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Inheritance  作者: KOUHEI
水の惑星
37/168

東館 1

西館のテラスの床一面に大きな花束をイメージして焼きタイルは張り付けてある。

明るい日差しの下、一枚一枚計算されて焼かれた四角い絵を感心してサスケは見ている。


床のタイルの花から壁に沿ってツタが絡まる棚には、つぼみが多く、咲き誇ったらさぞかし美しく館の壁を彩るだろうと、美しい館を飾った花を見つめてサスケは過ごした。

サスケがあらぬ方向を見ていようとディアンとガイゼンは全く気に留めず、もっぱら古い大戦を持ち出しては再考しは熱した戦術論議に夢中だ。

二人の話に終わりが無いように思われたが小さなメモ用紙がガイゼンの前に置かれると、ディアンは引き際と心得てガイゼン大将にお暇を願い出た。

楽しかったぞ、と一言残してガイゼンは館の扉の中に消えた。


テラスに残された二人は、腕を取り合い仲好く庭を鑑賞しながら東館に引き揚げた。

応接間の扉をディアンが開け、先に入ったサスケは窓に向いた豪華な長椅子に座り、ほっと一息をついたところである。

「到着早々ガイゼン大将に呼ばれたとは幸運だった。サスケは小さな粗相をしたがガイゼン大将は気にも留めなかった。よい兆しだな」

作った笑顔はそのままである。


船内以外は決してザカリーの本性をさらす気は無い。厳密にいえば仲間の前でしか本物の笑顔は出せないし出ないのである。船の中は生物の電気反応は皆無、一度空港に降りるとザカリーは人目を引く。一人で部屋に居ようと顔の筋肉は固定したままでいる。


同じ長椅子にディアンが腰を下ろしたのでサスケは目の端でちらちらディアンの顔色をうかがいながら

別の椅子に移るべきか迷ったが立つ口実が無く話を続けることにした。


「あのときは冷汗よりも泣きたくなりました。ご迷惑をかけました。今度は挨拶の練習をたくさんして落ち着いて良い会話を心がけたいと思いますわ。良い兆しとはどんな意味でしょうか」

まずは恥ずかしい挨拶を謝っておかなければならない。ついでだから弁解もさせてほしい。


「ふふん。我々がもし他の方にお茶に呼ばれていれば明日の朝まで予約で埋まっていた事だろうよ。だがね、ガイゼン大将は自分のお茶会に呼ばれた人物の行動を制限しているのだ。これは暗黙の了解でね、我々が他のお茶会へ行くとなるとる間違いなくガイゼン大将の話が出ない事はない。うわさ話には尾ひれが付いて回る。それを嫌うのだ」と機嫌よく説明する。


「頼もしくて素敵な方ですのに。陰口とかがお嫌いなのかしら」とサスケ。

出会った者なら一目で素晴らしい体格と褒めたたえるだろう。それを眼の前ではなく別な場所で言われるのを好まないなんて何か変だとサスケは思った。


「いいや。彼女の星は女尊男卑の慣習がある。どの星でも男性上位で女性は下位の立場にあるからね。男性からすれば女性が牛耳っている社会があると認めたくないのだ。男性も女性も剣や槍をもって先頭に立つ彼女が嫌いなんだ。男を顎でこき使うなと言いたいのさ。面と向かって言えないけれどね」


まじめに考えて答えているのかは分からないガイゼンと

古戦時代の大将の策略や知略を評価するのはこの上なく楽しかった。


「彼女にお茶に呼ばれたものは緘口令が敷かれたも同然に口を閉じる。彼女との会話が外に漏れていればすぐにばれる。ああ見えて情報戦には強いんだ」

いつになく雄弁に語るディアンにサスケはホッとしていた。


船内から出てどんな状況になるか想像もつかなかったが

こうして美しい応接間に並んで座っていると、サスケを苦しめていた運動器具や機嫌の悪かったディアンの顔が遠い出来事のようだ。


ディアンの明るい口調にうんうんとうなずき聞いている風を装って、実は庭を囲っている背の高い樹木のこずえを吹きすぎていく風にサスケは見とれている。


(ここに成分分析装置があれば。より確かな情報として伝えられるのに)と暮れていく景色に魅せられている。


沢山のランプを持った召使が部屋に廊下に足元にと足音を忍ばせて明りを置いて去って行った。


色彩豊かに焼かれた足元のタイルの上にはゆらゆら揺れるランプの光で

木の枝で編まれた家具や調度品が不思議な陰影を作ってサスケを楽しませていた。


(空がある。太陽が見えなくなると大気中の物質が、残った光に照らされて違う色合いに変わる。美しい。一番多い物質は何かしら。酸素、ヘリウム、水素…… もっと準備して出てくれば良かった)


ヴィテッカの図書館で幼いころ見た地上の映像が重なり合い瞬く間に消え去った。

小さな画面でしか見た事のない空と比べられるはずもなく、隣の人物の事は全く忘れて、どこまでも続く空をヴィテッカの街の住人と一緒に見たいと心からサスケは願っている。


安定したサスケのシグナルの動きに満足し、南館で活発に動いているシグナルをディアンは読み取っていた。

ゴッズのシグナルパターンである。

おそらくウッドハの命令通りサスケの事を探っているか、逆にサスケの情報を売りつけに行っているかのどちらかだと思われた。


遠出をするのが好きなようだと心の中で笑い。

東西南北の館の中に散らばっている仲間のシグナルを探した。どれもみな同じパターンのシグナル囲まれている。


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