるばる祝うために集まり荘厳な雰囲気の中……式が執り行われました」

「……」

「コフラの人の文化とか歴史観とかの感想も加えなきゃ」とまた沿道沿いの人々を思い出して書き足し、ベッドの上で背筋を伸ばした。


コフラ惑星も過去に戦いの歴史はある。現在でも泥棒や強盗の類は大勢いると思われたが、街は人々の手で発展しているように見えた。


「おもな産業は農業。浮遊する浮島の位置で温度が変わるので、同じ作物を一年中供給出来る。すなわち温度管理は大量の作物を育成し余剰農作物を新たな市場(外宇宙の惑星)に売るという画期的な商法が成り立ち……駄目だわ。これじゃガイドのセリフをそのまま書いたほうがよっぽどいいわ」

顔を膝の上に突っ伏して目を閉じる。おもむろに起きて手帳をしまいこみ新しい携帯用電子機器、小型のパネルと取り換えまたもや扉に目が向ける。これならベッドにもぐっていても音声入力が出来る。


サスケの音声を読み取ったパネルの上に文字として自分の言葉が表示されると顔をしかめて唇を尖らした。

ちゃんとしたレポートが必要な時に意識を失っていた時間が恨めしい。

ふと窓の外に視線を感じ半分開いた大きな窓に顔向けたが、あんなにもあこがれた空が嫌味なくらいに美しく晴れ渡っている。


贈呈式ではディアンと会話を楽しみたいたくさんの人々に取り囲まれてサスケは身動きできなかった。

昼過ぎから彼ら彼女ら一人一人に、ディアンは妻のサスケの容体がおもわしくないので離宮にて休む旨を根気よく話して理解を得るまで三時間もかかった。

ウッドハの使いにも贈り物を置いたならば失礼すると言っておいたのに、迎えの船に乗るのに三十分を費やした。


昨日の今日で体力には自信はなかったけれどサスケは、ディアンのそばを離れていれば十分あの贈呈式を楽しめたのではと思っている。


しかし大事を取ってくれたディアンに感謝し、体面上ベッドに寝ているが、忘れないうちにこっそりとレポート制作に取り掛かかるが、いつ何時ドアをノックしてディアンが入ってくるのではと気が気ではない。


隣の部屋では庭に面した四つの窓は開放されて重い厚手のカーテンは、少々強く吹き付ける風にもそよぐことなくどっしりと構えている。

磨き抜かれた家具に囲まれ部屋の真ん中に大きく場所を取った、張り替えられた新しいソファーに座り、寝室のサスケの気配をディアンは読みとっている。テーブルにはウッドッハ自慢の茶器が置かれその出番を待っているがお湯を注がれることはなさそうである。

ディアン付きの召使が一人もいないのは、夕食までに衣装の片づけと積みこみを命じて部屋に近づかないように言いつけたからである。


サスケの物憂げな視線の先を窓から見てディアンは苦笑した。ディアンがサスケの様子を見に寝室に入ってくるのではと警戒しているようだ。

ディアンの視線を感じて、窓へサスケは顔を向けたが、瞬時にディアンは移動したので空と窓わくしかサスケの視力ではディアンを見ることはできない。


正しい脳は違う脳は五感の全て駆使して危険を察知するように常に動いている。サスケの脳も視覚を通してディアンを見たはずだが居るはずが無いと却下したのはサスケの脳の判断である。


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