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Inheritance  作者: KOUHEI
水の惑星
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面白くない

サスケの好きなラベンダー色の空に、小さな流れる雲を見上げ、

すべらかな若い頬にかかる風で方角を読み、うねりのある潮に乗った箱の丈夫さにディアンは感心した。


入り江で襲ってきた首長竜を、もう一度頭の上から叩き動けなくして深い箱を拾うのに、ぬかるんだ土の上を歩く梯子の代わりに用いた。

浅い蓋のまま海に出れば、サスケの着ている衣服もびしょ濡れになるとディアンは用心したのである。


幸いなことに箱を直接海に浮かべる事をしなくてよくなったのは、

次に上陸してきた二頭の首長竜のおかげである。


襲いかかってきたゲイマンを(ちょっとだけ)手荒に振り回して倒し、箱の船で海に出ても水しぶきから逃れられる方法として、彼らの胎内にある空気袋を利用することにしたのだ。


丸太のような首と、はちきれんばかりに丸くて太い胴体をツタで縛り上げ、その上に箱を乗せれば箱は直接水の中に浸かる事も無いし、水しぶきからも距離をおける。


二人を乗せた箱は二頭のゲイマンの背中で安定して、しばらく海の上を漂っているとさながらおもちゃで遊んでいる子供の漂流ごっこに思えてきた


足元のサスケは変わらず気を失い、この優雅な時間を享受できていない。

ディアンは一人の観覧者が居ない状況が続いているのに海に変化はなく、新しい騒動の元凶が出てこないのに不満である。

「フン」

ザカリーの力を少々出したって無駄に弁解や説明をしなくとも良い。たとえ文句を言われ、恐れられて海の生き物なら大歓迎である。観客として小さな生物が山ほど見ていたとしてもディアンの力を誰に伝えてよいかもわからないだろう。


吹き付ける風に額の髪が小房になって煽られている。

「視線が一つも無い環境とは滅多にないのに。そんなときほど、何も起こらぬ」

あれこれ見られた時の対処方法まで考える余裕もあるというのに、のどか過ぎる波を眺めて時間は淡々と過ぎている。



出来れば、ディアンの希望として

首長竜を捕食する大型の肉食竜が現れるのを期待していたが、海中にだらりと下がったゲイマンの首が他の生き物を驚かしているせいか小型の竜も寄せ付けないとは思わなかった。


気絶している海獣は、一匹が起きると自由に動けない事に腹を立て暴れ回る。二頭ともに起きると縛られている事を忘れ隣の頭を噛みつこうと無駄に暴れる回り、水しぶきを飛ばすのにディアンは辟易している。

濡れるのを避けて彼らを殴り失神させ、箱に戻るのも飽きてしまった。


そうこうしているうちにゲイマンの筏は浮島のひとつにぶつかり、その側面をくるくる回りながら漂っている。


後ろを見れば穏やかな海、水面には魚影も見えない。地上に上がる潮時だとディアンは諦めた。

「仕方があるまい。達者に暮らせよ」と、二頭のゲイマンに声をかける。

言われなくともそうするわいと、起きていたらゲイマンは答えただろう。


ディアンはサスケを肩に乗せ箱を降り、ゲイマンの背中のツタを蹴って切り、

垂直に切り立った浮島の崖に飛び移った。


縛られていた二匹はぷかぷかと浮いて何度か崖にぶつかって目を覚ますと、長い首を振り回して隣の首めがけて降り降ろし噛みつきそのまま水中に潜ってしまった。


波に削られた軽石の地層をから奇妙にうねって露出した木の根の層をのぼり、

垂れ下がった草をわし掴みして崖を登り終え、うっそうと茂った樹木の中に入った。

木々を通り抜けると見慣れた庭園にディアンは着いた。


庭園のあちらこちらに立っている木彫りのモニュメント見つめて、

「小芝居をせねばなるまいて」と、さもサスケの身体が重いかのように足を取られてよろめいて膝をつき、サスケを抱え直した。

そして立ち上がり一歩一歩遅い歩みで庭園に設置された監視カメラの位置と考慮して、東館の広いテラスまで歩き、サスケを横たえてその横にディアンも腰を落とした。

ウッドハの仕入れたカメラは性能のよいカメラではないので、顔の表情まで作る事ははせず肩を落とし背中を丸めおもむろにその姿勢のままサスケの横に倒れ込む。


ここまでやればすぐにモニター画面を見ている警備兵がすっ飛んでくるはずだと、ディアンはタイルに耳を当て近づく足音を待った。



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