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Inheritance  作者: KOUHEI
水の惑星
45/168

聖堂内

暑さで参っていました。


申し訳ありません。44話と45話を間違えました。


太陽と一緒に現れる神をたたえて早朝に行われた誓いの儀式は

司祭の流暢な言葉で終わり、八百の神々を模した千人の招待客は、

神として祝福の言葉を新郎新婦にかけて邪気を払うのが恒例の行事である。


祝福を与えるために待っている客たちも

大扉が開き聖堂内の温度が下がると平静さを取り戻していった。

客の誰もが好きこのんで美しく装った姿を崩したくない、

汗の引いた顔は化粧を気にしたり、勲章が曲がっていないかと襟元を正し足り忙しい。無粋に取り乱した客に踏まれた足元をそっと撫でて、見える範囲内の埃を払うとやるべきことは無くなった。姿勢を正して落ち着くと、楽隊の曲が涼やかな風と共に運ばれて心地よい。


司祭は花娘の籠が空になると、暫しお待ちをと客等ににこやかに告げ、新郎と新婦に休憩をとらせるために、祭壇の裏手へ、右側のいつもの神父の控室に二人を連れて行った。司祭は用意していた椅子に新婦を座らせ待機していた使用人を呼びよせ飲み物や化粧直しを命じる。


新郎ウッドハは新婦から離れ、奥の小部屋にそそくさと入り込み、腹心の部下ピースに騒動の顛末をかいつまんで報告しろと要求した。


ピースが口を開く前に、

「一時はどうなるかと思ったがなんとか収まりやがった。で、気分の悪くなった夫人たちはその後どうした? ちくしょう、祭壇横に救護隊を立たせておけばよかったな。正面と二階の踊り場じゃ役にたたねぇよ。俺の近くに誰もいなかったのはまずかった。まさか俺が行くわけにもいかないからな」

と口惜しそうに言う。


新郎が儀式の途中で祭壇を降りることは婚姻を破棄する意味を持つため、祭壇下には一歩も足を踏み入れらず青い顔をした招待客等が列をなして備品室に運ばれるのをウッドはやきもきして見ていたのである。

すかさずピースは坊主見習いから聞いた話をウッドハに伝えた。

用意していた人員配置がうまく起動してつつがなく、体調不良を訴えた夫人たちは街で一番の医療施設に運び込まれていると聞くとウッドハの機嫌はすこぶる良くなった。


「そうかロコイメントがな、良い仕事をしたと褒めてやってくれ。何を考えているか分からない奴だがちゃんと仕事を与えれば、こなすだけの器量はあったんだな。少々見くびっていたな。でオオートマには兵士は何人割いた? 一番に良い部屋に入れろ。医者どもに失礼な態度をとるなと言っておけ」

とさっきの騒動を思い出し唇をねじ曲げた。


ウッドハには病人が出るとは予想外だった。たらふく飲み食いさせて遊ばせていたのに、ここに来て大事な時に倒れるとは、何と軟弱な奴らだと腹を立てた。


「チェックしていた客の声は拾えたか?」

思い出したように、実はこの事が一番気がかりだったのだが、

新婦に聞こえるわけは無いのだが、ピースの耳元で小声で言った。


二人だけだというのにウッドハは気を使い過ぎである。


小部屋の奥に、もう一つ急場に作った物入れのような小さな部屋では、ピースの配下の男が三人、習ったばかりの機器を前に座っている。


「ええ、判別できるものは少ないですが、それらしき会話は録音しています」

ピースは花の香りに包まれたウッドハが小部屋にいるだけで百人もの女たちに囲まれた気分になる。


だからと言ってその香りに酔いしれている状況ではない。

なにしろ隠した盗聴器の数が多いのだ。


席の数字と招待客の名前を書いた紙に、会話された内容をピースは書きこんでいたが、くだらない話のほうが多すぎて、天気と食事と女性に関する会話だけを省いて集計しているが、

招待客が席を立つまでこの作業を続けていくのかと思うと頭がくらくらしている。


「そうか。で、何と言っていた」

むさくるしい、決して男前とは言い難いウッドハが興奮した口調で聞いている。

重要な情報が録音されていると思うと、ほほが緩んでいる。


「それは。はっきりとそうと断定できませんので、ウッドハ様に聞いていただかないと」

聖堂内部での客たちの会話は主に挨拶と主語の無い比喩ばかりで、

雑音にしか聞こえないとは言えず、どうせなら意味のわからない会話はウッドハに丸投げしようとピースは思っていた。


「フン、席順通りに座らせたのなら間違いないだろうよ。まぁいい。これはと思う会話をピックアップしておいてくれ、雑音は消して聴きやすいようにしておいてくれよ。足音や布のこすれる音だけ聞くには時間がもったいないでな」

と言われ、そんな装置があったなとピースは思いだした。

「承知しました」


ピースが隠し戸の奥に入ると司祭の伝言を持った小坊主がドアをノックした。

ウッドハは席を立ち、控室で身だしなみを整えた新婦の腕をとった。


正式に顔を合わせるのは三度目だが前回の二度ともウッドハはあまり良い印象を新婦に持ってはいない。

妻になる女性の顔で選んだわけではなかった。

妻の父親から要望されて婿になることを決めたのだからとウッドハは割り切っている。


しかし広い世界には金に不自由が無く容姿端麗な女性がいる事を知ると、もどかしさを感じずにはいられない。

(まぁ良い、船さえ手に入ればもっと商売も手を広げられる。成功した暁にはザカリーの女性と昵懇の仲になりたいものよ)

議員の噂話で強引にザカリーの女性を囲った権力者の事が話題になった。

その権力者の男はザカリーの女性に嫌われて、女性に身投げされ死んだという。

どれだけ噂話が本当かは知らないが出会うチャンスはあるという事は分かった。


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